外資系IT企業の過酷なIT現場を経た同期4人組(現在は研修講師)が執筆します!

番外編:ある挿話「若手リーダーに伝えたいこと~“言行一致”の重要性」の巻(下)

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 新任リーダー明日香、そして同期の真紀子、草一郎が入社当時に上司だった今屋は、現在、経営企画部長の要職にある。次々号の社内報に、『若手リーダーに伝えたいこと』と題して今屋部長を囲む座談会の記事が掲載されることになった。

 今屋部長は、“リーダーシップ”について語り合いたい、と切り出した。リーダーの最も重要な要素は『信』である、という今屋の話から、3人は“言行一致”について改めて考えている。

真紀子「申し上げにくいことですが、いまさら“言行一致”というとなんだかお題目のような感じも……」

今屋「そうですね、具体的に考えてみましょう。現実の仕事に即して考えてみてください。どうしたら、周囲から信頼を得ることができるでしょうか」

明日香「基本の基本になりますが、やはり『約束したことは実行する』というのが第一歩だと思います」

真紀子「そういえば、グループ内の小さな決めごとについてメンバーから確認メールが来て、自明と思って返事もしなかったことがありました。後で、そのメンバーが気をもみながら返事を待っていたと知りました。
 “何でも相談してね”と言っておきながら返事しなかったのは、今から思えば言行不一致だったかもしれません。どんなにささいなことでも、何か質問あるいは依頼されたら返事をすることは、必要だと思いました」

明日香「私は、引き受けるときは潔いのですが、いざ行動に移すのが遅くなることがあります。相手から見れば、言行不一致と感じるのでは、と思い当りました」

今屋「もしもすぐに対応できない場合は、自分で完了期限を設定し、いつまでに可能かを伝えることが必要ですね。そうすれば、設定した完了期限が相手にとって不満の場合には教えてくれますね。
 完了期限を相互に合意したら、逆算して行動計画を立てて、必ずやりとげることが重要になります」

明日香「受けたからには必ずやりとげる……言いかえれば、依頼されるときに安請け合いをしない、ということが大事ですね」

草一郎「経験の浅い頃の私の話ですが、引き受けたけれど自分の力ではできないと気付いたのに、なかなか言い出せなかったことがあります。期限直前になって、状況に気付いた先輩に助けられましたが、迷惑をかけてしまいました。

 安請け合いで引き受けてしまって迷惑をかけるよりも、自力では無理だと気づいた時点で伝えることも必要なのだと身にしみた経験です」

今屋「逆にリーダー側からメンバーに依頼するときなどは、相手の力量ということを考慮する必要があります。みなさんは、仕事を依頼する際に気を付けていることがありますか」

真紀子「相手の能力にちょうど見合った仕事よりはハードルを高めにした仕事を依頼するようにしています。110から120%くらいの仕事を依頼すると、良い結果が出るような気がします」

今屋「それは、中田さんが『相手を育成したい』という考えにもとづいているからですね。リーダーとして、メンバーの育成という観点をいつも持っていることはとても大事です」

草一郎「仕事を依頼するとき、相手の力量を考えながらSMARTの項目で依頼するようにしています

  • S: Specific(達成すべきことが具体的であること)
  • M: Measurable(測定可能な指標を示すこと)
  • A: Attainable(相手の力量に応じて、達成可能であること)
  • R: Result-Oriented(この仕事が成果にどのように関連づいているか説明でき、かつ結果を出せること)
  • T: Timely(期間、期限などを明確にすること)

明日香「依頼したままにしないで、進み具合に注意しています。必要があればすぐサポートできるように」

真紀子「みなさんと話しているうち、言行一致をお題目と感じている場合ではない、と思い始めました。リーダーが言行不一致のためにメンバーから信頼を得られないとなると、リーダーシップ発揮以前の問題になってしまうんですね」

今屋「最近、私が改めて強く思うのは、『世の中は、自分のためという意識では動かない。他の人に対して貢献するという人びとの意識があってこそ、維持されている』ということです。

 言行一致ということに限らず、折にふれて個人個人でわが身を振り返ってみるといいのではないかと思います。そんなこと人から言われなくても、と思う方もあるでしょう。しかし今、全社の色々な現場を見る立場に身を置いている私からみると、当社の1人ひとりが自分の仕事でリーダーシップを発揮する、という心持ちを持つことが求められていると痛感するのです。

 ぜひみなさんが、真のリーダーたりうる人間になることを期待しています」

~原案:株式会社エムズ・ネット・スクエア顧問取締役 平尾隆行人財創研 代表)~

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