バックキャスティングのススメ — 積み上げではなく結果から遡って考える
前々回のコラム「英語学習には戦略的なアプローチが必要-やらないで済めばよいが…」で、目標設定について取り上げました。目標を定めるに当たり、よく耳にする「中学英語でOK」について、前回のコラム「『中学英語でOK』のホントとウソ」で筆者の見解を述べました。
さて、今回は、設定した目標、つまり結果から遡って考える「バックキャスティング」について述べます。
■バックキャスティングとは
バックキャスティングという言葉は、あまり広く知られていないように思います。Wikipedia英語版には、以下のようにあります。
Backcasting starts with defining a desirable future and then works backwards to identify policies and programs that will connect the future to the present.
(バックキャスティングは、望ましい将来を定義することから始め、将来を現在に結びつける方針と計画を逆向きに検討して決定する。)
バックキャスティングをひとことでまとめると、結果から遡って考える方法だと言ってよいでしょう。
一方、通常の考え方と言ってよいフォーキャスティング(forecasting)については、Wikipedia英語版には以下のようにあります。
Forecasting is the process of making statements about events whose actual outcomes (typically) have not yet been observed.
(フォーキャスティングは、(一般的には)実際の結果が分かっていない事柄について計画を策定するプロセスである。)
フォーキャスティングそれ自体の欠陥ではないのですが、現状からの努力の積み上げで、結果に対する効果が検証できない施策を盛り込みがちです。そうなると、成果はある意味で出来高払いで、目標の達成が不確実になってしまいます。また、時間や費用のコストがかさんでしまうことが少なくありません。
ここで、筆者が時間を取り上げたことにご注意ください。時間は誰に対しても平等で、最も希少な資源です。
■目標と現状のギャップ
英語の学習に限らず、どんな場合にも当てはまる問題解決のフレームワークは、目標と現状とのギャップを解くべき問題と捉えることです。
筆者は、この問題定義がもっとも重要だと考えており、多くの場合、問題がうまく定義できたら半分以上解決できていると思います。
■バックキャスティングとフォーキャスティングを組み合わせる
バックキャスティング一辺倒では実現不可能な計画を導くこともありますが、かと言って逆にフォーキャスティング一辺倒では、とくに時間に関する制約条件を満たさない計画を導くことがあります。
そのため、両者をうまく組み合わせて、目標を達成できる現実的な計画を立案する必要があります。
これは、数学の証明法にある前進後退法(forward-backward method)と似ているかもしれません。前進後退法は、ある事柄から別の事柄を言う前進過程と、ある事柄を言うためには何が言えればよいのかを考える後退過程とを組み合わせて、定理を証明する方法です。ちなみに、筆者は前進後退法という呼び名は習った記憶がありませんが、証明問題で知らないうちに使っていました。読者の皆様も同様ではないでしょうか。
問題解決も、前進後退法による定理の証明のように、バックキャスティング(後退過程)とフォーキャスティング(前進過程)を組み合わせて検討すればよいと考えます。
■ガジェットの話はどこへ行った?
ガジェットは道具に過ぎませんが、道具の発達は戦略を変えます。定義された問題をどう解くかは、道具をいかに使いこなすかにかかっていると言えると思います。
筆者は、リソースアロケーション、つまり持てる資源をどう割り当てるかを重視しているのですが、この点にガジェットが深く関わっています。