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開発者から見た世界コンピュータ将棋選手権

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こんにちは手塚規雄です。番外編です。というか書きた入りなかった部分の書き足しです。

本編はこちらから。http://el.jibun.atmarkit.co.jp/noriwo_t/2016/05/post-635e.html

今までは観客サイドでしたが第26回世界コンピュータ将棋選手権は開発者サイドで参加となった今回の選手権。そこで開発者視点で思った事をコラムとして書きます。

 

開発者はほとんどがコンピュータ将棋ファン

多くの開発者は自分自身が開発者にもかかわらず誰かのファンだったりします。誰かに憧れて開発をはじめた人が多いし、好みのソフトがあるし、その好みやファンは人それぞれです。特にBonanza開発者の保木さんはみんなファンですね。そんな事からコンピュータ将棋にもだんだん歴史が作られてきたとも言えます。

そんな人たちと気軽に話せるようになるのも開発者の特権ともいえます。対局中はしゃべりながら対局の様子を見ているので、あこがれのソフトと対局できるのはとても嬉しい事なのです。もちろん自分のレベルがあがるとライバルになるわけですが、私はまだまだその状態には達していません。秋の大会はあるかどうかもまだわかりませんが、そこまでにはもうちょっと強くしようと思っています。

 

コンピュータ将棋ソフト開発者だからといって将棋を知っているわけではない

一番有名なのはBonanza開発者の保木さんですが、保木さんはあまり将棋ができないのは有名です。私も級位者レベルなので弱い方です。他にも将棋をほとんど知らないけどソフト開発者もそれなりにいます。逆に強い方で有名なのはponanzaの山本さん(アマチュア五段?)やAWAKEの巨瀬さん(元奨励会)。新規勢では読み太の塚本さん(元奨励会)です。(奨励会は簡単にいえばプロ一歩手前の方々)

一部では上位陣はやっぱり将棋が詳しい方が有利と言われています。ソフトが指した手が良いのか悪いのかを自分自身で判断できるからです。でも彼らに言わせるとそれが活かせるのはほんの一部しか無いので将棋の棋力はソフト開発にはそれほど大きく関与できないようです。評価関数の調整や指し手生成の高速化に時間をかけたほうが強くなるから。そんな結論から話していました。それでも棋力の低い人間としてはやっぱり棋力があったほうがいいよなー、と思ってしまうものです。単なるないものねだりです。

 

選手権や電王トーナメントは対決の場というより意見交換の場?

意見交換も活発に行われるし、なかにはソースコードを見比べあって今後の課題は何かを話している人もいました。選手権や電王トーナメント以外ではなかなか開発者同士で会って話しをする機会はないのが現状です。そのため、その選手権や電王トーナメントでの出会いやその場での話ほど面白い話はありません。

多くの開発者がTwitterを使っています。開発者同士の絡みはかなり多いほうだと思うのですが、それでも話し足りないのかオープンすぎるネットでは話しにくいのか、直接話したほうがやっぱり盛り上がるのか、理由は様々です。そんな事もあり選手権や電王トーナメントはお祭り感がありました。

 

クラスタとクラウド、そして大合神クジラちゃんシステム

今回の選手権で競合ソフト勢が行っていたクラスタ構成によるハードウエア強化。クラスタ構成そのものは第1回電王戦にも登場したボンクラーズから行われていたのでそれほど珍しくありません。それでも今回の大会では、ponanzaや技巧をはじめクラスタによる強化が行われていました。それもAWSによるスポットでの使用が気軽にできるようになったのが大きいと思います。一部の開発者では課金による強化、廃課金勢などとも言われていました(笑)

そんな中、逆に無課金で大規模クラスタを組んでいる大合神クジラちゃん。ニコ生リスナーのパソコンの計算資源を活用することで300台超のクラスタに成功していました。私はこれ以上のクラスタを組んでいるのはGPSとアルファ碁しか知りません。それをニコ生の人気だけで無課金で強さを実現したことが凄いことです。これは他の誰にも真似できない最強の独自性です。今年は5位という成績でしたが、いつかリスナーの力を全開に優勝する日が来るかもしれません。

今回の選手権で私は最新のデスクトップを購入しようと迷いましたが、今回は見送りました。資金面の問題もありましたが、どうにもこうにもソフトウエアがダメダメだったのが最大の原因です。どんなに優れたハードウエアがあったとも、中身のソフトウエアがダメであれば意味が無いからです。計算力が最高級であったとしても、その前提となる計算が間違っていたら結局はダメなままですからね。そんなわけで、結果的に最新ハードウエア未購入は正解でした。

 

将棋ソフトのバグを取り切るのはやっぱり難しい

今回、二次予選でけっこうトラブルなどが多かった気がします。しかも新規勢ではなく二次予選シード組という何年もやっている強豪ソフトから出たのは驚きでした。

二次予選の9回戦にて二手指しの反則負けをしたひまわり。ひまわり開発者の山本さんに聞いたら、多分昔からあるバグで今回はじめて発生した、今まで発生しなかったのがわからない。そんな話を頂きました。ひまわりは今年シード権を失いましたが、去年は9位でギリギリ決勝リーグにいけなかったソフトであり、かなり強いソフトです。そんな強いソフトでもまだまだ見知らぬバグがあるというのは、恐ろしいことでした。

 

最後に新規勢へ私ができるたった1つのアドバイス

他にもいろいろあったのですが、忘れてしまったり、表にはかけない内容もあります(笑)。そこで最後にこれからコンピュータ将棋ソフトの開発者になろうと思っている方へ、弱小ソフトの開発者の私からできるたった1つだけ、アドバイスがあります。それは「ソフト名はしっかり考えよう」、この1点だけです。なぜかというと、開発者は最初どうしてもソフト名で呼ばれることになるからです。名前で呼ばれる人なんて電王戦に出場した人ぐらいでは。だからこそ、ソフト名は自分が呼ばれてもよい名前、相手が呼びやすい名前が良いと思います。SilverBulletは長いし呼びにくいのが欠点です。自分も言い難いのも欠点です。そんな経験から名前は覚えやすく、呼びやすいものがよいです。

あと名前被りとかも気をつけましょうね。名前をつけたら実はもうTwitterで使っている人がいてマジで困って運営さんに「名前かぶったから変更します」のメールとか投げることになるので気をつけましょう。今となっては懐かしい話です。

 

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コメント欄やTwitter(@noriwo_t)にて書いて欲しいコラムの題材をいつでも受け付けております。ただしその内容に応えられるかどうかはわかりません。基本的にコメント欄には私自身がコメントしないのですが、題材リクエストに関してはレスをすることもありますので、よろしくお願いします。

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