若手ホスト担当エンジニアがスキルを伸ばすための5カ条
新年が明けたと思っていたら、ひと月が終わろうとしています。本当に時間が経つのは早いものですね。
今年は月に2本はコラムを書くぞ! と息巻いたエンジニアライフですが、さっそくノルマを達成できなくなりつつあります(笑)。
いやいや、せっかく立てた目標なんだから、頑張ります!!
というわけで、新年最初のコラムです。ご一読いただければ幸いです。
■ホストシステム担当の若手を取り巻く状況
前々回のコラムにて、筆者の初プロジェクトアサインの頃の様子を紹介しました。あれから何年か経って、何が大変だったのか思い返してみると、以下のような点を思いつきます。
- 言葉が分からない
- 仕組みが分からない(コンピュータの基礎)
- 先輩との知識・経験差が大きい
- 今まで得たITの無力感
(1)言葉が分からない
何より、まずはこれが一番大変でした。用語がPCやインターネットの世界と異なるところも多く、何を言っているのか分かりません。この「言っていることすら理解できない」という状況は、かなり精神的に辛いものがあります。
海外に放り出されるとこんな感じなんでしょうか。まあ、プロジェクトで日常会話に困ることはないので、ちょっと違うかとは思いますが。
(2)仕組みが分からない
これは自分がいけないのですが、WebとかJavaのやっていることは分かっても、OSレベルのシステムの動作が分かっていなかったため、メインフレームがどんな風に動いているのか、どのような構成要素があるのか、という全体像のイメージを掴むことができませんでした。
極端に言えば、今やっている作業の目的や、これをやることでシステムにどういう影響があるのか、ということがさっぱり分かりませんでした。これがもかなり大きなストレスでしたね……。
このへんって、単純なアプリケーションを作ったくらいでは、意識できない領域で、プロとアマチュアの違いが大きく出てくるところなのかもしれません。
(3)先輩との知識・経験差が大きい
これはある意味では良いところでもありますし、悪いところでもあります。
そもそも、メインフレームの担当者だと、若手の先輩という方はほとんどいませんでした。筆者の参加したプロジェクトでも、良く分かっている先輩が10歳年上で、10年間バリバリ運用やってました! みたいな人だったので、オペレーション技術から知識や経験まで、本当に天と地ほどの差があるわけです。差が大きいことで、自分が勉強しても全然役に立たないのではないか? という悩みを持ったりします。
しかし、逆に捉えると、それだけ知っている人ばかりが周りにいるので、うまく知恵を分けてもらって、スキルをつけるチャンスに恵まれているともいえますね。
LinuxやIAサーバ(Windows)のように、通常触れられるものではないため、この開いている差は、なかなか埋まりません。
(そろそろ筆者もSE4年目終わりに差し掛かっていますが、個人的な運用スキルの差は、永遠に縮まらないかと、なかば諦め気味なのが正直なところだったりします。)
(4)今まで得たITの無力感
これは表現が大げさですが、つまり、IT世代として「ITけっこう分かってますよ」という顔で入社してきたため、まったく知識が通じない状況はプライドもずたずたになり、けっこうきついわけです。
筆者は豆粒並みのプライドはあったものの、比較的早めにお手上げして、「全然分からないもの」としてメインフレームに接し始めたため、実はそれほどのストレスはなかったように記憶しています。
逆に、WebだとかTCP/IPなどオープン系と呼ばれる知識はある程度持っていたため、両者を対比することで、メインフレームの特徴をよく捉えることができたのではないかと感じています。
とはいえ、直接的には歯が立たないという意味で、「無力感」という提示でいきたいと思います。
こんなことを踏まえつつ、「それじゃ、若手エンジニアがメインフレームと共存するためには、どうしたらいいの?」と考えてみた結果を、次にまとめてみます。
■若手ホスト担当エンジニアがスキルを伸ばすための5カ条
第1条:素直に先輩に教えを請う!!
とりあえず、経験も知識も上なので歯が立ちません。まずは、謙虚になって素直に教えを請いましょう。
極端な話、「自分で考えろ!!」と言われても、技術的な問題は早めにギブアップしてください。何が分からないのかも分からないんだから、悩んでも答えは出ません。自分で考えられるようになるのは、もう少し経験を積んでからで良いです。
メインフレームに関連する対応は失敗するとクリティカルなものになることも肝に銘じて、慎重に行動しましょう。自分もそうでしたが、勘違いと思い込みで、事態を悪化させるリスクがあります。
また、分かりもしないくせに偉そうな文句ばかり言うのもダメです。スキルがない自分を認めて謙虚になることから始めましょう。
とはいえ、教えて君になっていいわけではありません。分からなかったことはすぐに資料で確認します。そのときは理解できなくても凹む必要はありませんので、必ず情報を入れてください。しばらく経って、きっと理解に繋がる助けになります。
また、アドバイスを受ける際に気をつけるのは、「本質を理解する」ということです。仕組みや背景を理解する、と言っても良いかと思います。
コードやJCLの書き方でも、端末でのオペレーションでも「なぜ、このやり方がよいのか」「先輩のどんな経験が活きているのか」ということを考えたり、聞いたりしていきましょう。きっと成長のスピードに雲泥の差が出ると思いますよ。
そう考えると、素直=鵜呑みは違います。この、「なぜ?」というところは明確にして、納得した上で素直に教えに従うようにしましょう。
第2条:論理的に考える
製品知識やスキルなどは分からなくて当然ですが、システム運用や会議でのディスカッション、プロジェクトの進め方など、頭で考えれば勝負できるところは、どんどん意見を出しましょう。
決して、先輩がいるからと任せてはいけません。技術力がつくには時間がかかりますが、論理的思考力やディスカッションは、できる人なら早い段階で先輩たちと勝負できる領域だと思います。
「こいつ、アホではないんだな」と思ってもらいましょう(笑)
第3条:メインフレームに好奇心を持つ
あまりに分からないからって嫌いにならないでください(笑)。
嫌いになってしまうと、思考もシャットダウンされて、スキルもつかず、どんどん悪循環になってしまいます。
筆者の例ではないですが、「もう分からん!」 ⇒ 「一体、こいつは何なんだ?」というように、自分の好奇心を意識的に向けてあげることが大切だと思います。
そうなってくると、知らないことや不思議なことがどんどん出てきて、だんだん楽しくなってきます。
無邪気に知識を吸収していくことが、その後の成長に、ものすごく大きな影響を与えるんじゃないでしょうか。
第4条:おじさんと仲良くなる
おじさんなんていうと失礼かもしれませんが、諸先輩方、ご容赦ください。
これは経験豊富でスキルも高い、かなり年上の先輩方に気に入られて、成長を助けてもらおうということです。どこの現場を回ってみても、メインフレームの関係者は40代以上の場合が多いのではないでしょうか。
大学新卒の人から見たら、自分のお父さんくらいの人と一緒に仕事をするわけで、おじさんウケするというのは、かなりのメリットがあると思われます(笑)。
年長者への礼儀ということもありますが、やはり現場のおじさん方は「バカは嫌い」なんだと思います。分からないのに知ろうともしない人や、自分の頭で考えていない人には、やや冷たい雰囲気がなきにしもあらず(筆者の経験では、ですが)。
そういう方々にきちんと指導してもらうには、甘えているだけではなく、第二条で書いたように「ちゃんとやろうとしている」という意欲を感じてもらうことは、最低条件です。でも、これは分野によらず、何事もそうですよね。
一回認めてもらえると、面倒見たがりな諸先輩方は、あれやこれやと小技や濃ゆい技術を、これでもかと与えてくれたりします。
こういう口伝的な暗黙知を得るのも、成長という観点ではとても大切ですよね。
第5条:先輩の知らないスキルで対抗する
これは特に、年の離れた諸先輩方に対して、です。
幸いなことに、IBMのメインフレームはオープン対応など進化しており、Linuxが使えたりと、必要なスキルの幅が非常に広がってきています。
というわけで、昔からのメインフレーム担当者の方々は、最近のオープン系の技術(LinuxやTCP/IP、Webなど)には、それほど詳しくないことも多々ありますので、そういう部分こそ、若手が頑張れば貢献できるところです!
後は、日々登場する新しいソフトウェアなんかも、当然、知識のある人が少ないところなので、知っていると重宝されると思います。
ブルーオーシャンを狙う……ではないですが、カバーされていない領域を進んで勉強するのも、とても大事なことだと思います。
書いていて感じたのですが、やっぱりこれもメインフレームの世界に限った話ではありませんね。
■終わりに
スキルを伸ばす5カ条、いかがだったでしょうか?
共感していただけるところ、反論したいところなど、いろいろとあるかと思いますので、ぜひコメントいただきたいです。
新人と思っていたのも束の間、筆者もエンジニアとして今年で5年目になります。
エンジニアとしては、正直まだまだですが、もはや新人とも言えない立場ですよね。そろそろ、今日の5カ条での成長は厳しいところです。
なので、もう一歩成長していくには、また新しい観点も追加していく必要があります。
最近、その中の1つは、「後輩に自身の経験を伝える」「後輩を育てること」かな、と感じています。
徐々にプロジェクトや部門でも、自分よりも若い人と仕事をするようになってきますが、そうなると、必然的に立場の近い自分が面倒を見ることになるわけです。
そういうときに、今回のコラムで書いたことや、自分が経験してきたことを伝えて、少しでも後輩の成長の糧にしていってもらえたら、先輩としても嬉しいですよね。
そんなふうに、後輩を成長させる先輩として、自身も成長しつつ、新たな5カ条を探していきたいと思います。