知的エンジニアライフの方法 (4)伝え方
■あなたは普通ですか?
学生時代、バイト先の仲間内で「異常か?」「普通だ!」という掛け合いが流行ったことがある。これを翻訳すると、「おまえ、アタマおかしいんじゃね?」「んなこたねえよ!」というニュアンスになる。「異常か?」は、相手に対して、常軌を逸した言動をしていることを咎める言葉だ。それに対して「普通だ!」は、自分が異常でないことを主張しつつ、言外には「お前の方こそおかしいんじゃないのか?」という気持ちを込めている。
このようなシチュエーションは学生時代のバイト先だけの話ではなく、日常茶飯事だ。皆さんだって、口にするしないの違いはあっても、1日に1回くらいは「コイツ異常だ!」とか「普通こうだろ?」とか叫んでいるはずだ。叫んでいないとしたら、あなたはよほど幸せな人生を歩んでいるに違いない。
■普通はユニーク
「皆さん」というのは、1人の例外もなく全員という意味だ。つまり全人類が、自分は普通で相手が異常だと考えているということになる。どうやら「普通」は人の数だけ存在するらしい。
にもかかわらず、だ。
なぜかわれわれは仕事を頼むときにはそのことを忘れてしまう。相手が自分と同じ普通の人間だと思ってしまう。そして、あとになって仕事の結果をみて、相手の異常さを思い出すのだ。逆にいうと、仕事を受ける側も自分自身の普通な感覚に従って解釈し、作業を行う。それなのに、なぜかそれが評価されないばかりか、口汚く罵られることすらある。
では、自分の普通がユニークだということを忘れてしまった人の伝え方について、いくつか例を見てみよう。
■その伝え方は普通じゃない
まず、口頭だけで作業を頼むことを考えてみよう。これは何のエビデンスも残らないので、最悪のパターンだ。指示された側がメモを取ったにしても、指示を出す側の言い間違いに気づくことはできない。単純なルーチンワークを経験者に依頼するなら口頭だけでも十分かもしれないが、それ以外では最も避けるべき方法だろう。
メールで指示や依頼をすることも多いと思う。しかし、メールを投げただけで作業を頼んだ気になっているとしたら、それは大間違いだ。ある意味これは口頭だけより性質が悪い。口頭なら、相手も確認したり復唱したりするし、表情などから理解度を推し量ることもできるだろう。しかしメールの場合には、それができない。特に単純な作業の場合に危険度は高まる。なぜなら、単純であるがゆえに依頼された方は確認もせずに自分の解釈で突っ走りやすいからだ。
文字ばかりで埋め尽くされた分厚いドキュメントも危険だ。長い文章は、本当は必要なのにそこに書かれなかったことを隠してしまいがちだし、読む側にしてみれば、自分に関係のあるところだけしか確認せず、全体の整合性まで気にしないで済ませてしまいがちとなる。書いた側にしてみれば、ドキュメントは厚ければ厚いほど言葉を尽くして説明しているように錯覚してしまうわけだが、それは作成者の「普通」を前提としたものでしかない。
■自分の「普通」の異常さを自覚しよう
「好奇心駆動」なライフスタイルを楽しんでいると、仕事だけではなく、他のエンジニアとの交流の機会も多くなる。チームを組んで、手分けして新しい技術の調査をすることもあるだろう。勉強会でお互いの専門分野の知識を情報交換し合うこともあるだろう。そんな中で、ひょっとしたら新しいサービスを立ち上げたり、アプリを作ったりすることになるかもしれない。
そんなとき、相手になにかを伝えようとしたときに、自分の「普通」が如何に普通でないかを自覚することができてさえいれば、正しい伝え方を心がけることができるだろう。
つまり、伝える側は、正しく伝わったかどうかを必ずフォローアップし続けること。伝えられた側は、自分の解釈をフィードバックし続けること。
普通すぎる結論だが、異常な意見ではないはずだ。
コメント
仲澤@失業者
新人君に「僕はタヌキだが、君はキツネだね。」
という話し声を聞いてどんな場面を思い描きましたか?
と、聞いてみると大抵1つの場面しか言わないんですよね。
つまり
1.狸と狐が会話している。
という場面です。ふぁんたじぃですね。
数年経つと、同じ質問に
2.お偉いさん達が酒宴で盛り上がっている。
という答えが増えます。飲みすぎなんですね。
なぜ、
3.蕎麦屋で注文している。
場面が思い浮かばないのでしょう。
不思議ですよね。
期待しているのは、上の全てを答えてもらう
ことなんですけどね(大笑い)。