第12回: プレゼンのページ送りにも。ダイソーの「Bluetoothリモートシャッター」を分解してみよう
はじめに
今回はロングセラーのダイソーの「Bluetoothリモートシャッター」です。
発売当初(2017年)は1個300円(税別)という事でSNSでも話題になりました。現在ではダイソー以外の100円ショップの店頭でも見かけることがある人気商品です。通信仕様は少し古い「Bluetooth version 3.0」です。
パッケージ
本体を分解してみる
同梱物
本体には2個のシャッターボタン(iOS・Android)があります。あらかじめテスト用電池(CR2032)も付属していて、購入してすぐに使うことが出来ます。
裏面には「技適マーク」が印刷されています。取扱説明書も日本語です。
本体のボタンと技適の表示
本体の開封
裏面の電池カバーを固定するビスを外し、本体側面の隙間をカッター等でこじると開封できます。
内部はメインボードが1枚だけのシンプルな構造です。
開封した本体
メインボード
メインボードはガラス・エポキシ(FR-4)の両面基板です。基板上に型番「ZPQ-1729-V2」の表示があります。今回分解したものは以前購入したものなので基板の製造年月日は「2016年4月22日」となっています。動きの早い中国製ガジェットですが、この製品はすでに6年も製造されているということになります。
メインボード表面の主要部品は各種スイッチ、コントローラIC、クロック用の水晶発振子です。操作用のプッシュスイッチは最近よく見かける「お椀形の電極をフォルムで押さえるタイプ」ではなく、きちんとしたものがついています。
Bluetooth用のアンテナは基板パターンで構成されていて、周囲のパターンはきちんと抜いています。
メインボード(表面)
メインボード裏面にあるのは、ボタン電池用の電極のみです。表面のパターンアンテナの裏側のパターンはきちんと抜いています。
メインボード(裏面)
主要部品を調べてみる
次にメインボードに搭載されている主要部品を調べていきます。
コントローラIC ST17H26
コントローラIC
中国の深センに本社のあるLENZE Technology(深圳市伦茨科技有限公司, http://www.lenzetech.com/)製のLow Power Bluetooth IC「ST17H26」です。
LENZE Technologyという会社は中国語のサイトによると、チップだけではなく設計までサポートするいわゆる「方案公司」(デザインハウス)です。ST17H26のデータシートもここから入手できます。
データシート
https://share.weiyun.com/3201b5d9c6b7b8e0bd5d0f5058267a2c
最大48MHz動作(本機では12MHzで使用)のRISC 32bit MCUを搭載し、LDO内蔵・BLE4.2サポート・各種I/Oも充実しているSoCです。
データシート記載の主な仕様
ピンアサインと各ピンの仕様は次の通りです。
ピンアサイン
ピン仕様
本機の「Androidボタン」は8ピン, 「iOSボタン」は9ピン、動作表示のLEDは3ピンに接続されています。
OTP(One Time Programmable)用の端子であるSWS(4ピン)、VPP(6ピン)は基板上のランドに引き出されています。つまりこの基板は汎用品として実装後に個別の仕様に合わせたプログラムを書きこんでいると推定できます。
Bluetooth通信の内容を確認してみる
スマートフォンでの確認
iPhoneとペアリングをしてiOSボタンを押すと画面の音量バーが上がります。カメラアプリは音量ボタンでシャッターを切れますので、それを利用していることがわかります。
iOSボタンを押した時の画面
「LightBlue Explorer」(https://apple.co/2O7leu5)というアプリで使用しているBLEのサービスを確認すると"Battery Service"と"Human Interface Device"(以下HID)であることがわかります。
「LightBlue Explorer」のサービス確認画面
Windows PCでの確認
ペアリング情報
本機はHIDですので、Windows PCとペアリングをしてみたところ、Bluetoothキーボードとして認識されました。
プロパティでは「Bluetooth 低エネルギー GATT対応HIDデバイス」となっています。
本機のパッケージでは「Bluetooth 3.0」となっていますが、実際は搭載するST17H26がサポートする「Bluetooth 4.2」の「Bluetooth Low Energy(BLE)」での動作となっています。
Windowsのデバイスマネジャー画面
デバイスプロパティ画面
各ボタンのコマンド
ペアリングした状態で各ボタンを押した時のキー入力をスキャンしてみます。
キー入力の取得には「Keymill」(http://kts.sakaiweb.com/keymill.html)というアプリを使用しました。
Keymillでのキー入力取得結果
「iOSボタン」は音量アップキーのみですが、「Androidボタン」では前後にEnterキーが送信されている事がわかります。
余談ですが、Enterキーが送信されているのでパワーポイントやPDFを使ったプレゼンモードで「Androidボタン」を押す事によってリモートでのページ送りができます。
まとめ
最小限の機能をコンパクトにまとめており、パターンレイアウトもきちんとしています。
プレゼンのページ送りにも使える事を考えると、300円(税別)はかなりお買い得感が高いと思います。
次回更新は2週間後の7/5(火)の予定です。