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絵本「びくびくビリー」に思う、心配事だらけのこの時代を生き抜くヒント

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 こんにちは、第3バイオリンです。

 先日、次女が保育園から「びくびくビリー」(アンソニー・ブラウン作、評論社)という絵本を借りてきました。次女にせがまれて読み聞かせをしているうちに、この本はメンタルヘルスマネジメントの物語だ、今のご時世を生き抜く大人にこそ必要なことが書かれている、と思いました。

 今回は、「びくびくビリー」の紹介と私が読んで思ったことを書いてみようと思います。

■「びくびくビリー」あらすじ

 この物語の主人公、ビリーは心配事がたくさんあっていつもびくびくしている男の子。パパやママになぐさめられても心配をやめることができません。あるとき、ビリーはおばあちゃんから「しんぱいひきうけにんぎょう」なる人形をもらいます。おばあちゃんの言うとおりに「しんぱいひきうけにんぎょう」に心配事を打ち明けて枕の下に入れて眠るとあら不思議、ビリーは心配をすることなくぐっすりと眠れるようになりました。

 ところが数日後、ビリーには新しい心配事ができてまた眠れなくなってしまいます。ビリーはそれを解消するためにある行動に出る......というお話です。

 ビリーがおばあちゃんからもらう「しんぱいひきうけにんぎょう」は中米のグアテマラに古くから伝わる人形です。マッチ棒くらいの大きさのこの人形に心配事を打ち明けてから枕の下に入れて眠ると、人形が代わりに心配事を引き受けてくれるのでぐっすり眠れるようになる、という言い伝えがあります。

■ビリーの心配を受け止めるおばあちゃん

 このお話を読んで、最初にはっとしたのはビリーのおばあちゃんの対応です。

 心配をやめられないビリーに対して、まずはパパとママがそれぞれ言葉でなぐさめます。「怖いことなんかない」「お前は考えすぎだ」「パパとママがついているから大丈夫」などなど。しかし、これらの言葉を聞いてもビリーの気持ちが晴れることはありません。

 しかし、心配で眠れないというビリーの言葉を聞いたおばあちゃんはまず「そうだったのかい」とビリーの気持ちを受け止めます。その後で、「おばあちゃんも子どものころは心配ばかりしていた」と語ります。

 子どもであるビリーにとっては、大人は心配なんかしたことがない完璧超人に見えているかもしれません。だからおばあちゃんの「子どものころは心配ばかりしていた」という言葉は新鮮だったことだと思います。

 逆の立場から考えると、子どもの心配は大人からしてみたらたいしたことがない、それこそ心配するだけ無駄なことかもしれません。しかし、子ども自身は真剣に心配しているのです。

 これは子どもと大人だけでなく、部下と上司、先輩と後輩といった大人同士の立場でも起こりうることかもしれません。私も親として、子どもが心配しているときにその気持をちゃんと受け止められているかどうか、思わず我が身を振り返ってしまいました。

■声に出して読みたい心配事

 ビリーがおばあちゃんからもらった「しんぱいひきうけにんぎょう」。人形を相手に心配事を声に出して打ち明ける、ここに心配事を解消する大きなヒントがありそうです。

 心配事を頭の中で考えるのではなく、声に出して打ち明ける。これだけで「今、自分は何を心配しているのか」がはっきり見えてきます。心配事の正体がわかってしまえばそれを解消する手がかりがつかめます。たとえすぐに心配事を解消するための方法が見つからなくても、漠然とした不安からは逃れられるでしょう。

 また、打ち明ける相手が物言わぬ人形というところもポイントです。もし打ち明ける相手が人間だと、話の途中で「でも」「ちょっと待って」と横槍を入れたり、「そんなしょうもないこと心配してるんだ、ダッサwww」などと茶化してきたりする可能性があります。

 しかし、人形であればまとまりのない話でも余計な口出しをせずに最後まで黙って聞いてくれます。おまけに、聞いた話を絶対に他の人に漏らしたりしません。

 「しんぱいひきうけにんぎょう」は単なる気休めやおまじないではなく、メンタルヘルスマネジメントの観点から考えてもちゃんと理にかなった存在だと思います。この人形を生み出したグアテマラの人の生活の知恵を感じます。

■心配を解消する方法を知ればもう怖くない

 「しんぱいひきうけにんぎょう」のおかげで一度は心配せずに眠れるようになったビリーでしたが、また新たな心配に見舞われます。しかし、ビリーはその心配を自分の力で解消してしまいます。それから、ビリーはびくびくすることが少なくなりました。

 ビリーは「しんぱいひきうけにんぎょう」によって単に心配をなくすだけでなく、「心配を自分で解消する力と自信」を手に入れた、ということが大きいと思います。

 心配事、というのはやっかいなもので、ひとつ解消してもまたすぐに別の心配事がやってきてしまいます。特に今のコロナ禍においては、心配事とは無縁の人はおそらくいないことでしょう。

 それでなくても、生きていれば心配事は避けられません。それでも、心配事を解消するための手段と、「自分には心配事を解消する力がある」という自信があれば、そこまで恐れることはないのかもしれません。

 今回は、次女が借りてきた絵本から考察を広げてみました。子どもや、子ども向けの絵本から大人が学べることは多いと思ったお話でした。

Comment(4)

コメント

ちゃとらん

> 「しんぱいひきうけにんぎょう」に心配事を打ち明けて枕の下に入れて眠ると…
ごつごつして、眠れないんじゃないかと、心配になりました。


> マッチ棒くらいの大きさのこの人形…
ああ、それなら大丈夫ですね。良かった。


いいお話ですね。少し感動しました。

第3バイオリン

ちゃとらんさん


コメントありがとうございます。


>> マッチ棒くらいの大きさのこの人形…
>ああ、それなら大丈夫ですね。良かった。


そうです、絵本の解説によると、木の切れ端にはぎれや糸などを貼り付けて作る素朴な人形のようです。


身近にあるもので、誰でも気軽にこしらえることができるのがまたいいですよね。


ところで、絵本の解説そのまま「マッチ棒くらいの大きさ」と書いてしまいましたが、
マッチを使う機会がほとんどない今の子どもたちにはこれでわかるのかなと少し心配になってしまいました。


>いいお話ですね。少し感動しました。


子ども向けの絵本のなかには、ときに大人のほうが心を打たれる物語があります。
いま3歳の次女がこの絵本のことをいつまでも覚えているかどうかはわかりませんが、何か心に響くものがあればと願います。

匿名

小さな子どもは自分と同じ様な気持ちを抱えているものに共感を覚え るのでしょう。きっと自分の事のように感じてしまうのです。うまく行くと嬉しくなると思います。不安、共感、解決、幸福感、という展開が大人にとっても子どもにとっても心地いいと思います。

第3バイオリン

匿名さん

コメントありがとうございます。


>小さな子どもは自分と同じ様な気持ちを抱えているものに共感を覚えるのでしょう。


大人もそうですが、特に子どもは経験値が少ないので「こんなことで悩むのは自分だけかも」と思いがちです。それが自分だけではない、それを乗り越えた人が存在する、という事実はそれだけで励みになると思います。
だけど大人になるとそういう気持ちを忘れがちなんですよね。


>不安、共感、解決、幸福感、という展開が大人にとっても子どもにとっても心地いいと思います。


幼児向けの絵本なのでページ数は少なめですが、そのぶん話のテンポがよく、作者が子どもたちに伝えたいことが凝縮されています。

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