ゾーホージャパン社のZohoサービスの開発現場で繰り広げられる、インド人エンジニアと日本人エンジニアによる共同作業が映し出すIT業界での新しい働き方について紹介する。

インドの雲(クラウド)は流れが速い?!(その2)

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 こんにちは! ゾーホージャパン新入社員の本田です。

 前回の投稿でわたしは、「クラウドサービスの強みは、その変化の速さにこそあるのではないか?」という意見を述べました。といっても、やみくもに変化を続けるサービスがよいという意味ではないです。

 例えば、ユーザーが「こういう機能があればもっと便利だ!」というアイデアを出したとします。それが名案なら、早速その機能が追加され、ほかのユーザー全員が享受できるに越したことはありません。クラウドサービスの開発現場では、まさにこのような変化が日常的に起こっていると感じるのです。つまり、アイデアが形となって現れてくるまでの時間がとても短い、といったらいいでしょうか……。

 先週は、Zoho CRMの例を取り上げ、約1年半の間に8つもの機能追加が行われたとお話ししました。では、具体的にはどういう風にこの「アイデア→実現」という流れが起きているのでしょうか? 現在、チェンナイのZOHO開発センターで研修中のわたしは、せっかくの機会なので現場のエンジニアに直接聞いてみることにしました。

 今回質問に答えてくれたのは、Zoho CRM開発チームの現リーダー、ディリップです。リーダーとはいうものの、上下関係がほとんど存在しないのがチェンナイオフィスの風潮。お茶目キャラで通っている彼は、開発に関する議論をしているとき以外は、仲間内で冗談をいい合って笑っていることが多いです。

 実は、技術支援のため日本オフィスにも滞在していたことがある彼。わたしのような日本人社員が近づいていくと「オハヨゴザイマ~ス」と得意の日本語を披露してくれます。そこで、さりげなく

わたし:おはよう、ディリップ。今何してるの?

と質問を開始することに……。 

ディリップ:うーん、今は機能拡張のためのコーディングをやっているところだよ。

とPCの画面を指します。実はこの「機能拡張」、入社1年目の若手からベテランまでいつもなにがしかの分担があって、「これ今日中に終わらせなきゃいけないんだー」なんていいつつ、PCの画面をにらんでいる姿をよく見かけます。内容は、「新機能を追加する」といった目立つ作業ではありません。例えばZoho CRMにデータを入力する際、できるだけ画面を切り替えずに処理できる「クイック追加機能」を作る……といった、細かい改良のことです。このレベルの機能は、毎月、あるいは毎週行われるアップデートに合わせてひそかにリリースされ続けているとのこと……。

わたし:ふーん、そっかぁ……。ところで、Zoho CRMの新機能について聞きたいんだけど……。あれっていつも誰がアイデアを出しているの?

と、すかさず気になっていたことを尋ねるわたし。ちょっと唐突過ぎたために、「なぜ急に?」と驚いていた彼ですが、一通り考えてから次のように答えてくれました。

ディリップ:うーん。アイデアの出所は2つあるかなぁ……。1つは、ユーザー(お客さん)。で、もう1つは自分たち(エンジニア)。「こうしたらいいんじゃない?」という提案がユーザーから出た場合は、チームで検討して、良いアイデアなら早速実現に向けてとりかかるなぁ。もちろん、仲間内ではいつも新機能についてのアイデアを出し合って議論しているし、そこから出てきたアイデアもあるよ。必要なら、すぐにZohoのほかのサービスチームと会議を開いて、詳細を詰めたりしてる。

 ここで、「なぜZohoのほかのサービスが出てくるの?」と首をかしげる人がいるかもしれません。実をいうと、Zoho CRMに追加された新機能は、そのほとんどがZohoで提供されているほかサービスとの連携なのです。例えば、請求書作成機能(Zoho Invoice)であったり、デスクトップ共有機能(Zoho Meeting)であったり、文書作成機能(Zoho Writer)であったり……。このように、すでに存在しているクラウドサービス同士だからこそできる早技が、2~3カ月おきに発生するという新機能追加の動力源だったのです!(※1)

 さて、余談はここまでにして、わたしとディリップの会話内容に戻ります。

わたし:なるほど……。それにしても、1度にたくさんのアイデアを抱えたときに、優先順位とか達成期限はどうやって決めてるの?

ディリップ:そうだなぁ、優先順位については、やっぱりユーザーからの要望が上にくるかな。実際に、必要だっていうのが明確だしね……。こういう場合は、早く完成させてリリースした方がいい。でも、仲間内で「こういうのがあれば便利じゃない?」というアイデアが出たときは、次の方法をとることもあるよ。まず、初歩的な機能だけを作って試しにリリースしてみるんだ。それから、フォーラム(※2)でユーザーの意見を募集するだろ? そしたら、ユーザーの間で「こうした方がいい」とか、「これじゃあ駄目だ」みたいな議論が起こるから、その流れに乗って開発を進めていったりね。この場合、1回のリリースで完結するわけではないけど、結果としてはいいものができあがったりするよ。

 ……どうやら、踏み切りの良さもリリース速度を上げる要因になっているようです。

 さて、以上のように語ったディリップですが、「ユーザーからの意見を募集する」というくだりになったときが一番うれしそうに見えました。アイデアの源泉が2つあるときに、それらをミックスして次に何ができるかみてみよう……という発想に、未知の楽しさを感じているのかもしれません。

 一方で、この話を聞いたときわたしは「なんとも、インド人エンジニアらしい考え方だなぁ……」と妙に納得してしまいました。いろいろ議論を尽くすよりも、まずは一歩踏み出してみて、その後柔軟に舵取りをしながら目的地へ向かう……というのが、常々わたしが目の当たりにしてきた彼らの姿勢なのです。

 以上、インド人エンジニアの声を元に、クラウドサービスの開発現場の様子をほんの少しご紹介しました。こんな風にして、インドから湧き出るクラウド(雲)は日々休みなく流れ続けているんですね!

 それでは、きりの良いところで終わろうと思います。少し長くなりましたが、最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございます。

【参考】

(※1) ほかのサービスとの連携について、もう少し詳しく知りたい方は、以下をご覧になってみてください☆

(※2) Zoho Discussionというサービスを使用した掲示板のことです。日本語版のZohoフォーラムはこちら からご覧になれます☆

 ちなみに、Zoho CRMのホームページはこちら です。

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