最後に辿り着くのはコミュニケーション
この業界でそれなりに仕事をこなしてきてはいますが、私の基本的な立ち位置は開発側になります。業務として開発以外のことをやることはあるにしても、根幹となる考え方やふるまい方は、どうしても開発者としてのそれになっている点は常に付きまといます。
ここ数年、開発者・運用担当者・デザイナーといった、今までは異なる領域の人たちも交えてよりよい開発を行っていこうという流れが広まっています。開発者だけで色々と試行錯誤することも有益ではあるのですが、最終的にユーザーの利益とならなければそれは失敗である、このような大前提が抜けていたこともあり、関係者でチームを作りスムーズにサイクルを回す DevOps 的思想が広まってきたのは合点がいきます。
私が日頃目にする媒体や経路が、どうしても開発よりなのは否めないのですが、これらの話題の起点となっているのはどうしても「開発側から」となっているのは、正直この分野がまだまだ発展途上で、人材や理解に恵まれないと実施が難しい現状を表しているのかな、とも感じます。
それぞれの領域だけでうまくやろうとしても、結果としてそれほど大きくは変化しないというのは、これまでの経緯もあって理解しやすいところかと思います。開発が開発のことだけを考えていても、運用が運用のことだけを考えていても、利用するユーザーのことを考えずにいたのでは、良い結果は生み出すことができません。
DevOps の本質的な部分としても、開発や運用、それにビジネスの現場に携わる人たちの間で共通認識を持つこと、それが最終的にユーザーを満足させることへとつながるというのがあります。開発を行うにしても、運用を行うにしても、直接ユーザーと関わるにしても、最も重要な点は相手の満足度を高める、これに尽きます。
その点の前には、開発が○○だから、とか、運用が○○だから、とか、現場が○○だから、といった事は非常に些細なことに過ぎません。仮にそれらの問題がなかったものとして、それはユーザーの満足度を高めることにつながるのでしょうか。
これらの本質を理解し実施するためには、大きい障害を一つ解決する必要はあります。それはコミュニケーションにではないでしょうか。
ざっくりと言えば、互いに理解しあい協力する体制となる必要が DevOps にはあります。ツールで土台を構成できているからではなく、ユーザーが満足できるものを迅速に提供できるようになって初めて上手く実施できているものだと考えます。
そのためには、関係者間で意思の疎通が行われ、意見や目標が統一されている事が必要です。同じ目標を達成するためにそれぞれが知恵を出し合うのが、本来あるべき姿なのではないでしょうか。
そこに自分たちの領域の都合をだけ推し進めるのは、何一つ目的に合致しません。互いの事情を理解しあう事が、まずは重要なポイントなのかも知れません。そして、何故そう考えるに至ったかを共有できることで、一つの領域で考えた対応よりももっと素晴らしい案が見つかることは、それほど珍しい事ではないのです。
コミュニケーションを互いにとることだけが、解決するために必要な最低限のポイントですが、最低限にも関わらずそれを実行できることはどうしても難しいものでもあります。純粋に相手のことが気に食わないとか、自分の意見が相手に伝わらないとか、人と人との事ですので、どうしても上手くいかない部分は発生してしまうでしょう。これも DevOps 的思想を行う上で非常に難しい問題だと思われます。
ビジネスライク、といえば聞こえは悪いですが感情をできるだけ排して目的のために理論的行動をとり続けることができればよいのでしょうけども、これも万人が行えるものではありません。また、そうすることができたとして職場的に良い環境になる気は、ほとんど感じることができません。
今の状況を踏まえたうえで、取りうることのできる最善の方法を採ることを、常に私達には求められています。今回のテーマで行けば、目標を達成するために最善の方法となると、組み合わせの良い人材を集め一丸となるチームを構成できるようにする、ことが考えられます。しかしこれも、観点を会社側にシフトした際には、そこからあぶれた人員をどうすればよいか、という違う難題に見舞われてしまいます。
観点が違えば起きる問題も異なり、目標とすべき点すらも変わってしまうことは多々あります。ですが、そこまでを考えてしまうと何もできない状態に陥るのは、非常に明らかです。すべてを解決する銀の弾丸はどこにもなく、手持ちの戦力で戦うことを求められているのが私達なのです。ないものをねだったところで、なにも解決には至りません。
まずは私たちができる事・できそうな事に挑戦をし、それでも上手くいかない時にはより上のレイヤの人に判断を仰ぐ、まとめてみると至極当然で他愛もない事なのでしょうが、これが仕事として開発に携わる私たちが、常に考えていかなくてはならないことの一つなのかも知れません。