エンジニアの、新しいシェアのカタチ
「所有」から「利用」が時代の趨勢であることは間違いない。
しかし「シェア」というコトバが注目されるはるか以前から、我々は「派遣」というカタチでエンジニアをシェアしてきた。
「リソースを割り当てる」という表現からも分かるように、多くの組織でヒトは単なるモノとして考えられている。いまだにそれは変わっていないところが多い(と断定しても、反論できるヒトは少ないだろう)。
モノは使えば減るし、減ったモノは補充すればいい。
古くなったら処分する。
その延長線上に、(契約期間の縛りはあるにせよ)、余った時に返却できる「派遣」というモノが活用されてきたわけだ。
派遣エンジニアは、需要があるときには、多くのテクノロジを経験できるし、たくさんのエンジニアと交流できるので、正社員よりもむしろオイシイ環境に感じられる。
ところが、需要と供給のバランスが崩れた途端、モノ扱いされる不安定さに打ちひしがれることとなる。
この時代、派遣先企業には余裕がまったくない。ピンポイントで、即戦力となる歴戦の勇士だけが必要とされているのだ。
私がフリーランスになる前は、企業内でエンジニアの採用面接をする側だったが、企業側では当然のことながら、かなり具体的に欲しい人物像が固まっている。
したがって、書類選考でほとんどが消えてしまう。それが現実だ。
そんな中で派遣エンジニアとして生き残るためには、少なくとも、1つの専門分野に関しては戦闘能力を極限まで磨いたプロフェッショナルな傭兵になるしかない(まぁ、それが本来の派遣の正しい姿という気がしないでもないが……)。
では、その他に、エンジニアを人間らしくシェアすることはできるのだろうか。
おそらく、そのひとつの典型的な成功例が、オープンソース・コミュニティだろう。
コミュニティではエンジニアだけではく、製品や技術そのものをシェアしている。
従来の常識で言えば、企業が最も囲い込んでおきたいものだ。
企業がそうやって自社の製品や技術をオープンにする意味については、改めて私が解説するまでもなく、自明のことと思うので割愛させていただき、ここでは、エンジニアを人間らしくシェアするカタチとしてのオープンソース・コミュニティの役割に注目したい(まぁ、特に「新しいカタチ」というわけでもないのだけれど……)。
前回のコラムで私は、エンジニアに場を与えるべきと書いた。
その場として、このオープンソース・コミュニティは最適なのではないかと考えているわけだ。
その道の一流エンジニアが名を連ねているコミュニティの活動に実際に参加すると、強烈な刺激を受けるし、モチベーションも上がることは間違いない。
例えば、あるフレームワークを利用している企業が、そのフレームワークを管理するコミュニティに自社のエンジニアを参加させたとしよう。その企業は、その1名のエンジニアを通して、ある意味そのコミュニティに参加している無数のエンジニアの力を手に入れている。
エンジニアは、コミュニティに参加することにより自身のスキルも向上し、会社も自分を通して利益を得ていることが分かるため、非常にやりがいを感じる。まさに、場を与えられたと感じるのだ。
社内業務とのバランスをどう取るかという問題もあり、多くの企業にとって最初の一歩を踏み出すのが難しいことは確かだ。また、すべての企業にとって、オープンソース・コミュニティへの参加が最良の道というわけでもないだろう。
しかし、シェアできるのは、モノやサービスだけでないことは、オープンソース・コミュニティが証明している。