マイクロソフトは怖くないが、奥さんは……リーナス・トーバルズ取材
2001年6月6日の「@IT通信」に掲載したコラムを紹介します。リーナス・トーバルトが@ITにやって来た、歴史的瞬間。ああ、その場にいたかった……。
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先週水曜日(*編注:当時)のリーナス・トーバルズを囲んで開かれたセッションのニュース(*1)、ご覧いただいたでしょうか? ニュースのタイトルには“渋谷”とありますが、具体的に渋谷のどこかというと、HMVでもスクランブル交差点でも、もちろんNHKでもなく、道玄坂にあるオフィスビルです。同じフロア(*2)にわが@ITのオフィスもあります(*編注:当時)。
あのリーナスが来日したことだけでもすでに事件なのですが、あの記事は@ITが入居するマークシティビルで開催された2時間のディスカッションのときのものだったのです。さらにいうと、@ITのオフィスにも3分ほど足を踏み入れてくれました。このときの写真は忘れたころ(*3)に“デジカメレポート”で発表されることでしょう。
なぜ渋谷なの? についてはこの際、省略します。が、せっかくなのでニュースに書かなかった“リーナス@渋谷・こぼれ話”を紹介しましょう。
【やっぱりサンダルだった】
登場したリーナスのいでたちはというと、ベージュのポロシャツ(胸にペンギンマークあり)とDOCKERSのチノパン。足元は、靴下にeccoのサンダル! これぞエンジニアの正しい姿(か?)。
【字に自信がない?】
サインを頼む参加者に対して、リーナスはすごく困った顔をして、「自分の字が好きじゃないし、恥ずかしい」。それでも、持参のラップトップや切り抜き記事にサインをもらったラッキーな参加者がいました。
【女性好き?】
自著(*4)に“いつも若い女性に囲まれていたい”と書いてあることに触れると、リーナスは、「そうなんだ。でも、妻はその言葉を許してくれないし、認めてくれないんだ」と赤面。この純粋さを見て、リーナスは(相手がコンピュータの場合と違って)こと女性となると器用ではないと勝手に判断しました。間違っても奥さんを裏切るようなことはしないでしょう(実生活でいかに女性に囲まれているかは自伝を読めばわかります。が、書店に行かずとも、Amazon.co.jpに行かずとも、@ITのニュースのどこかに書かれています)。
【資格に頼るな】
少し真面目な話です。IT業界にも資格が多く、最近はリナックスでも教育ビジネスが立ちあがりつつある状況に対して、「こんなビジネスが出てくるとは想像もしなかった」とコメント。リーナスは、Linuxを教育ビジネスにするには難しいかも、といいながら「僕自身は認定試験には意味はないと思っている。認定試験に合格するよりも“自分が知っていること(=プログラミングできること)”が大切じゃないかな」といっていました。
【最後にスエオカの感想】
リーナスに会える、と分かってから、下調べの意味でいくつか海外のメディアに登場している彼の記事を読みました。そこで思ったこと、「冷ややか」「毒舌」、ひょっとしてマスコミ嫌いかも――。当然、こちらはかなり緊張していたのですが、現れた彼はとてもにこやか、しかも気取りがありません。わたしは日本語の“オタク”がどんな意味を持つのか分からないので、彼のことをオタクとはいいません。が、とにかくプログラミングが純粋に好きということ、そして好きなものに没頭することが彼にとって、とても大切だということ、これだけは確かにいえそうです。
リーナスのほうはというと、緊張気味だった参加者があまりにおとなしかったことに驚いた様子。セッション後に「すごくシャイだね。フィンランドの人もシャイだと思ってたけどそれ以上だよ」。
(*1)編集注:http://www.atmarkit.co.jp/news/200105/31/linus.html
(*2)編集注:同じビルではなく、同じフロアに来たのである
(*3)編集注:忘れないうちにお願いします
(*4)筆者注:リーナスが共著した自伝「それがぼくには楽しかったから」。リーナス来日の目的は@ITに来ることだけ(?)ではなく、この本のプロモーションのためでもあった。「(日本語版の出版社が)ポケモンと同じで光栄だよ」とは共著者ディビット・ダイヤモンド氏のコメント。