インドでの経験とエンジニアライフ
はじめまして。Zoho推進の最年長社員、山下義人です。
最初に断わっておくと、Zoho推進のメンバーは、わたしを除くと入社1~2年程度の経験のメンバーばかりで、わたしだけが異色の存在になります。最初に気を楽にするために言ってしまうと、メンバーの年齢はわたしの子供に近いぐらいで、少々ここへの投稿も気が引けています。わたしのエンジニアライフは(その定義にもよるでしょうが)20年前に終わっている(と自分では思っています)ので、正直、何を書いていいやらというところです。前置きが長くなりましたが、その分、余分なことも知っているということでもあります。
コラムの主題にふさわしく、最初は、何かインドのことを、と思っています。メンバーが色々な紹介をしているので、少し頑張って、わたししか知らないインドを紹介したいと思います。
いまさら説明が不要なぐらい、インドの経済発展は目覚ましく、その中心にあるのがITです。人口が日本の10倍近いですし、多くのインド人がITエンジニアを目指し、また、国もそれを支援しているので、日本で1万人のSI会社というと、それはもちろん日本最大級ですが、インドで1万人というと、そんな小さい会社は知らないというレベルになるかも知れません。10倍の10万とは言いませんが、5万、6万は当たり前で、未だに規模が増殖中です。もちろん、1000名程度の当社は、会社規模では小さい方だと思います。
では、そんなインドの典型的なIT企業とは、どんなところなのでしょうか?(もちろん、わたしが知っているのはその一部だけだとは思いますが)
まず、想像のとおり貧富の格差が激しいです。ITでは、月給で20万、30万のエンジニアはいくらでもいます。すなわち、日本と極端に変わりません。一方、彼らはメイド、専用運転手などを使っている人もたくさんいて、それは所得格差から来ています。ドライバーの月の給与が7000円程度と聞いたことがありますし、メイドさんは当然のように、はるかに安くてなんでもやってくれるようです。すなわち、ITエンジニアの給料の数%を払うと、なんでもやってもらえる環境が簡単にできるようです。
日本でお抱え運転手やメイドを使っている人などは、エンジニアでは皆無でしょうが、それがインドの現実で、ある意味、優秀なITエンジニアは超エリートということになります。ですから、彼らがあこがれるSI大手の会社に入社するのはエンジニアの夢であり、そこの設備は、日本の大企業顔負けです。
一度訪れたあるオフィスでは、2万人が働いているとのことでした。すなわち、オフィスではなくキャンパスです。仕事柄、シリコンバレーのキャンパスに行ったことがありますが、それに負けていない、ある意味ではそれ以上のものです。
1つのビルを指して、「ここでは何をやっているの?」と聞くと、「×××会社向けのシステム開発専用のビルで、2000人が働いているよ」「こっちのビルにはアスレチックジムとプールがあるよ」と答えが返ってきます。キャンパス内には10棟程度のビルがあり、広い中庭には大きな池があり、コンサートホールのような屋外施設が用意されています。ある会社では、キャンパス内に大規模なホテルのような設備があって、お客様が宿泊できるようです。これはインドのバンガロールにある有名なハイテクエリアのエレクトリックシティの1オフィスの話ですが、そこには、アラジンのお城のようなビルがあったりして、ちょっと普通のオフィス街とは違う雰囲気です。
インドのキャンパスの様子
ただ、少し路地裏に入れば、まさに多くの人が想像する、オートリキシャとスラム街のような光景が目に入ってきます。そして、不思議なことに、その貧富の差が調和して国をなしているのです。こんなに貧富の差があっても問題が起きないのは、聞くところによるとカースト制度のおかげのようです。そこに深く入るのはやめますが、インドとカースト制度は、国を語る上で切り離せない部分のようです。
最近のインドのエンジニアライフは変わってきていると思いますが、昔は「ストレスって何?」というような感じで、社会環境が日本とは大きく違っていたようです。そんなインドに10年近く行って、印象に残っていることを幾つか紹介してみます。
(1)タクシーの運転手に、ホテルの迎えが30分遅れたのでクレームしたら
わたし なんで30分も遅れるんだ!
運転手 今、大体9時ごろだと思って迎えに来たんだけど。
わたし ???(しばし呆然)なぜ、30分も遅れるんだ。時間確認しているのか?
運転手 時間? 時計もっていない。
わたし それでどうやって時間どおりに迎えに来れるんだ。
運転手 腹時計でやっている。
怒る気にもなれませんでした。
(2)タクシーでの長距離移動(約12時間、でも1万円程度の費用)での事件
わたし (英語のできないドライバーに身振り手振りで)トイレに行きたいので、止めてくれ。
運転手 (すぐに止まって、何もない大草原を指して)ここがトイレだからここでやれ。
わたし これはトイレじゃない。ちゃんとしたところに連れて行け。
運転手 (少し先のガソリンスタンドのコンクリートの塀を指して)ここがトイレだ!
わたし 扉はないのか?
運転手 ない。
もちろん、ここでギブアップです。
(3)インドで数10年ぶりの大雨の翌日
インドは排水が悪いのです。会社からの帰りのタクシーにて。
わたし 足もとに水が入ってきているが、大丈夫か?
運転手 大丈夫。こんなの年中。
わたし 水が膝まで来たが、本当に大丈夫か?
運転手 行けるところまで行ってみる。
しばらくすると、
運転手 (大洪水の陸の孤島で)これ以上は無理だ、ここで降りてくれ。あとは、自分たちで行ってくれ。これ以上、車は動かない。
わたし ……(しばし呆然)
仕方なく、近くにいた人に声を掛けます。
わたし ホテルに帰りたいんだけど?
近くにいた人 1つ方法がある。あのオートリキシャに乗れば大丈夫!
スーパーマンを期待して、その人が指したオートリキシャを見ました。超暴走族風の、エキゾーストの先が人の頭の高さまであるようなオートリキシャでした。
運転手 おれのリキシャならホテルまで行けるぜ。少々高いけどね。どうする。
もちろん、それに乗って、下半身が水につかりながら、潜水艦のようなリキシャでホテルに無事帰りましたとさ……。
というような経験をインドではたくさんしてきています。寝台車の特等席(日本の3等席?)の旅、自由席の飛行機の旅、予約していたホテルが改装中で利用できなかった旅(予約時に教えてほしい)……。こんなことが面白いと思えれば、インドは楽しいところだと思います。
最後に、エンジニアライフとは? ということを書きます。
エンジニアとは、創造的な職業なのか、それとも定型的な仕事をする人になっていくのか?
わたしの経験からすると、どちらも真実だと思います。皆さんの中にも知っている人がいるかと思いますが、Perlという言語はLarry Wallという人が作りました。実は一時期、わたしは彼の隣の席で仕事をしていました。もちろんそこでは創造的な仕事ばかりで、彼らは自らを「ハッカー」と呼び、どんどん新しい機能を作っていました(日本ではハッカーというと悪い印象ですが)。Perlのオブジェクト指向版や、GUI Perlなどの構想、プロトタイプを作ったりしていました。まさに創造的でクリエイティブな仕事です。
一方、わたしが中国の人たちと働いていたときは、いかに日本の製造業と同じような品質をソフトウェアに適用させるか、頑張って検討していました。ある意味、工場のラインと同じです。いかにしてでき上がるものの品質を高め、作業する人の人的要素に影響せずに良いソフトウェアを作れるかのチャレンジです。まさに、今の世の中で増えている、生産性の向上や品質の向上のためのツールです。
ITエンジニアの仕事、すなわちソフトウェア製作には、創造的な仕事と定型的な仕事の両面があると思います。いってみれば、車や家電製品と同じです。デザインをして、良い機能のものを考えだす役割の仕事。そして、それらを利用して品質の安定したものを製作する人。ソフトウェアの世界では、そのどちらにも人が深く絡んでおり、なおかつ人の依存度が高く自動化が難しいので、まだまだ試行錯誤が続いている気がします。
ITエンジニアは、誰のために仕事をしているのか? お客様のためであり、自分のためです。もちろんこれも私見ですが、両方とも事実だと思います。
まずは人間、自己満足からだと思います。新しい知識を吸収して、色々なことができるようになり、明確なアウトプットが出せるようになる。それができるようになると、今度は自身の成果がお客様や第3者に認められるようになりたいと思います。お金よりも褒められた方がモチベーションが上がるという話をよく耳にしますが、まさにその通りだと思います。自分の成果が認められて利用される達成感なのでしょうか?
そして、それが過ぎると、今度は社会貢献です。これは社会貢献で名をあげたいということではなく(もちろんそういう人もいるでしょうが)、達成感の次のステップなのかなと思います。もうお金は良いから、自分の成果が世の中で役に立ったら嬉しいな、と思える時期があるのだと思います。もちろん温度差があるでしょうし、年齢や収入などの問題もあるので、人それぞれでしょう。最初から、最後のステップに行っている人もいるかも知れません。経験と環境でステップアップしていくのかなと思います(ちなみに、わたし自身はまだまだひよっ子です)。
全員が同じである必要はないでしょう。それぞれの人がうまくポジショニングできて、仕事をしていけると良いなと思います。
最後になりましたが、わたし、山下義人は、Zoho推進部長であると同時に弊社 代表取締役ということで、少し宣伝をさせてもらいます。エンジニアライフともども、ぜひ、21世紀を切り開く、オンラインサービスのZohoを使ってみてください。まだまだ、未熟ですが、5年後、10年後の大ブレークを目指しています。