地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

古いものと新しいもの

»

 私は機会あるごとにセミナーやコミュニティの勉強会に参加するようにしています。それはまず、新しい技術に触れることができる、という点もありますが、仕事だけでは関わることが少ない技術に触れる機会である、というのが大きい理由の1つです。

 私は仕事としてもエンジニアであるので、このような技術には数多く触れる必要もあるのですが、そこを差し引いたとしても色々な技術を目にする、触れることが非常に好きです。仕事上必要がなくとも多くのものを扱いたいと常々思っています。勿論仕事として扱うことができればそれはそれで有難いのですが、なかなかそうも言ってはいられません。

 ですが、仕事にだけこだわることは、エンジニアとしての視野を狭めているようにも思えます。今まで関わりがないと思っていたものが、ふとしたきっかけで有用な技術に進化・発展するということは往々にしてあるのではないでしょうか。

 同じような話題として、枯れた技術と呼ばれるものがあります。長いこと使われることにより不具合や問題などが解決され、安定して利用することができるものです。これ自体は特に否定するものではなく、業種・業態によっては必需品とさえ思えます。

 反面、枯れた技術と呼ばれる分野では新しい技術を取り込むことが難しくなります。新しいものはその性質上、枯れている物と比較して不安定なことがあり得やすく、そこに不安を抱くことも多いです。いまだに Windows の新しいバージョンが登場する際に、サービスパック1を待ってから導入しようと思われる人が多いことも、ここに近いのではないのかと思います。

 しかし昨今の状況を見てもらうと感じられると思いますが、年々新しいものをビジネスに利用できるチャンスはかなりの短期間になりつつあります。さらに言えば、体力のある企業か狙いを定めている企業でなければ触れることのないものも多くなり、小さい企業では触ることができるようになった時には、ビジネスに利用するには遅すぎることも多くなっています。これは昔から続いている話題ですが、近年はその速度が一層加速されているようにも思えます。

 私は企業の経営には関わりがないので素人的な考えなのですが、一部の業種・業態を除いて、枯れた技術を使い続けることは、メリットよりもデメリットが大きいことなのではないかと考えています。

 今までの形にこだわることは、時として新しい形に切り替えない場合と比較してコスト等の面も含めると、実は今までの形を維持することが最も効率が悪いことは意外にあります。この辺りはどのあたりから物事を考えるか、という部分がありますので一概にどうこう言うには難しいのですが、ある程度の中~長期視点で考えると、現状維持というのは思っているよりも負担が大きいというのもあります。短期視点では逆に現状維持である方が負担も少ないので、ここが非常に判断の難しいところだと思います。

 個人的な考えとしては、企業であるならできるだけ長期的視点での判断を行ってもらいたいとは思いますが、現在の経済事情も考えると短期的視点に比重を置かざるを得ない事情も理解できます。

 少々話はずれますが、この辺りは作り手側としても難しいところかと思います。すべての面において好評価を得ることは非常に難しいので、何かしらの不評は起こるものだとも思います。初期コストが高めになるが運用コストは割安になるタイプ、反対に初期コストが割安で運用コストが割高になるタイプ、どちらにおいても良し悪しが存在するのではないでしょうか。満点を取ることができるのは、よほど練りに練られ想像を超えるようなものでなければ難しいのだと思います。
 
 しかし共通しているのは日々改善を行う必要がある、というところではないでしょうか。改善の対象となるのは、技術的な部分もあるでしょうし価格的な部分もあると思います。またはサポート的な部分もあるでしょう。まだまだ多くの部分で改善の余地があります。そして改善を行うためにも、古いものにだけこだわらずに新しいものに触れていく必要があるのだと思います。

 私は開発側に身をおいていますのが、そこで言えば古い言語で環境で開発を続けることが大きな問題だと感じています。この問題は本質としては「新しい物事に意欲を示さないエンジニア」の存在が大きいのだと思います。私の周囲でも年齢を盾に言い逃れる人が目につきますが、世の中には年齢に関係なくできる人はできます。個人的には仕事にプライドをもつのであれば、新しい物事を吸収し顧客に利便を提供することこそが大切だと考えていますので、それができないのであればプロではないのではないか、とまで考えます。

 今の世の中では、私の考えるエンジニアとは異なる人が多くなりすぎた点があるかと思います。このような中で私たちエンジニアには何が求められていくのでしょうか。非常に難しい「ゼネラリストとスペシャリストの問題」もありますが、このあたりについては日を改めて書いてみたいと思います。

Comment(7)

コメント

インドリ

あけましておめでとうございます。

> 今の世の中では、私の考えるエンジニアとは異なる人が多くなりすぎた点があるかと思います。

そうなんですよね・・・
でも、企業そのものがエンジニアを知らずに、サラリーマンになる事を強要している事実もあります。
日本の場合、企業に忠実に働くと、エンジニアでなくなります。
日本のIT業界は、優秀なエンジニアが欲しいと言いながら、自社の技術者をサラリーマンにしたがります。
また、妙な階級意識が多くてあきれております。
元請けと下請け、SEとPG・・・といったレッテル重視の武家社会風日本の感覚が非論理的過ぎて救えないなと思います。
ちなみに、私がそれが嫌でフリーになって多種多様な仕事をしております。
そして、OSレベルからみっちりと鍛練を積んでおります。
日本では、エンジニアで居たければ、フリーになるしかないかもしれません。

CMP

インドリさんのコメントを読んでいて、昔勤めていた会社の社長に言われたことを思い出しました。

遡ること17年前、「これからのプログラミングには「職人」なんていらないんだ!ただの組立工になれ!!」と。
まぁ今という時代を考えれば”先見の明あり”的な発言だなぁと思うけど、当時は「バカが、またとんでもないこといってるよ」って感じで聞いてました。
「組み立てる部品がどういうものかわからない奴が、ものを組み立てることなんてできるわけがないじゃないか」って思ってたんですよ(今もそうだけどね)。
でも、今は「一つ一つの部品はどういうものかわからなくても、設計図どおりにやれば組み立てられる」って考え方が主流みたいだけどね。
で、じゃあその設計図は誰が作るんだよってね。

この社長にはもうひとつ迷言があって、世の中にWindows3.1が出回り始めた頃に「時代はローテクだ!Windowsなんて最新鋭を追っかけても大手には敵わない!だが、今アセンブラでいけば、勝手に競争相手はいなくなるはずだからアセンブラを勉強しろ!!」と。
だけど実際(当時)は競争相手どころか仕事もなくなってるんですよねw。

Ahf

遅くなりましたがコメントありがとうございます。

>日本の場合、企業に忠実に働くと、エンジニアでなくなります。
>日本のIT業界は、優秀なエンジニアが欲しいと言いながら、
>自社の技術者をサラリーマンにしたがります。
(インドリさん)

そうですよね、全てではないにせよ多くの企業ではその傾向が強いと感じます。
優秀なエンジニアが欲しい、という点だけ少々異なり、
「(自社に都合のよい)万能的な人材」
を欲しがっているのかな、とも思います。

意外と、PGが育つとSEになる、と同じ問題なのかも知れません。
ちなみに私はその考えについて反対派なので、なかなか周囲の風当たりが厳しいですねw

>でも、今は「一つ一つの部品はどういうものかわからなくても、設計図どおりに
>やれば組み立てられる」って考え方が主流みたいだけどね。
(CMPさん)

この考え方も多いですよね。私も似たような話題で過去にコラムを書いているので、少々言いにくいのですが、パーツと言うかモジュールと言うか、部品を組み合わせる事で作ることができる物の品質が、ここ数年でかなり向上しているのもこの考えを進めているところがあると思います。

そして言われるように、設計図を作ることができる人間が不足しているように感じます。
実際の割合等は調べたことがありませんが、割合としても減少しているのではないでしょうか。

>Ahfさん
>意外と、PGが育つとSEになる、と同じ問題なのかも知れません。

優秀な人材には重要なことをして欲しくなりますよねぇ。
代わりを用意できそうな「作成」よりも、代わりが少ない「設計」のほうにシフトしているのは避けられないんじゃないですかね?

また、新しい技術ってのは、若い人のほうが取得しやすいと思うんですよねぇ。
経験という先入観が無い分、素直に受け入れられるってのもありますがー
育ってきた環境が新しい技術に近い場所ってのが一番大きな根拠です。
・・・あっ、爺の僻みなのかなw
いい環境が初めからあっていいなってw
そんなこともあって、新しい技術は若い人に任せたほうがいいんじゃないかなーと思ったり。

年季の入った巧みの技ではなく、量産型のお手軽組み立てでも困らない時代だと感じるんですわ。
エンジニアと呼ばれるような人は少数でよく、そのポジションに残るのは難しいんじゃないかなぁ?
代わりがいないと周りが認識できるほどに、突出する必要がありますからね。
逆の視点でみると、エンジニアでなくなるということは、その程度の能力だったということかもしれません。
代わりがいないのに、別のことをやらせるってのは無いと思うから・・・

あと・・・個人的には、会社に勤めているならエンジニアだってサラリーマンじゃないの?って単純な疑問もありますがw
こーエンジニアって言葉を美化しているような気がしてならないw
プログラミングから離れるってのは、その人にとってやりたい仕事ではなくなるかもしれませんけどね。
適材適所で変化したわけですから・・・やりたくない仕事はやらないってことは、ただのわがままのようにも感じるなぁ。

>CMPさん
結果だけみると、アセンブラに走ったのは失敗に終わったのかもしれないけれど、営業的な発想としては決して間違ってないと思いますよ。
Windows3.1の時はDOSのほうが良いことも多かったと思いますし。
PC-9801が消えてなくなると予想するのは難しかったですねぇ。
だから、Windowsを追いかけることも冒険だったはず。
流れが変わったのは、Windows95とDOS/Vですかね。
アセンブラに走って組み込み系の仕事を沢山手に入れていれば、今でも強い会社だったかもしれないですね。

インドリ

Ahfさん

>「(自社に都合のよい)万能的な人材」を欲しがっているのかな、とも思います。
経営者と話しする機会があるのですが、どうやらその様です。
しかし、結局のところ、万能な人材は技術者なのです。
技術に強くなければ、その時点で万能ではありません。
つまるところ、会社は利益が出る人材について曖昧にしか考えていないのが問題だと思います。
利益を与えずとも勝手に成長し、会社に利益をもたらしてくれる人は夢の存在です。
人材という名の資源を有効利用したり、優秀な人材が欲しければ環境を整えるしかありません。
勝手に利益を生む都合のよい人が入社し、勝手に会社が反映するのであれば誰も苦労しません。
仮に、技術者でなくても会社に利益が出るのであれば、その会社は情報処理技術を商売の道具にしている会社ではありません。
それは、建築師は要らないけども、建築で商売をするような矛盾に満ちた言動です。
日本のIT業界は、教育や人材活用が本当に下手だなと思います。
日本の経営は昔から、現場の人間が経営者目線で働く事を期待しておりましたが、それは高度経済成長期でその人にも将来が約束されていたからです。
現在その社会基盤が崩壊し、誰も将来が約束されていないのに、経営者目線で働く人材なんて居る筈がありません。
本当に遅れているのは技術の新旧ではなく、人間の思考そのものなのかもしれませんね。
技術が進歩しても、それを扱う人間が進歩しなければどうにもなりません。

インドリ

失礼しました。

謝り:反映
正しい:繁栄

Ahf

またまた返事が遅くなりまして申し訳ありません。

>経験という先入観が無い分、素直に受け入れられるってのもありますがー
>育ってきた環境が新しい技術に近い場所ってのが一番大きな根拠です。
(Sodaさん)

それは思いますね。ある程度の経験を持ってしまうとどうしても先入観やらなんやらが邪魔をすることが多くなってしまいます。特に昨今では決断を下すまでのスピードが重要になってきているのもあり、過去の経験を棚卸しないとなぁ、とは感じますね。
なかなかそれがうまくいかないのもありますがw

>現在その社会基盤が崩壊し、誰も将来が約束されていないのに、経営者目線で
>働く人材なんて居る筈がありません。
>本当に遅れているのは技術の新旧ではなく、人間の思考そのもの
>なのかもしれませんね。
(インドリさん)

そうですね。将来的な不安も大きいと思います。それと私の中ではやはり「評価」がなされていない、という気持ちもありますね。自分たちが行った事に対する正当な評価(何を正当な評価とするかは難しいですが)がないので、モチベーションもあがらずに負のスパイラルに陥っている面もあるのかな、などと考えたりします。

本当であれば経営的な部分も技術者には必要だというのは間違いない、というかそうでなければいけないと思うのですが、言われるように今の状況ではそれもまた難しいのですよね。

コメントを投稿する