ゾーホージャパン社のZohoサービスの開発現場で繰り広げられる、インド人エンジニアと日本人エンジニアによる共同作業が映し出すIT業界での新しい働き方について紹介する。

インドの病院

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 はじめまして。Zoho推進の新入社員、一丸亜由美と申します。

 わたしは2008年4月から9月までの半年弱、インドで新入社員研修を受けてきました。入社2週間後にいきなりインドへ旅立つ新入社員はなかなかいないと思います。

 インドという国は、わたしにとって本当にいろいろな“初めて”が溢れる国でした。

 「Hello, World」のプログラムが書けるようになったのも、インド人のお家で3食ご飯(カレー)を御馳走になったのも、手でカレーを食べたのも、民族衣装のサリーを着たのも、牛車に乗ったのも、バイクに3人乗りしたのも、動いてる傾き気味のバスに乗り、ぎゅーぎゅー詰めで降りる人が足の上を歩いていくのも、1日に2回意識を失ったのも、歯が欠けてラッキーだと言われたのも、病院で爆笑されたのも、知らない子供たち、時には大人たちまでもがどこでもついてくるのも、全部全部初めて。社会人になってわたしも随分大人になったなぁ、と思っていたけれど、まだまだ経験してないことはいくらでもあるものなんだなぁ、と知りました。

 今回は、その中でも印象的だったインドの病院について書きたいと思います。

 普段はほとんど病院と縁のないわたしですが、インド滞在中には3回、病院送りになりました(決して、日本人なら誰でもそうなるというわけではありませんので、ご安心ください。実際、一緒に行った同期4人の中でわたしだけでした……)。

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 まずは到着後すぐの4月のこと。食事が合わないことによる体調不良だと思うのですが、2度ほど意識を失って倒れてしまいました。気がついたときには、1度目は後頭部に漫画のように大きなたんこぶができ、2度目は歯が欠けていました。そうして訪れた病院が、総務の方いわく「ジェンダーな病院」と、近所の歯医者さんの2つです。

1. ジェンダーな病院

 倒れた翌週、火曜日から総務のSさんに「病院行きたいなー」と毎日訴え続けたら、金曜日の夜には連れて行ってくださいました。

 女医さんいわく、

 「あなたはいま歩いてるし喋ってるんだからー、No need to worry!!」

 病院に来られる=歩けるくらい元気になるまで、病院には来られなかったわけですが、せっかくの医者の太鼓判なので、ありがたく受け取ることにしました。頭のたんこぶ用軟膏(痛み止めと、頭にたまった血を流すものだそうです)と、吐き気用・腹痛用のオレンジと黒のカプセル、よく分からない青い薬など、ドクター○リオに出てきそうな、とっても大きくてカラフルな薬をもらいました。費用は診察100ルピー(約200円)、薬代が200ルピー(約400円)でした。もはや、何が高くて何が安いのかよく分かりません。

 診察が終わり、待合室に1人で戻されたと思ったら、診療室ではSさんと女医さんが世間話を始めました。薬を受け取った後、そのままSさんを待つこと30分。診療時間より長いのはご愛嬌(あいきょう)です。

2. 近所の歯医者さん

 体調が落ち着いてから、欠けてしまった歯を治すべく近所の歯医者さんに行きました。黒魔術の儀式でも行うかのような部屋でしたが、歯医者さんは親切、かつ英語も流暢で一安心。

 「君、ラッキーだったね。この歯はすごく固いんだ。この歯だから欠けただけで済んでいるけど、他の歯だったら根元まで割れて、抜いて差し替えだったよ。いやあ、ラッキーだったねーホント」

 まさか歯が欠けてラッキーと言われる日がこようとは想像もしておりませんでしたが、そう言われるとそんな気もしてきました。ラッキー。

 おかげさまで歯はすっかり元通りにしてもらえました。ラッキー。ただし、りんごは一生食べるなと言われました。先生ごめんなさい、普通に食べてます。

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 次は5月1日の祝日のこと。インド人エンジニアの同僚の家に招待されたので、同期のメンバーと彼の家に行きました。どこからともなく近所や親戚の子供たちが集まってきたので、「だるまさんが転んだ」を教えました。ついうっかり全力で遊んでいたところ、男の子と激突して足を蹴られ、指が反対に反り返りました。

 たいしたことはありませんでしたが、変色してうまく歩けなかったので、念のためにめでたく3度目の病院送りとなりました。

3. ちょっと遠くの総合病院

 まずは骨の先生に診察してもらいました。レントゲンを撮りに別室へ行くと、サリーを着た看護師らしきお姉さんがいました。お姉さんは日本人のわたしを見て、なぜか笑い転げ出して止まらなくなり、呼吸を落ちつけようとして飲もうとした水も、笑いが止まらずに床に噴き出しました。そこまで笑ってもらえると、こちらとしてもちょっと嬉しくなってきます。

 大爆笑して撮ってもらった写真の結果、骨に異常はないので靭帯の先生のところに行くようにとのこと。帰りに先生にかるーいタッチで「バイバーイ」と言われました。

 別の受付で問い合わせると、靭帯の先生は1時間後(夕方の18時半。医者は暑いから夕方しか働かないそうです)にしか来ないとのこと。いったん会社に戻って時間通りに出直しましたが、案の定、先生は来ておりませんでした。わたしが知っているインド人の中では珍しく時間に正確な北インド出身の同僚が「約束の時間より遅い!」と苦情を言ってくれたのですが、先生いわく

 「まあ順番もあるしさ、大体、僕も時間守れないしー」

 ……ここまであっけらかんと言われると、そっかーじゃあ仕方ないなー、という気がしてきます。

 そんな先生との診察中、

 「Are you limping?」

と聞かれて、はい? と返すと、

 「まーいーやいーや、ちょっと歩いてみて」

と言われました。歩いてみると、

 「あ、それそれ、limp limp」

 Limp=足を引きずること。

 わたしの辞書にまた1つ単語が増えました。

 英語も学べる素敵なこの病院はイルミネーションがたくさんで、何だかコンビニのようでした。「24H」と堂々と書いてありましたが、靭帯の先生は夕方しかいないので、お越しの際はご注意ください。

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 意外と楽しい病院Daysを終えるころには、自分がスパイスとインドの水にとても弱いことに気付きました。体調が少しでも悪くなりそうなときは、カレーを一切摂取しないという「カレー断ち」することを覚えました。それ以降は病院送りになることもなくなりました。

 少しずつ元気になっていく途中で、ご飯が美味しいと体が元気で、体が元気だと心も楽しくて、ああ、繋がっているんだなぁ、と感じました。

 考えてみれば当たり前のこと、だけど今まで実感はしてこなかったこと。

 インドがわたしに教えてくれたことは、プログラムだけではなかったようです。

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