神はシステムの細部にも宿る
日本には、古くから九十九神(つくもがみ)信仰というものがある。古いものには神が宿るという信仰だ。しかしこれは過去の迷信で済ますことはできない。IT化が進む現代においても、実は九十九神はわれわれの周りにたくさんおられるのだ。
■身近な九十九神
「何を馬鹿なことを?」とお思いだろうか。しかしちょっと身近な出来事を思い返していただきたい。
例えば、古くなったソースコード。修正のたびに、時間がないからと雑なメンテナンスを繰り返し、コメントとコードがまったく一致しなくなったり、同じような機能をコピペして付け足したりと、いい加減な扱いをしていたらどうだろう。あっという間に可読性は下がり、修正はやりにくくなり、バグの温床になる。そして実際にバグが発生しても、原因の特定に膨大な時間がかかってしまうのだ。
これこそが、荒ぶる九十九神の鉄槌というものだ。
■九十九神とはなにか?
モノに宿った九十九神は、使う人が大切にしていれば福をもたらす。ところが、手入れを怠ったり雑に扱ったりすると途端に荒ぶる神となってわれわれに鉄槌(てっつい)を下す。これが九十九神信仰の基本だ。
このような信仰の根底には、手入れを怠らずにモノを大切に扱うことにより事故を回避するという生活の知恵を読み取ることができる。
ところで、これまで九十九神はモノに宿ると書いてきたが、ここでいうモノには森羅万象が含まれる。現代では、当然のことながらモバイルガジェットはもとより、ソースコードや設定ファイルだって含まれるだろう。
あなたもこのような現代の九十九神の怒りに触れたことが一度くらいはあるのではないだろうか?
エンジニアといえども、あなたも日本人なら九十九神に対する感謝と敬意を忘れずに、仕様書だろうがソースコードだろうが、常に大切に扱うように心がけていただきたい。そうすれば、九十九神は利益をもたらす福の神として、いつまでもあなたを暖かく見守ってくださるだろう。