進化のボトルネックはどこにある?
2005年9月7日の「@IT自分戦略研究所 Weekly」に掲載したコラムを紹介します。エンジニアも編集者も、よき「物作り」のために、専門性以外のスキルが必要なのは同じですね。
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先日(編注:2005年8月末)、東芝とソニーの次世代DVD統一規格の交渉が決裂したという報道がありました。統一規格の新機種が出たら買ってもいいな、と思っていた私は、決裂の報道にがっかりしています。
報道によると、決裂した理由は、コストと容量のどちらを優先するのかという両社の根本的な製品哲学の違いだったそうです。決裂してしまった結果、「次世代DVDは欲しいけど、統一されないなら買うのは当分見送り」と私と同じように考えている方も多いはずです。
そういえば、ソフトウェアの世界にも統一規格と呼べるものが数多くあります。文字コード、通信プロトコル、データフォーマットや暗号化方式などなど。多くは話し合いや市場競争を経てコンセンサスに達したものです。
技術の進化のスピードに対して、規格統一や標準化にかかる時間が非常に長すぎる。こういう声をよく聞きます。現代の技術の進化にとって大きなボトルネックは、人類のコミュニケーション能力なのかもしれません。
などと人類規模に話をふくらませなくても、「自分1人でやれば簡単に実現できるのに、会議で承認を得るとか、上司を説得するのにばかり時間がかかる」なんて事例も身近に転がっていることでしょう。
ITエンジニアも、あるいは私のような編集者も、自分の専門性を高めることが物作りにつながると信じてきたところがあると思います。しかしいまの世の中、何かを実現したり良いものを作り出したりするために、専門性と同等以上に交渉力や協調性、リーダーシップがカギを握る、という場面が増えてきました。
そこを超えないと物作りのゴールは見えてこない、となれば専門性に閉じこもらず、一緒に超えていくしかなさそうですね。
(新野淳一)