地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

そのやり方が本当に必要なのか

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 私は個人的に NoCode/LowCode な取り組みや考え方が気に入っているのもあり、可能ならば自分たちでシステムをくみ上げる事が出来るのが最前と考えています。システム開発に長い事携わってきていますが、本当に欲しいシステムはユーザー自身でなければ作ることができない、という考え方には非常に同意しているのも理由の一つです。

 欲しい仕組みを他社に作成してもらうためには、多くのコミュニケーションを繰り返す必要があり、そこには非常に難易度の高い面があります。この部分で発生するコストや難易度を考えただけでも、自分たちでシステムを作り上げる事が非常に有用だと考えるのです。各種ツールやサービスの敷居が下がり、多くの人が利用できる状況になった今では、実際に自分たちだけでシステムを組み上げる事も夢物語ではなく、いたって現実的な方法の一つとなっています。

 このようなツールやサービスを利用する際、画面のデザインが望んだ形に作成できない、処理に時間がかかる、と色々な問題に遭遇する事も多いです。10の出来ることがあっても1の出来ない事があっただけで、採用を断念する場面もありますが非常に勿体ないことだと思います。容易に利用できるツールやサービスである以上、どこかで割り切りが必要です。

 ですが、だからといって全員が全員そのようなツールやサービスを利用し、システムを組み上げる事を当然とするのはどこか間違っているようにも思えます。利用する事が望ましいとは私の中でも良い方向として思えていますが、それを全体に適用するとなるとまたちょっと違うのではないでしょうか。

 よく IT に強い組織や個人が発するメッセージには、全ての人が自分たちでシステムを組み上げる事が良い事だ、と受け取れてしまうものも見かけます。確かにそれが実現出来たら良い事も多いのでしょうが、私の中では過剰なのではないかと思える点もあります。確かによく作られたシステムは、日頃の業務を助けよりよい結果を生み出すことに貢献します。その点は素晴らしい事なのですが、問題と考えるのはそれを生み出すためのコストや時間です。

 システムはそれ自体が目的ではなく、あくまでも日々の業務を補佐するために存在します。作ることが目的ではないので、そこに多くのコストと時間をかけてしまうことは本来の目的に反してしまいます。どこまでの時間をかけるか、どれだけのコストをかけるかというのを常にチェックしていく必要があるのです。そこで決めたラインを越えるまではシステム作成を継続しますが、そのラインを越えるようであればシステム作成以外の方法を考える事がベターとなります。

 IT を駆使したシステムは確かに効果が高いです。ただそこにかけたコストや時間を、どれだけ業務を継続することで取り戻すことができるのか、そこまでを考えた上でどこまでのことをシステム化するかを考えなくてはなりません。予算に余裕もあり時間的な制約も少ないのであれば、出来る限りのことをシステム化することはメリットが大きいです。ですがそうも言えない場面では、かけられるコストからできるだけメリットを得られる規模や内容で、システムを考えていきます。Excel で日々の処理を自動化していることを揶揄するような人や企業もいますが、そこにあまりコストや時間をかけられないのであれば、システムをわざわざ作成するよりも Excel で一部でも自動化する対応をとることはむしろ理にかなっています。

 私たちは IT 業界にいる以上、新しい技術や新しい考え方に触れる事が多く、旧態依然としているものに対しては批判的な立場となりやすいです。私も無意識のうちにそのように考えてしまっていることが多々あります。ですが、利用するユーザーを中心にし、どのように仕組みを作り上げるとメリットが最も大きくなるのか、このような考え方をしていくことが必要なのではないでしょうか。

 エンジニアとしては新しい技術に触れ続けていく必要は、これからも変わらずあります。ですがそれだけを正解とするのではなく、本来の目的に沿った形で取捨選択し考えていければ、もっともっと良い結果が出てくるのではないかと私は考えます。

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