保守は仁術なり
IT業界では、常に新しいテクノロジーが生まれているため、それらばかりがもてはやされがちだ。確かに新しいテクノロジはセンセーショナルなものが多いし、イマジネーションも刺激される。なんだかわからないけどワクワクしてしまう。
■保守は医なり
しかし、生まれたものはいつかは必ず老いて死を迎える。テクノロジーにしろ製品にしろ、それぞれ寿命というものがあるのだ。われわれ人間と同じく限られた寿命の中で、ハードなら部品の故障もすれば、ソフトならバグも発生する。
それに対応するのが保守であり、これはとても大切な仕事だ。例えば医者というのは人間をターゲットとした保守要員といえる。彼らはとても尊敬され、頼られ、信頼されている。保守とは医なのだ。もっと保守の重要性がクローズアップされてもいいのではないだろうか?
■未来志向とは老いを見つめること
未来志向というのは、新しいものを追い求めることだけを指すわけではない。5年後、10年後にどんなものが生まれるかだけを考えるのは片手落ちというものだ。5年後、10年後に我々自身がどうなっているか、今われわれが使っているものはどうなっているのかという点に付いても思いを致さなければならない。
未来が現在の上に構築されるものである以上、現在をないがしろにする者に未来が微笑みかけることはない。
■老いた保守エキスパートへのリスペクト
今年の始めだったか、TVで古いカメラの修理を50年以上続けている修理専門店が紹介されていた。もちろん、古いカメラの部品など、すでに新品は手に入らない。同じタイプのカメラから持って来たり、なければ自作したりもしているらしい。
これはなんというか、わたしが描く理想的なエンジニア像の典型的なパターンだ。テクノロジー的にいえば、ローテクなのかも知れない。しかし、わたしにはその老いたカメラ修理のエキスパートが、サイバーパンクの世界に生きる典型的なエンジニアに見えてしまう。
■BJによろしく
AIBOの修理サポートが保守サービスが終わり、『愛犬の介護』問題がネット上で話題になっている。一方で、今後の市場拡大が見込まれるロボットなどの製造関連の起業を期待して、政府が起業家に対して最長2年、年間650万円の生活支援を行うというニュースも流れている。
わたしとしては、この制度を使って「医」を志向するエンジニアが旗を揚げることを期待したい。