英語学習には戦略的なアプローチが必要ーやらないで済めばよいが…
本コラムでは、ボトムアップにガジェットを活用した英語学習の工夫について取り上げてきました。
トップダウンに書くと、方法の詳細に触れるまでは具体的な内容が分からずに納得性が低くなることがありますし、何よりも上から目線のようでちょっと嫌な感じがします。
とは言え、ここまで具体的な方法を中心に取り上げてきましたので、トップダウンに説明しても詳細が不明になることはないと思います。上から目線のように感じられたら、それは筆者の文章力がないということで、ご容赦ください。
■最良の戦略は「やらない」で済ませること
物騒な話で少々恐縮ですが、元来「戦略」が対象とする戦争を引き合いに出せば、戦争をしないで済むように外交で決着させるのが最も優れた戦略です。当然ながら、戦争をする以上の問題を起こさないことが大前提です。
では、英語を学習しないで済ませられるのでしょうか?
成毛眞氏のベストセラー「日本人の9割に英語はいらない」では、大胆な仮定を置いて数値を挙げ、「日本人の9割には英語は不要」であると説いています。しかし、裏を返せば「日本人の1割には英語が必要」ということで、その1割には飛び抜けた英語力が必要であるとも言っています。
■英語なしで済ませるのも大変
状況が許せば、自分で英語を学習する必要はありません。費用と時間に余裕があり、通訳や翻訳者を雇うことができるのなら、それで済ますこともできるでしょう。しかし、なかなかそうは行かないのも真実です(筆者には少なくとも金銭的に無理があります)。
筆者も愛読し、何度か取り上げてきた「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論では、著者の江端智一氏は英語を極力使わないで済ませるために、大変な努力をしていらっしゃいます。ご当人は否定なさっていますが、一般の人の基準からすれば江端氏は「英語に愛されているエンジニア」の部類に入ると思います。本当に「英語に愛されないエンジニア」ならば、とてもここまではできないと考えるからです。
■英語学習にこそ戦略的なアプローチが必要
英語を含む語学の習得には時間がかかります。しかも、極めようとすれば際限がありません。母語(日本語)でも、売り物になるような文章を書いたり、大勢の聴衆の前で講演したりできるレベルを求められれば、筆者を含む一般の人には相当の努力が必要になります。
戦略的なアプローチを取らなければ、成毛氏の指摘通りに「英語業界のカモになる」ことは請け合いです。漫然と取り組むなら、たとえば、いつまでも英会話学校に通うという結果になります。
なお、こういう状況に陥るのは英語に限ったことではなく、たとえば「英語」を「ピアノ」のような習い事に置き換えても同じことが言えます。
■問題解決のフレームワーク
問題解決では、目標と現状のギャップを問題と定義します。英語の4つの力、つまり「読む、聴く、書く、話す」について、このギャップを測ることになります。
ここで、目標は自分でしか定められないことと、計測方法が重要であることに注意が必要です。
また、目的と目標を混同しないように注意してください。たとえば、TOEICスコアの目標や検定試験合格は、目標であって目的ではありません。目的は自分の価値観に照らして、将来的にどうなりたいのかを煮詰めて明確化します。
いつまでに、どのレベルまで達したいかを定めるのが、目標設定です。計測方法が重要なのは、目標の達成基準が必要だからです。
■戦略キャンバス
ブルー・オーシャン戦略の戦略キャンバスは、レーダーチャートの同心円状の評価軸を縦にして並べたようなものです。一般には評価軸と値を設定できることが重要なのですが、英語学習の場合、基本的には前述の4つの力を挙げればよいでしょう。
各自が目指す姿によって、戦略キャンバスが異なってくることは言うまでもありません。自分で戦略キャンバスを描いて、いつまでに、どこまで達成するか、目標を設定してみてください。
■ガジェットの話は?
今回はガジェットの話が出ていませんが、次回以降のコラムで取り上げるリソースアロケーションの中で説明します。誰に対しても平等なのは時間だけで、最も希少な資源である時間を活用するためにガジェットを活用します。