「生活イチバン、ITニバン」という視点で、自分なりのITを追及するフリーエンジニアです。ストレスを減らすIT、心身ともにラクチンにしてくれるITとはどんなものかを考えていきます。

コンピュータが仕事を増やす

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 便利になることと、ラクチンになることとは違うし、ラクチンになることと、ストレスがなくなることもまた別物だ。

 コンピュータを導入して、システムを構築する。

 これまで我々は何度もそれを繰り返してきている。提供者として、あるいは利用者として、何度も何度も繰り返してきている。

 それで我々は仕事が少なくなって、ラクチンになって、ストレスも減って、健康で文化的な暮らしを手に入れられただろうか。

 残念ながら、この問いにYESと答えられる人はあまりいないだろう。むしろ、我々の仕事量やストレスは増えている。

 なぜ、そうなるのか。今回は、コンピュータ(システム)が仕事を増やしている状況を、パターンとしていくつか列挙した上で、どこに問題があるのかを考えてみよう。

【導入に関するパターン】

■Builderパターン

 経営層が、その時その時に抱えている経営課題を解決するために、個々の部門にバラバラに必要なシステムを導入・構築させる。いわゆる『個別最適化』だ。
全体が見えないまま、部下は横の連携なしに製品を選定したり内製したりして導入・構築する。

 最後に、上司はそれらのバラバラなシステムを使って、全社の円滑な情報共有をするように部下たちに指示するが、もちろんうまくいくはずもなく、部下たちの仕事とストレスは増えるばかり。

■Factory Methodパターン

 新し物好きな上司が、具体的な導入イメージも描かずに新しい製品の導入を決めてしまう。あるいは、取引先との限りなくグレーな関係から導入を決めてしまう。
その後部下を呼んで「今度こういうものを入れるから、どう運用するかはお前に任せる。」と言われる。

 「そ、そんな中途半端に枠を固めた後で投げられても……」と文句を言っても、『神の見えざる手』に抗うことはできない。反抗しようものなら自分の評価は右肩下がりになるのがオチだ。

【人員に関するパターン】

■Mediatorパターン

 オブジェクト(社員)間の相互作用に(メール等の文字ベースの)システムが仲介しすぎると、オブジェクト(社員)間の結合度が低くなる。

 特に大きな企業、あるいは地理的に離れた拠点を多く持つ企業に、『社員同士が疎結合』な組織が多い。

 コミュニケーションの絶対量が少ないだけでなく、ビジネス文書に関するリテラシーが低い者同士がメールでの情報伝達を多用すると、お互いに対して悪い印象を持ちやすい。
上司からのリテラシーの低いメールは特に有害だ。いずれ部下も同じようなメールを送るようになって、殺伐とした企業文化が育まれることになるだろう。

■Prototypeパターン

 システム導入によって、操作の簡易化、マニュアルの整備が進み、インスタンスの複製(新しい担当者の教育)がラクになり、自分の仕事が脅かされる。つまり『存在価値の減少』パターンと言える。

 まぁ、これは悪いことではない。むしろその程度の単純な仕事から解放されることを喜べないとしたら、そこにこそ大きな問題が潜んでいるというべきだろう。

■Singletonパターン

 効率化による『人員削減』が極限まで進み、インスタンス(担当者)がただ一人になってしまうパターン。休めないし残業も増えるし、一体これからどうすればいいんだ?と頭を抱えてしまう。

 このパターンの最悪な点は、複数のインスタンスが同時に存在し得ないというこのパターンの特性自身にある。

 言いかえると、疲れ果てた担当者が辞めた後にならないと、後任者は入らない。つまり、まともな引き継ぎが行われず、知識の蓄積・継承は期待できない。

【運用に関するパターン】

■Facadeパターン

 上述したSingletonパターンとも関連するが、担当者がただ一人どころか、一人で複数の複雑な業務を『掛け持ち』でやらなければならない状態。

 もちろん、これまで以上にたくさんの窓口業務を、これまでと同じレベルで親切、丁寧に行わなければ、周囲からはブーイングの嵐だ。

■Observerパターン

 作業効率と情報共有の名のもとに、次から次へと導入されるさまざまなシステムにより、自分の行動や実績は常に細かく監視されていて、すぐにチェックが入る。

 モバイル機器も持たされて、毎日、どこにいても何かに追われるような息苦しさを感じる。まるで『囚人』のようだ。そうやって社員の心は病んでいく。

 以上、勢いにまかせて羅列してみた。

 勢いだけで書いたので、「GoFのデザインパターンのパロディで行こう!」という当初の目論みからすると中途半端になってしまったが、そのあたりはご容赦いただきたい。

 それはともかくとして、このようにコンピュータ(システム)は我々の仕事とストレスを増やしているのだ。

 しかし、もう一度じっくりと上記のパターンを読み返してみよう。すると、突き詰めて考えるとこれはコンピュータ自体が問題を作り出しているわけではないということに気づく。

 システムを導入するのはヒトだし、運用するのもヒト。失礼なメールを出すのも、人員を減らすのも、たくさんの仕事を与えるのも、結局のところ行きつく先は「ヒト」だ。

 要するに、問題は道具ではなく、それを使う側に存在するということだ。

 そりゃそうだ。コンピュータは与えられた仕事をするだけだし。

 仕事を作り出すのは常にヒトだもんな。

 あぁ、なんともつまらない結論になってしまったものだ。

 しかしまぁ「ヒトが仕事を増やす」なんてつまらないタイトルにしたら、誰もここまで読んでくれないだろうから、タイトルは変えずに置こう。

 え? タイトルに興味をそそられて読んでみたけど、期待外れの結論だ。騙されたって?

 そうとも。この記事自体が「コンピュータが仕事やストレスを増やす」ひとつのサンプルなのだから。

Comment(4)

コメント

chain of responsibility とかもありそうねー♪

onoT

あぁ、なるほど!
確かにそれは色々と話を広げられますね!
もう少し練れば良かったかも。。。

wm

おもしろかったから、第2弾とか出してみるといいのでは?
コメントに出てきたパターンをまとめてみても面白いものができると思いますよw

Flyweight: 入力端末が1箇所しかねぇ(;´д`)・・・とか

onoT

ありがとうございます!
おだてられると木に登るタイプなので、そのウチ書くかも知れませんw

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