「できているからいい」という事
私の場合、基本的に TV の地上波を見ずにスカパーのみ見ている生活をしているのもあり、AV 機器回りが結構古いものを利用しているままでした。つい最近になってようやく色々と入れ替えを行ったこともあり、今風な接続で取り廻せるようになったのですが、そこで改めて新しい規格に統一することで映りも音声もよくなるし配線回りも非常に簡潔にまとめられていいことずくめであることに気づかされたりしています。
昔で言うライン入力、今でいうコンポジット端子でのやりとりとは見た目でわかるレベルで映像が変わるのは、今更ながらになかなか衝撃的です。
職業柄 PC の周りにおいては定期的に入れ替えているのもあり、ここまではっきりとした違いを感じることは少ないのですが、同じようなことはハードだけではなく、ソフトやインフラの面でも多々あるのだと思います。
世の中の流れは全体的に省力化に向かい、今までよりも少ない人数で同等以上のことができる、簡単にできるという方向へ常に進んでいます。また、同じことをやっていても、その質が今まで以上に向上しているというのも当然のようにあります。
今では当たり前となっているプラットフォームとしてのクラウドも、世の中に出てきた当初はオンプレミスの方が小回りが利いて良いといった意見が多く、浸透するまでに時間がかかっていたのは多くの人が覚えている事でしょう。
今では、重要データの外部保管など企業ポリシー的にクラウドを利用できない、というある種正当な理由でオンプレミスを選択するようになり、当時と比較するとようやくここまで来た感がひとしおです。
実際にクラウドへ土台を移すことで、今まで目に見えなかった、あるいはわかっていて目を瞑っていたものが数多く明らかにされ、本当に問題であったのはクラウドもオンプレミスも全く関係がなかった、単に自社の体制的な問題であった、そういった現状分析に至った企業も多いのではないでしょうか。
この現状に潜む問題としてあるのは、今までと同じことをやろうとする、ことにあるのではないか、そのように考えることがあります。世の中が進み、多くの物事が変わったにもかかわらず、自分たちが何も変わろうとしないのでは、どう考えても自分たちが取り残されていくだけです。
最初にあげたコンポジット端子でどうこうしている話も、映像が見ることができているから、音声を聞くことができているから、とそこだけを気にして今までのまま利用していたのでは、同じことができているように思えてその質は全然異なってしまいます。周りの人たちが同じことを安価にできている中、自分だけがコスト的にも悪い方法を続けているとなれば、これも世の中から取り残されていくことになるように思えます。
同じことができているからよい、のではなく、より良い方法で同じことができるのであれば乗り換えていくことが、私達 IT 業界に携わる人間としては正しい進み方だと考えます。勿論そうするためには、調査が必要・試験が必要といった、違う問題も多く待ち構えていますが、そこを気にするあまりに現状維持を選ぶことは、守りに見えているようでじりじりと後退している、もっと言えば先に進むことが一切できずにどこかで破綻するだけになります。
それを指し示すものとして、数年前と比較すると、この業界は二極化が進んでいるのが実感できているのではないでしょうか。書籍や各種媒体、SNS 等で流れている多くの情報を見ていると、自分の置かれた環境とあまりに違うことに多々気づかされます。かたや Excel に仕様をまとめながら開発を行い、手動によるテストエビデンスという名前のスクリーンショットを残しているというのに、耳にするのは自動化による省力化や DevOps といったよりよくサイクルを回すためのキーワードです。同じ業界にいるというのに、まったくそのように感じることができないくらいに差が開いています。
単純に導入できるような代物ではないから、という面も確かにありますが、実際にはほとんどの物事は「やればできる」ものであるはずなのです。違いがあるとすれば、協力的な体制があるかどうか、程度のはずなのです。自分一人だけで進めるには限度があります。多くの物事はそこがネックとなるはずですが、違う理由を見つけて手を出さないことが多いのではないでしょうか。
気が付いた時には、自社がコンポジット端子のもののように、新しいものとそっくり入れ替えられてしまう、そんな事も普通に起こりえます。地域差はまだまだあるにしろ、そう遠くない将来にどこででも発生するのは想像に難くありません。そうならないためにも、自分たちで先に進んでいけるよう、少しずつでも何かしら取り組みを行っていく必要があるのではないでしょうか。