地方エンジニアが感じる地方・中小企業での悩み

前を見ない 周りも見ない

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 この業界で仕事を続けていく上で大事なもの。人によっては答えが異なるだろうけれども共通して言われそうなもの。それはやはり「技術」だと思います。

 技術といっても一概にはまとめられず、非常に幅広い事柄です。設計の技術や実装の技術、さらにはコミュニケーションの技術にマネジメントの技術。少なくともITの分野で仕事を行うにはたくさんのスキルが必要なのは皆さん承知のことだと思います。

 しかしここ何年かでそういったスキルを持った人材が減少してきていると思うのは以前に書いた通りです。

 私の中では、スキルを上達させるために必要なことは「他との比較」だと考えています。自分と他人、ある案件と別の案件、自社システムと他社システム。そういった異なる物をそれぞれ比較することで、次につながる箇所が見えて、自分の身に付くのではないでしょうか。もちろん業務を行う中で身に付いてくる部分もあるとは思います。システムとしての基本構造ですとか、効率よく作業を行う為のものですとかそういう部分も確かに大きいでしょう。

 しかしある一定の経験を積み、それこそPGがSEと(自動的に)呼ばれるようになり始めた頃から。技術者というのは大きく2つに分かれてくる様に思えます。

 1つは「仕事だから」という理由で、必要でない限り学ぶことを捨てるタイプ。もう1つは「仕事じゃないけど」様々なところに目を配らせ新しいことを取り込もうとするタイプ。

 実際に会社に属する人間として、「どちらが良い」とは一概に言い切れない部分があるとは思います。全員が全員新しいことを取り込もうとするのも、仕事としてはあまり良くはないでしょう。ですが、私はこの業界で働く自分のことを「まず技術者であるべき」と考えていますので、後者を選択するタイプです。少なくともそれで飯を食べている以上。

 そのためできるだけ他と比較し、自分に足りない点やまだまだ届いていない点というのを感じていないと自分自身を捨てている気がするのです。知っていてあえて利用しないのならば問題はないと思います。「知らない」のと「知っているけど利用しない」では雲泥の差があると思っています。

 実際に私が見ている案件では、この時代になってもなお「排他制御を行っていない(行っているつもり)」とか「システムは納品時に手作業でインストールする」とか「DBの正規化を知らない(≠やらない)」とか、

 「まあ待て! ちょっと待て! いいからそこに座れ!」

 と言いたくなる事柄が、今になってもなお進行中で目にすることがあります。テーブルのデータをCSVに出力したはいいけれど、カラムが多すぎたためにExcel2003までだと開けないとか、楽しい話題はよくよく聞こえてきます(テキストエディタで開けば問題ないのですが、ユーザーにはなかなか望めないですよね)。

 開発標準や開発基盤を作成するだけのスキルが不足しているために、数年前に作成した物を使い続けるなど、こういう話題は中小企業になればなるほど、てんこ盛りです。むしろしっかりやろうとすればするだけ、変に波風が立ってしまい起案者がいたたまれなくなるようなケースもよく見かけます。

 本来であれば同業他社とは常に比較しあい、相手よりもより優れた物を用意するか、同等の物をさらに低コストで提供するかしなければいつかは先詰まりになってしまうこの業界。地方で仕事をしていると痛感するのですが、あまりこういった点で比較を行うような方が少ないというのが実態だと思います。実際そのスタイルで今までやってこれてしまっているのですから。首都圏などと異なり、競合する数自体がまず少ないのです。だから今のスタイルが悪いと思ってもいないのが実態だと思います。

 そしてもう1つ。地方の場合、「創業○○年!」という長きにわたり活動している企業というのが多いと思います。ベンチャー企業と長い実績を持つ会社が多く、その間にはそれほど企業が残っていない。なんだか技術者の分布に近い物がある気がします。

 ベンチャーではなく、このような実績をもつ企業の場合に起こりやすい問題が「社内にはびこる、ぬるま湯のような環境」だと思います。中堅以上の社員達の間にある「なあなあ」な空気。これもその会社、もしくはそこに勤める社員が成長しなくなる要因です。緊張感がなくなっている、というのが伝わりやすいでしょうか。

 「勤続年数が一定期間超えたので、それなりなポストにつけないと……」という様子が見えていたら危険信号です。肩書きを持つ人数が持たない人数より多い場合はなおさら危険です。そして厄介なのはこういうケースですと、経営者がこの実態に気付いていない事が多いということですね。何故こういう状況になっているのか、というのを本気で考えなければこれから先はますます苦しくなるのではないか、と思ってしまいます。

 ほんの少しだけ、周りに目を向けてみましょうよ。

 ほんの少しだけ、違う世界を見てみましょうよ。

 本当に少しだけでいいので、今の自分の状態を考えてみましょうよ。

 そこがスタートではないですか?

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