情報システム部門での経験から生まれた、格言、迷言集です。

【知らぬがほっとけ】

»

■原典:知らぬが仏

■意味:

 技術的な内容や、現場の事情をあまり知らないのに、ちょこっとだけ口出ししてくる上司に対しては、はいはい、という顔をしておき、ほっとくのが、最もよい対処方法である。

■解説:

 SEが仕事をする上で、技術的な内容を理解してもらえないケースで困るパターンが2つあります。お客様に理解してもらえないケース。そして、理解していない上司から、ありがたいアドバイスをしていただくケースです。

 お客様の場合は、当然、技術的なことは専門外なので、できる限り噛み砕いて、一般用語で説明します。その場合、技術的な正確さより影響範囲、良い点、悪い点などの観点を中心に説明します。

 逆に、上司によるありがたいアドバイスの場合は、技術的な説明をし上司の間違いを指摘して、方針転換してもらうのは一苦労です。かといって、そのアドバイスを受けてそのとおりに実施すると、お客様にも、迷惑をかけるケースに発展する場合もあります。そういう場合は、ありがたくアドバイスを聞いておき、聞くだけにしておき、実施は保留するというのが、大人の対応です。

●用例:

018055s 次のお客様は、予算も少なく、データ量も多くないので、無料のデータベースを利用したシステムを組みたいと思います。MySQLやPostgreSQLも検討したのですが、既存のプログラムが流用できるOracle XEを使いたいと思います。

014487s たしか、ヨソノシステムのホカノさんは、SQL Serverの無償版ってので開発したって、言ってたけど、それを使えば?

027999s トリガや関数も異なりますし、既存のPL/SQLも使えなくなりますし開発工数も増えてしまいます。それに、SQL Serverの開発経験も少ないので、リスクが高くなると思います。

014487s ホカノさんができるのに、君たちにはできないというのか?

    ……

020523s 主任。この間の物件って、どうなりました?

027999s あー。結局、SQL Serverで開発することになったよ。「知らぬがほっとけ」を決め込むんだったな。

020523s なんですか、それ?

018055s ああいう場合は、技術的に解説するより、その場は、検討項目に加えておきます、て言っておいて、後で比較表を作って、検討結果を発表すれば、Oracle XEに決められたかもしれなかったよ。

●注意:

 先の用例は、自社内の上司と部下という関係での会話ですが、上司役が、お客様の場合は、「知らぬがほっとけ」を使ってはいけません。まあ、上司に対して使うのも、あくまで内々のお話に留めておきましょう。

 また、間違った用例として、知らない人には教えてあげる必要はないという使い方はいけません。SEの世界では情報共有は、「人のためならず」ですから。

●悪例:

027999s 古株部長って、他社事例が好きで、こちらの事情とかあまり考慮してもらえなくて……。
この間も、むりやり、不慣れなデータベースで開発させられちゃって。

014245s まあ、仕方ないじゃん。そういう場合は、「知らぬがほっとけ」ってほっとけばいいんだよ。

018055s 軽井さん、使い方間違ってますよ。


●登場人物:

020523s 新人川伊:(かわいさん):多様なことに興味がある新人OL。いろいろと気がつく。

018055s 物尻主任:(ものしり主任):会社の裏事情まで良く知っている先輩主任。

014245s 軽井主任:(かるい主任):呼んでもいないのに話に入ってくる、お調子者。

014487s 古株部長:(ふるかぶ部長):少し頑固で、言い出したら聞かない子供のような部長。

Comment(2)

コメント

tenkoro

単なる入れ知恵なのか、それとも何か深い理由があるのか、といったバックグラウンドを理解した上で、
保留するかどうかを判断できたら、立派な中堅なんでしょうね。。

ちゃとらん

> 単なる入れ知恵なのか、それとも何か深い理由があるのか、
いまだに、判断できないという事は、私はまだ、中堅の域まで達していないということかもしれません。
しかも発言が4次元(空間だけでなく、時間によって変化する)なので、予測することが出来ません。
まだまだ、修行中です。

コメントを投稿する