日本海側で唯一のソフトウェアテストシンポジウム「JaSST'12 Niigata」開催レポート(その3)――賢いツールの使いどころ
こんにちは、第3バイオリンです。
「JaSST’12 Niigata」レポートもいよいよ最終回です。今回は、事例発表1件とクロージングセッション、情報交換会の様子をお届けします。
■事例発表「システム自動生成ツールを用いたユーザー視点開発」
ウイングの山内 啓悦さんのセッションです。
山内さんは、ご自身の会社の商品であるシステム自動生成ツール「GeneXus」の説明から始めました。
「GeneXus」の前身は、南米の国ウルグアイで作成されたデータモデルを自動化するツールでした。データモデルだけでなくシステム作成から自動化してしまおう、ということで、開発されたの「GeneXus」が開発されました。
「GeneXus」は、雑誌「日経コンピュータ 9/29号」でも「アプリケーションの自動生成に挑む南米のツールを基幹系に活用」という記事で取り上げられたそうです。また、書籍「はじめてのGeneXus」でも詳細を知ることができるので、興味のある方はこれらもご覧ください。
「GeneXus」のすごいところは、プログラム言語を知らなくても使える、というところです。「GeneXus」は現在よく使われているプログラム言語、データベースのほとんどに対応しているそうです。また、最新バージョンではスマホ対応もしています。
山内さんは、「GeneXus」の最大のメリットは「資産継承」である、と説明しました。よく「システムは動いているけどハードウェアだけリプレイスしたい」ということがあると思います。「GeneXus」はシステムのUI画面やデータ構造などの「ビジネス部分」と、物理DBやソースコードといった「テクノロジ部分」を分離して作成することができるのだそうです。そのため、先のようにハードウェアだけリプレースしたときには、UIが多少崩れることがあっても、システムの根幹は変わっていないので、UIの微調整さえすればまた動くようになります。
山内さんは、「GeneXus」と併せて使う開発基盤「GeneXus SYSTEM-Template(GST)」、開発メソドロジ「ST-REAM」についても説明しました(これらがウイングさんの「三種の神器」だそうです)。
自動生成ツールの導入によってどれだけ生産性がアップするのか気になるところですが、あるプロトタイププロジェクトで試した結果、生産性が2.5倍もアップしたそうです。ただし、これはツールに向いているプロジェクトだからここまでの成果が上げられた、と山内さんは説明しました。ツールに向かないプロジェクトの場合、そこまで成果が上がらない場合もあるそうです。
他にも、ツール導入のメリットとしては自動化されている部分はテストする必要がないこと、データモデル(DBMS)とサーバサイドアプリケーション、クライアント(HTMLが面)が密につながっているのでそれぞれのI/Fテストも必要がないこと、などが挙げられます。
しかし、当然メリットだけでなくデメリットもあります。例えば、作成元がウルグアイなので、「GeneXus」そのものの不具合対応は時間がかかります。また、導入後も、スケジュール管理が煩雑になってプロマネの力量が問われること、プロジェクトにスペシャリストを1名は立てる必要がある、と、複雑な事情を解決する必要が出てきます。
それでも山内さんは「苦しいこともあるけれど導入事例を少しずつ増やしているところです。今回の講演で、少しでもシステム自動生成ツールに興味を持ってくださると嬉しいです」と講演を締めくくりました。
わたしは、講演を聞くまではシステム自動生成ツールがどういったものなのかよくわからなかったのですが、山内さんの講演で少しだけわかるようになりました。新潟にこのような取り組みを行っている企業があるということをご紹介することができて良かったと思います。また、便利なツールもプロジェクトに合っているかどうかで効果が異なるというお話を聞いて、やはりツールの使いどころは大事だと思いました。
■クロージングセッション
「JaSST’12 Niigata」プログラムの最後は実行委員長であるわたしの締めの挨拶です。
わたしはプログラムを振り返りつつ「新潟の底力を感じるプログラムだった。参加者の皆さんにご紹介することができてよかった」と感想を伝えました。
新潟でのJaSST開催は今回で2回目ですが、参加者の皆さんの顔を見て、このシンポジウムが新潟のイベントとして定着できたことを確信しました。
わたしはそれを話して「単なるイベントで終わらせるのではなく、今日この場で得たことを現場にフィードバックしてほしい。そして、今は客席にいる皆さんがいつか登壇者としてJaSST新潟に参加する日が来てほしい」と伝えました。
去年は最後の挨拶で泣いてしまったので、今年は泣くまいと思っていたのですが、やっぱり今年も泣いてしまいました。挨拶の前に、実行委員の三浦さんに「泣くなよ」と言われていたのですが……いろいろとこみ上げてくるものがあり、我慢することができませんでした。いつになったら泣かずに挨拶できることやら。
■情報交換会
クロージングセッション終了後は、場所を新潟市中央公民館に移し、情報交換会を開催しました。飲み物やお菓子をつまみつつ、参加者同士が和やかに交流できる場となりました。
今回の情報交換会では、(おそらく)新潟初となるLT(ライトニングトークス)大会を開催しました。実行委員も含めた5名の登壇者が、LTでテストに関する取り組みや考察、コミュニティ活動の紹介を真面目に、楽しく語りました。
わたしも登壇しましたが、そのときにバイオリンの弾き語り形式のLTをやってみました。以前からアイデアはあったのですが、なかなか実行できる場がなく、ずっと機会をうかがっていたのです。また、ちょうど1月の「JaSST’12 Tokyo」の情報交換会でバイオリン演奏を披露したこともあり、自分のホームで演奏しない手はないとも思っていたのです。
本来の実行委員の業務が忙しく、バイオリンの練習が満足にできなかったというのはありましたが、参加者の皆さんの反応はまずまずでした。こちらも、やってよかったなと思いました。
「JaSST'12 Niigata」開催レポートはこれで最後です。ここまで読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました。