「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

ネットワーク品質のカギを握る8番目の層

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■ネットワークの8番目の層

 どんなにサクサクとデータの送受信ができても、伝えたい情報が正確に伝わるとは限らない。OSIの7階層をどんなに完ぺきに設計して実装したとしても、社内ネットワークの最大のボトルネックを取り除くことはできないのだ。なぜなら、そのボトルネックは8番目の層に存在するものだから。その層の名は「ヒューマン層」。

 この層で行われる不適切なフィルタリングにより、多くの情報はその先のノードに伝わらなくなる。また、意図的な改ざんや知識・認識の不足による誤解によって、情報は驚くほど変質してしまう。

■ボトルネックを探せ

 従って、このヒューマン層の品質を高めることが社内ネットワーク品質向上のための最大のキーポイントとなる。それでは、この層のボトルネックにはどのようなものがあるだろうか。今回はその代表的なものをいくつか挙げてみよう。

■プロトコルの不統一

 どんなに小さな企業でも、組織間での話がかみ合わないことが往々にしてある。IPの上でTCPやUDPといったプロトコルが流れるように、例えば同じ日本語(IP)は使っていても、営業部(TCP)と開発部(UDP)では、そもそも通信の確立手順からして違うので話が通じないのだ。

 対策の一例としては、部署間で共通言語を持つことなどが挙げられるだろう。

■セグメント分割

 プロトコルの違いは、組織間でのコミュニケーションで発生しやすいが、セグメント分割はそれ以前の問題だ。組織間の壁が厚すぎてコミュニケーション自体が発生しない。いわゆるセクショナリズムというヤツだ。

 対策としては、インフォーマルな交流の場をつくることが挙げられる。例えば喫煙者であれば、昔の喫煙室が果たしていた役割を思い出してみると、そこにヒントを見つけられるかもしれない。

■不適切なパケットフィルタリング

 人間というノードが持つファイアウォール機能のデフォルトポリシーは、「都合の悪い情報は通さない」だ。外から入ってくる情報に対しては目と耳をふさぎ、自分自身のことであれば口をふさいで外に出さない。このポリシーは、失敗に対する組織の不寛容さの度合いに比例して強化される。

 従って、失敗を悪とする組織文化からの脱却なしに、このポリシーを変更させることは不可能だろう。太陽と北風の逸話を引き合いに出すまでもなく、自発的な行動を促す文化の醸成が求められるわけだ。

■踏み台

 通常のラインマネジメントでいうと、各組織の長は自分の上長と部下の間に立つプロキシサーバといえる。しかしこのプロキシサーバは高圧的な上長のアタックに耐えきれずに魂を乗っ取られ、踏み台にされることがある。イエスマンの中間管理職に多いパターンだ。上からの無理難題を、部下にそのまま無差別にまき散らし、部下からの報告は、自分のフィルタを通して削ったり加工したりするようになる。

 この踏み台の対策は非常に難しい。ここではとりあえず、皆さんの上司の善政を祈っておこう。

■ヒューマン層を最適化しよう

 さて、この短いコラムで「ヒューマン層」のすべてを語りつくすことはできない。上記ボトルネックも、その対応策もほんの一例にすぎない。しかし、インフラをどんなに整えても、社内の情報の流れが良くならない理由の一端は垣間見ることができたのではないだろうか。あとは皆さん自身の手で、自社ネットワークのヒューマン層を分析し、適切な解を導いて欲しい。

Comment(2)

コメント

みながわけんじ

同感です。

四半世紀エンジニアをやってみて、現在も過去を振り返ってみても、トータルして技術的な問題よりも人間関係的な問題に悩まされた時間のほうが長かったのかもしれない。

この歳になると、あの人の性格からして、たぶんこういう思惑で、こういう指示を出した、とか、他の事業部には組織上、上層部に意見をしない限り協力を求めることはできないが、あの人の受け身な性格からして、それは難しいだろう・・・

なんてことをいつも考えちゃいます。

会社の存在意義って、目的に向かって社員の意識のベクトルの方向性をそろえるこより、大きな組織的力を生むことだと思うのですが、実際には人が集まることより、大きな負の力が生み出されていて変ですね。

若いころは技術に興味があった、負けたくなかったって思ってましたが、最近では、会社に行く理由って生活費をもらうこと、会社に行かなければ、遊んでお金を使ったり、お酒の飲みすぎで体を壊してしまうから・・・なんてことしか思わなくなってきてしまいました。

onoTさんはユニークなアイデアが豊富だし、文書を書く能力があっていいですね。
私は文才がないもんで、仕事とお酒と庭いじりくらいしか、やることがないんですよ。

リタイアしたらガーデニング頑張ってみようと思ってます。

onoT

本当に、みんなでチカラを合わせて、ひとりでは出来ないデッカイことをやろうっていうのが会社のはずなのに、気が付いたら派閥とかできちゃって、本来の仕事以外にパワーを使い果たしてしまうとか、あまりにも不毛なことが多すぎますよね。
だからこそ、個々のチカラを最大化するための良質なコミュニケーションが大切だと感じています。

ガーデニング、いいですね!
わたしはどうも植物の世話というのが苦手で、よく枯らせてしまったりするんです。でも憧れますよね、リタイア後のガーデニングって。

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