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「中学英語でOK」のホントとウソ

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 前回のコラム「英語学習には戦略的なアプローチが必要-やらないで済めばよいが…」では、目標設定の重要性について説明しました。今回は、世間で蔓延する「中学英語でOK」について取り上げます。

■そもそも中学英語とは何か

 「中学英語」という言葉はよく耳にしますが、恐ろしいことに、ほとんど定義なしで使われています。これが何物であるかを明確にしない限り、「中学英語でOK」かどうかを議論しても話がかみ合いません。話している用語は同じでも、人によって考えていることが違ってしまうからです。

 本稿では、中学校学習指導要領解説)の内容を「中学英語」と考えます。現在の指導要領では、語彙(ごい)は1,200語程度としていますが、その前は900語だったそうです(必修単語数の変遷が河合塾の高等学校学習指導要領分析にあります)。

 開隆堂出版が、平成24~27年度用の各社の中学校英語教科書で使われる英単語のリスト「中学で学ぶ英単語」を公開しています。また、高知県教育委員会がまとめた「中学校でこれだけは身に付けてほしい基礎英単語1200【KORETAN1200】」があります。

■「中学英語でOK」のホント

 中学英語ではなぜか関係代名詞は制限用法しか習いませんが、この点には目をつぶって継続用法(関係代名詞の前にはカンマを打ち、関係節を「ちなみに~」と訳すことができる)も使ってよいことにすると、取扱説明書のような技術文書の多くは文法的にはかなりの部分が対応可能だと思います。

 中学で教わる時制も少ないのですが、技術文書では因果関係や順序関係が把握できればよいので、あまり問題にならないでしょう。

 専門用語は、強力な武器になります。もちろん中学英語の語彙を超えることが多い訳ですが、IT分野ではカタカナ語として日本語に取り入れられている専門用語が多いので、あまり覚えるという感覚はないでしょう。

 筆者の知人には、英語を非常に苦手にしているのに、海外の有名研究所に長期出張していた間に大きな成果を上げ、表彰された人がいます。これは、専門分野に限って言えば、ホワイトボードと術語で十分にコミュニケーションが図れるという好例だと思います。

■「中学英語でOK」のウソ

 中学校で習う語彙が十分でないという観点から、「中学英語でOK」はウソである、と主張する方もおられます。この点は、筆者も同感です。

 「中学英語でOK」という宣伝文句が使われている場合は、まず間違いなくマーケティング上のレトリックであり、実際には中学で習わないことまで含めています。典型的なのは基本的な単語の組み合わせを中学英語と称することですが、文法的にも中学の範囲を超えているものが少なくありません。以下の1は基本的な単語の組み合わせの例、2は中学で習わない文法の例です。

  1. Do you have the time? / Can you make it? / Give it all you got. / Hit the ground running.
  2. I should have said something.

 著名な同時通訳者や英会話講師などの専門家が「中学英語でOK」というタイトルで出版や講演をしていることは看板に偽りありで、筆者は残念に思っています。

■結局、中学英語ではダメか?

 前述のように、ITの専門領域に限れば中学英語+αであまり不自由しない場合もあると思います。このレベルに目標設定できる状況であれば、中学英語に若干の文法と専門用語(原語)を強化すればよいでしょう。

 そうでない場合は中学英語(+α)では足りない訳ですが、だからと言って中学英語を初めからやり直すのは、あまりに非効率であり、お奨めできません。文法については、問題集を解いてみて自分の苦手な単元を洗い出し、分かっていないところを強化するのがよいと考えます。

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