なぜ私は会社名を出さないのか
わたしは会社に無断でこのコラムを書き始めたんですが、1回目のコラムが公開されたときに、「こんなの書き始めたんですよ」と社長に報告しました。
黙っててもよいんじゃないかな、とも思ったんですが、プログラマという仕事についてコラムを書く以上、会社とはまったくの無関係、とは言い難いし、だったら、ちゃんと事情を知っておいてもらった方がよいだろう、と判断したからです。
で、その際に「コラム内で会社名を出した方がいいですか? 出さない方がいいですか?」と社長に尋ねました。
わたしとしてはどちらでもよかったので、会社の都合のいい方で決めよう、ということだったんですが、そのときに社長が「会社名を出すと、仕事の関係先の方がまったく違う人のことなのに自分のことを書いている、と考えるんじゃないかって気を回すことで、書きたいことを自分からあきらめることになってしまうかもしれない。それじゃ、面白くないだろうから、取りあえず会社名を出すのはやめといたら?」といった内容のことを言ったので、それもそうだと納得して、会社名を出すのはやめにしました。
そんなわけで、最初のころは「どうでもいい」というスタンスだったんですが、コラムを書き続けてみたところ、会社名を出さない方がいいんじゃないか、という方向に考えが傾いてきました。
エンジニアライフさんみたいに目立つところでコラムを書かせていただいていると、まあ、いろいろなことがあるわけですよ。
楽しいことやうれしいことがたくさんありますが、不愉快なこともたまにあります。
それ自体は、リターンに伴うリスクとして許容するしかないだろう、と考えていますが、そのリスクを背負うのがわたしの会社のメンバーになる可能性を考えると、とても怖いです。
わたし個人が個人としての考えを述べているだけなのに、「こんなヤツを雇ってる会社はけしからん」という理屈で会社側に攻撃の矛先が向けられる、という可能性がゼロだとは、わたしにはとても思えません。
限りなく低いでしょうが、ゼロでない限り、わたしが個人的に書いている文章から発生するリスクを、チームのメンバーに背負わせてしまったりしないか、という不安は拭いきれませんし、そういうことを怖がって、萎縮しながら書いた文章を公開することに、まったく面白みを感じません
リスクを抱え込むことを是とするほどのリターンがあるという材料が出るか、全員がお互いにリスクをかけ合う状態になれば、話は別だと思いますが、現在のところ、わたしの会社はそういう状況にはありませんし、そういう状況ではないことを残念だとも思いません。
会社名を出さないことによる、窮屈さや不自由さを、わたし自身がまるで感じていないからです。
ですから、会社名を出すことにメリットを見いだせないのなら、会社名を出さないことで心配を減らした方がよいんじゃないか、と今のわたしは考えているんです。
まあ、わたしがちょっと考えすぎてて、ヘタレなだけだと思うんですけど。
イベント等に出かけた時でも、わたしは会社の名刺を出さずに、編集部さんがつくってくださったコラムニストカードと、プライベート名刺を使っています。
会社名を出すよりも、わたしのコラムを読んでいただいたり、名刺に書いてあるTwitterアカウントをのぞいていただいたりする方が、よっぽどわたしのことを分かっていただけると思います。会社名どころか本名を出さなくても、大抵の勉強会は参加できますし、そこにいるのはあくまでもわたし個人ですから、わざわざ会社名を出す必要をわたしは感じません。
まあ、うちの会社の名前を言ったってどうせ知っている人なんていませんしね(苦笑)。
いつか、うちの会社の皆が、リスクを承知したうえでリターンが期待できると判断したら、会社名を出すことになるかもしれません。そうなったらまったくステルスしてない宣伝をガンガンやることになるかもしれないので、そのときはどうぞよろしく!(笑)
ところで、コラムを書き始めたときに、社長に言ったことがあります。
「もし、わたしがコラムを書いてることで、会社にほんの少しでも不利益があると感じたら、そのときは言ってください。すぐにコラムをやめますので」
それでも、まだわたしはコラムを書き続けています。そして、たまに会社で「先週のコラム読みました」とか言われます。
今くらいの感じがちょうどいいです。
コメント
会社名を出してしまうと、会社の代表として恥ずかしくないことを書かなくてはいけなくなります。また、うかつにあの製品よりこの製品の方がいい、とか書くと、クライアントさんがいい顔をしないこともあるかもしれません。だから会社名は出さない方が自由に書ける、と私は思っています。
もし自分が社長だったら、宣伝を兼ねて名前を出して会社として主張したいことを書くと思いますが。
仲澤@失業者
ほとんどは既に使われなくなったものですが、
約20社ほどの自分の名刺を持ってます(笑)。
社名入りの名刺を出した以上、自分の発言の全ては
その会社の公式見解であるとの認識ですね(まぁそれほど硬くならんでもいいですけど)。
大昔は一日に数種類を使い分けていたので結構注意が必要でした。
役員の名刺の場合は、特に注意してましたです(vv;)。
当たり前ですが、名刺が異なればしゃべる内容もまったく異なります。
立場によって意見が正反対になることはありませんが、
言葉遣いやニュアンスを制御しますので、事実部分はまったく同じでも
聞き手が受ける印象を正反対に誘導することも可能です。
一般にビジネスの現場では、これは当然のことだとの認識で、
相手も同じであることを求めてしまいますね。
・・・おとなになれよってことでしょうか。
発言にはその背景や前提や本人の立場があり、
その責任をになっていてもらわないと困ります。
そうでない種類の発言は、つまり、立場を表明しない
発言を無責任と言うのかも知れませんねぇ。
名無しさんとか・・・。
自分を良く知っている人は次のように釘を刺してから発言をもとめますねぇ。
「どの立場でしゃべってんだ、アホウっ。個人的見解を聞かせろ」
・・・(vv;)
ひでみ
こんばんわです。ひでみです。
abekkanさん。
会社名を出してコラムを書くと、個人的な発言を会社の意見と受け取られてもしかたない感じはしますよね。
個人的な趣味で書いてます、ということを示すためにも、会社名を出さない方がよいんですかね。
仲澤@失業者さん。
私はかなり長いこと名刺を持たない生活をしていたので(内にこもってプログラムばっかり書いてたから)、複数の名刺とキャラ(?)を使い分けられるというだけで、大人だなあ、って感じます。
> 当たり前ですが、名刺が異なればしゃべる内容もまったく異なります。
多分、最初から会社の意向を受けて、会社名を出してコラムを書いていたら、今とは違う感じの文章を書いてましたね。
そうして書いた文章がおもしろければ、それでOKかと思いますが、いかんせん私はそういうのが苦手で、多分、年相応っぽくみせようとして破綻した文章になってたと思います(苦笑)。