カタカナ語はけしからんのか
2001年8月29日の「@IT通信」に掲載したコラムを紹介します。編集部員Kはその昔、「カタカナが苦手」という理由で、世界史を放棄して日本史履修をしました。
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昨日、eコマースサイト構築パッケージソフトの開発メーカーであるコマースセンターが主催した「EC 井戸端会議」に出席した。この会社で会長を務める前コンパック会長の村井勝氏なども出席して、ECの最前線に立つ方々の話が聞けた。
そこで、プレゼンテーションとは別に出た話題として、ITやEC普及を阻害しているのは、「IT用語にカタカナ語が多すぎる」からではないのか、という指摘があった。
個人の趣味としてモノを買うBtoCの世界ならば、やりたくない人はパソコンなど使わずに買い物すればよいのだが、ビジネスツールの1つとしてのBtoBシステムは、コンピュータが好きではない人間にも使えるようにならなければ普及しないというのだ。
これは古くて、新しい問題だ。これまで(そしていまも)何度も繰り返し指摘されてきた。
コンピュータやネットワークの世界だけではなく、ビジネスの世界もeビジネス化により、英語直輸入が目立つ。「カスタマ・リレーションシップ・マネジメント」「ワンツーワン・マーケティング」「サプライ・チェーン・マネジメント」……。この分野は、米国が「カンバン方式」をJIT(Just In Time)と“翻訳”したように、もっと訳されてよいのは確かだろう。
コンピュータ用語にも和風のほうが分かりやすいものも少なくないが、訳すには「造語」するしかないものも多い。それに翻訳さえすれば分かりやすくなるかといえば必ずしもそうではないような気がするのだ。おそらく、英語が母語の人でも、「IT用語は分からん」という人も少なくないのではないだろうか。
これらは単にカタカナだから分からないのではなく、それが新しい概念・考え方を要求するから理解に努力が必要になるのであろう。
よくCUIがGUIになって「分かりやすくなった」というが、これは本当は「分かった人が操作するうえで便利になった」ということのように思う。初めてコンピュータに触る人はコマンドの替わりに操作手順を覚えなければならない。
そこでECなどのシステムを導入する場合、その会社での従来のやり方をコンピュータ上でも踏襲し、変化を少なくすることが必要だというような意見もあったが、ビジネスプロセスを変えて効率的にすることがIT武装のポイントの1つなのだから、深刻な矛盾に陥っているともいえる。
IT業界にはコンピュータが嫌いという人はいないが、それ以外の業界にはパソコンなんか見るのもイヤという人や電子機器を恐れている人がいるのだ。IT業界以外でのIT推進には、見えないハードルがたくさんある。