疲れた身体と心に響く書籍をご紹介

書籍「カエルの楽園2020」を読んでみた。選択次第の「エンディング」、リアルはどれだ?【第28回】

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ありがとうございます。平岡麻奈です。去年の夏前はこんな生活を過ごすなんて夢にも思わなかった!というような毎日を過ごしています。そんなことを思いながら、去年何を悩んで生きてたっけ?という程に、人間は都合よく色んなことを忘れてしまうようです。今悩んでいることでさえ、次々と更新されていきます。きっと1週間前のこの時間、なにを思って生きていましたか?と聞かれても、すんなり答えられることって、少ないかもしれません。昔、人間は15分前の記憶で生きていると聞いたことがあります。何故15分?という細かい話はさておき、確かに更新し続ける時間に遅れをとらぬよう、自然と生きられるように出来ていると感じます。忘れてはいけないことを心留めておくことも大切、けれど時間は過ぎていく。私にとって大切なことはなんだろう?と問いかけながらも、きっと大切なことだって1年後にはまた変化しているんだろうなと思えば、執着心も無くなり、穏やかに過ごせるようになります。

街のお店は、営業時間の短縮はあるものの、以前よりは日常を取り戻しているかのように感じさせます。休業していた近くの書店が営業を再開していたので、寄ってみました。いつもであれば、お決まりのブースに行き、そこでお目当ての書籍を探すのですが、何年かぶりに小説ブースに足を踏み入れました。読書は好きなのですが、小説はほとんど購入したことがありません。学生時代に少しだけ、ホラー小説を読んでは夜眠れなかったというアバウトな記憶だけです。おそらく、フィクションの世界よりもリアルを求めているのだと感じます。「小説の中だけのお話」という感覚が、私を「小説」から遠ざけていました。けれど、それはあくまで私の個人的な感覚であり、「小説」とリアルを繋げるからこそ、「小説」を読むことで感情が動かされたり、生きるきっかけになります。また、リアルに基づいた「小説」も沢山あるわけで、私にはその感覚が乏しいのかなと感じ、久しぶりに「小説」を探し始めることにしました。(ホラー小説はリアルを感じさせられると怖さ倍増と思います。)

広い店内を歩き回ると、店頭付近に山積みになった小説を見つけました。『ネットで大反響 緊急出版』!こんなことを書かれると、引き寄せられてついつい買っちゃう私です。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第28回は、今を生きる私たちの未来を読み解く1冊を紹介します。今回はいつもとは違った紹介となりますが、生きているジャンル、例えば職業、環境、立場、全てのカテゴリーを越えて、今読んでもらいたい書籍です。

かえる.jpgカエルの楽園2020
【著】百田 尚樹
https://www.amazon.co.jp/dp/4101201935/

毎日飛び込んでくるニュースに限らず、身近な生活で思い浮かぶ様々な決まり事や変化。今自分自身が体験しているからこそ「リアル」なのですが、今の日常を客観視することが出来たとしたら?自分の判断、周りの判断は果たして正しいのか?なんて落ち着いて考えられることが出来るかもしれません。今回私が選んだ書籍は、今の生き方、そしてこれからを生き抜く為の選択肢の数々を与えてくれます。『カエル』の世界に、今実際に起こっている現実を重ね合わせ、その変わりゆく現状を追っていきます。この数カ月で、おそらく多くの方々が感じたであろう感情や、目に飛び込んできた現実を『カエル』の世界で映し出すことにより、 当事者の感覚を持ち合わせつつも、「その判断じゃ危ないよ!」と伝えたくなってしまいます。

様々な種類のカエルが生存する中、舞台となるナバージュという場所で、ウシガエルの沼で流行り始めた病気の噂が広まります。その病気に罹ると肺がおかしくなり、そしてウシガエル以外のカエルにも罹るということを知らされる。その病気がナバージュに入ってきたらきっと大混乱になる!と、カエル達は騒ぎ立て始めます。果たしてどう対処すべきなのだろう、どう対処すべきだったのだろう。過去との照らし合わせなのか、どこか答え合わせをしているような感覚でした。

「それにただ、誰だって病気は怖い。ウシガエルの沼の噂を聞いたら、そんなことがナバージュでは起こらないようにと願うだろう。いや、起こってほしくないと思うんだ。そしていつのまにか、起こるはずがないと思ってしまうんだ。それで、仮に病気が入ってきても、たいしたことにはならないだろうと思い込んでしまうというわけだ」(第二章 P,88)

「病気に詳しいとか詳しくないとか関係ない。ウシガエルの沼で、今までになかった病気が発生して、たくさんのウシガエルが沼の端に閉じ込められている-それを怖れるのは当たり前だろう」(第三章 P,123)

あとがきを読み、『寓話』と呼ばれるジャンルを初めて知りました。古来では、「人間社会の営みを動物や虫を擬人化して描くことで、読者の興味を惹き、また人間関係や物語の構造を簡潔に理解しやすくするためのもの」とされ、近代的寓話では、より難解で高度な暗喩が用いられるようです。本書は「現実をそのままなぞった『寓話』」と示されている通り、昨日今日私たちが過ごした日常が書かれていました。また、本書には3つの結末として、『バットエンディング』『リアルエンディング』『グッドエンディング』が用意されています。行きつく未来の『エンディング』は一体どれなのだろう?1年後なんて予測できない。「去年の夏前はこんな生活を過ごすなんて夢にも思わなかった!」と、また来年も同じことを感じているかもしれません。

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Comment(2)

コメント

勝ち逃げ先生

>きっと1週間前のこの時間、なにを思って生きていましたか?
1週間前どころか、一昨日何を食べたのかも覚えてないですからね…


>人間は15分前の記憶で生きていると聞いたことがあります。
「世界五分前仮説」のことですかね?
ぼくもこの考え方は好きです。嫌なことがあったらこれを思うようにしてます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%BA%94%E5%88%86%E5%89%8D%E4%BB%AE%E8%AA%AC


あと、いつも思っていたのですが、平岡さんは日本語を丁寧に扱っている感じがします。読者に伝わる文章が書けるよう、ぼくも見習いたいです。

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