“ツチ吉”の葛藤
2002年3月27日の「@IT通信」に掲載したコラムを紹介します。「土」の下に「口」、通称「つちよし」フォントは(Tsuchiyoshi.svg、Unicode U+20BB7)、第1面以降対応ブラウザ(Firefox 1.5以降など)とJIS X 0213-2004外のUnicode SIP(第2面)文字を搭載したフォント[76]を用意する必要があるそうです(Wikipedia調べ)。
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@ITの記事はこう見えても(?)、校正者の方に校正をお願いしている(これは極秘情報だが、していないものもある)。そこで以前、ある原稿に関して校正者の方から次のような指摘を受けた。
「吉野家」の“吉”の上は「土」です──。
しかも、吉野家は社名の表記にわりとこだわるとの話である。
と言われても「吉」の字は、「斉/斎/齊/齋」などと違って、工業技術院日本工業規格では同字の扱いになっており、文字コードは1つしか割り当てられていないから書き分けるとしたらフォントで切り替えるしかない(しかも該当する字体をもっているフォントセットが必要)。印刷物を作っているならともかく、Webメディアの@ITに対してあまりといえばあまりの指摘である。
そこで本家本元の「吉野家ディー・アンド・シー」のサイトはどうなっているかと思って見てみると、ロゴが「土」になっているのは当然として、なんと本文中の“吉野家”も「土」になっているではないか!
どうなっているのかと思ってみてみると文中にグラフィックが貼ってあるのだ。したがって、Webブラウザの文字サイズを変更すると少々悲しいことになってしまうが、このページを作った方のご苦労がしのばれる思いであった。
さらに校正者の方の情報を裏付けるように、吉野家サイトには各ページに『弊社の“吉”は「土」に「口」、“や”は「家」です』というような説明まで載っている(現在はないようです)。
さて、では@ITでも「吉野家」文字をグラフィックで載せたか?──というと、悩んだ挙句(?)しませんでした。吉野家のみなさん、ごめんなさい。
このあと、新聞や雑誌で「吉野家」と出てくると見てしまうのだが、なるほどけっこう「ツチ吉」(俗にそういうらしい)になっていることが少なくない。そこにはそれなりに苦労や配慮があるのだなぁと気になってしまうのである。
この文字コードと書体の話は奥深く、かつ文科系・技術系の人々が入り乱れて、バトルロイヤルを繰り広げている分野なので、ここではこれ以上深入りしないが、もしご意見・感想などありましたら、会議室までどうぞ。