エンジニア脳のオン・オフ
■ITエンジニアの思考の特徴
我々エンジニア、特にIT業界におけるエンジニアというのは、仕事における思考の傾向として明らかにある特徴を持っています。それは、
「異常なほどに神経質で、細かく、しつこく、粘着質で執念深い」
という特徴です。ITエンジニアとしての仕事をしているとそういう脳内回路が出来上がっていくようになっています。
■そりゃそうなるさ
考えてもみれば、システムをつくり上げるということは、ある意味病的なほどに神経質でなければ不可能なことです。
例えば、論理的思考の1つの原理として、「重複なく・漏れなく」というものがあります。これが巷のコンサルティング会社の手にかかると「MECE(ミッシー)」なんて大げさな名前を付けられて、ロジカルシンキングだ何だと、さも高度なことのように扱われるわけですね。
ところが、システム設計やプログラミングにおいて、「重複なく・漏れなく」などというのは、はっきり言って当たり前です。だって、もしシステム設計やプログラミングにおいて重複や漏れが発生したら、それはなんと呼ばれるか。そう、「バグ」と呼ばれるのですね。そしてバグとは、業界の外部の人間からすれば間抜けなヤツが犯したミス程度にしか捉えられません。内部の人間の苦労など知ったこっちゃないですからね。つまり、「重複なく・漏れなく」などというのは出来て当然の、前提条件程度にしかなりません。ミッシー?そりゃそうだけどだから何?ってなもんですよ。
その上さらに、そのうちの「漏れなく」のレベルが、システム構築に関する場合には一般的な認識とは次元が違います。例えば、システムにおいては、ユーザーが無茶苦茶な操作方法をしてもデータが壊れたりフリーズしたり挙動がおかしくなったりしないようにしなければいけません。たとえユーザーが故意に行わなかったとしても、通常はしないような操作をうっかりミスでする可能性だってあります。でもそれだって、もしシステムが挙動不審になったら当然文句を言われ、担当者はダメなヤツ扱いされるわけですよ。
ですから、ありとあらゆる状況を想定しないといけないわけで、その意味で仕様やプログラムを細かくネチネチと検証せざるを得ず、その点においてしつこく粘着質で執念深いことはどうしても必要なのです。
■切り替えの必要性
このような理由で、我々ITエンジニアは仕事において、必要に迫られて異常なほどの神経質さを発揮しなければならない状況にあるわけです。それは我々の仕事においては重要な事で、むしろ細かいほど良いし、しつこい事は素晴らしく、粘着質なことは美徳ですらあります。
しかしながら、もうお分かりになっていると思いますが、これを対人間のやりとりに持ち込むと、非常に厄介なことになります。エンジニアに対してそれ以外の人間が持っている印象の1つの原因が、この仕事における思考傾向が人間関係に漏れだしてしまうことにあるように思います。要は、切り替えが必要なのです。
■スイッチを持とう
というわけで結論としては非常に単純な話ですが、
「エンジニア脳の切り替えスイッチを持とう」
という話になるわけです。特にエンジニアとして優秀であればあるほど、常軌を逸した神経質さという素晴らしい特性を発揮しているでしょうから、人間関係の場合においてはこの切替えを意識して、テキトーに感じるくらいでちょうどよくなるんではないかと思います。
回路のスイッチをイメージして、相手が人間の場合にはエンジニア脳のスイッチをパチッとオフにするような感じですかね。
テキトーでいいのかよ、って感じるかもしれませんけど、まあ、そういう努力をしてたって普通よりは十分神経質と思われる程度でしょうから(笑)、オフにしちゃう感覚でいいと思いますよ。