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「分かりやすく伝える技術」は美容師さんと一緒に磨く

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 僕がプログラマとして仕事をし始めたとき、上司から「お客さまは技術用語が分からないから、技術用語を使わずに話しなさい」とよく言われました。そうは言われるけれども、情報系の学部を出た自分は技術用語を技術の視点でしか勉強していませんでした。そのため、一般の人が分かるような説明をすることが、すぐにはできませんでした。

 そんな自分と同じように、きっと多くの方が「技術用語を使わずに話しなさい」と言われたのではないでしょうか。若手エンジニアの方々は今まさに言われているかもしれませんね。

 また、相応に経験のあるエンジニアでも、後輩に技術を教える際に「どう伝えればいいのだろう」という悩みがある——そんなことを、勉強会の帰り道で聞いたことがありました。

 そこで今回は、技術用語を使わずに話せるようになるための練習法について書いてみようと思います。

練習相手は美容師さん

 僕は、技術用語を使わずに話す練習を、美容師さんを相手にしてやっています。

 なぜ美容師さんを相手にしていたのか。それは、美容師さんが

  • IT技術に関しては一般人レベル
  • クリエイティブ思考の持ち主
  • 話のプロでそれなりに長い時間話すことができる

という理由からです。

一般人にどうやって話すか

 一般人の方にITの話をする場合、僕は「相手がイメージしやすいものに例えてみる」ことを心掛けるようにしています。自分の持っているイメージを抽象化して、相手にとって分かりやすいイメージに対して具象化する。そうやって話すと、実際は違うものの、本質的な部分のイメージは伝わるのではないかと思うのです。その例を2つほど挙げてみます。

 まずは自分の仕事について話す場合です。初めての美容師さんと話すことになる際、きっと話に出てくるのは自分がどういった仕事をしているかだと思います。あなたは自分のやっている仕事をどうやって伝えますか?

 あなたが有名企業にお勤めならば、社名を出せばきっと分かってくれるでしょう。また、有名企業でなくてもBtoCなWebサービスを提供していたりすれば、それについて話せば分かってくれるでしょう。ですが、中小企業で業務システムの受託開発をしている場合などは、どうやれば分かってもらえるのでしょうか。

 「そこにあるレジのソフトを作るような仕事をしている」

 そうやって僕は答えてみました。実際のところ、やってることは全然違います。ですが、相手に分かるイメージで答えてみようと考えてみたら、このような形になりました。

 2つ目の例は勉強会について取り上げてみます。今年のゴールデンウィークのときに、奈良で行われた「鹿駆動勉強会」に行く話をすることがありました。ゴールデンウィークを翌週に控えたころに美容室に行った際にこの話をしたのですが、時期も時期でしたので、「今年のゴールデンウィーク、どこか行かれるのですか」といった話題からこの話になりました。

 IT勉強会のような文化は、他の業界ではほとんどありません。学習意欲の旺盛なビジネスマンの間では、似たような文化もあるようですが、一般には知られていないでしょう。ましてや、「鹿駆動勉強会」はライトニングトークスが主体で、コミュニティ活動に積極的に参加するような人たちが集まる勉強会でした。そうした勉強会のことを、どうやって伝えたらよいのでしょうか。

 「ITエンジニアたちの技術自慢大会を奈良の能の舞台でやる。そういうイベントが来週あって。そこで、話をしにいくんだ。」

 僕はこんな感じで表現してみました。「自慢大会」という表現もまた、ちょっとずれている感じはあるでしょう。ですが、「ITエンジニアが集まって技術の自慢大会をする」とイメージが湧きやすいと思いませんか?

美容師さんに話すのがいい理由

 そうやって、一般の人にITを話す練習をするのに、なぜ美容師さんが向いているのでしょうか。僕はこう考えます。

 1つ目は、美容師という仕事が僕らの仕事に似ているということ。美容師さんの仕事は、お客様の要望を聞いて、その要望に対して完成像をイメージして、いい感じに仕上げてくれる。どちらかというとデザイナーに近いポジションではありますが、そうした仕事のやり方は、僕らの仕事に似ていると思うのです。

 もう1つは、彼らは話のプロでもあるということ。美容室に行って髪を切ってもらうのに、カットだけでも30分はかかります(駅ナカの10分カットとかは別ですが)。その間、美容師さんはお客さまと話をしています。それを美容師さんは1日何時間も。仕事のときは毎日それをやるのです。話術のレベルが高くなるのは当然のことといえるでしょう。

 細かい技術の話、設計や実装の深い話などはもちろん分かってもらえないでしょう。ですが、いま自分がやっている仕事、学んでいること、これからやりたいこと。そういったことの概要をうまく例えてみれば、自分の意図していることは十分話せるのではないかと思うのです。

練習の成果

 そうやって、美容師さんに自分のやっていることを技術用語を使わずに話すことを数年やってみました。そのおかげで、実際の仕事においても、お客さまと話をする際になるべく技術用語を使わないで話せるようになりました。

 また、プログラムを書いているときでも、どうやって書けば読みやすくなるか・分かりやすい言葉になるかを考えられるようになりました。

 実際のところ、こうしたITを分かりやすく伝える技術は一朝一夕では身に付かないでしょう。きっと、数年はかかると思います。ですが、それこそ今日からできて、新たに費用を掛けずに、日常のなかでちょっと意識をすれば練習できるのです。

 技術用語を使わずにお客さまと話をしなければいけない。後輩に技術用語を分かりやすく伝える必要がある。そんなあなたに、この練習法を今日からちょっと試してみてほしいなと思います。

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