ソフトウェア・エンジニアの語る、虚々実々の物語

電子工作オタクの血が騒ぐ。「ザ・LED電灯」を作ろう!

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 前回、手回し発電式のLED懐中電灯についてちょっと書きました。今回はそれに関連した話題で行きたいと思います。

 懐中電灯のLEDは、直径が5ミリメートル程度のLED(発光ダイオード)でしたが、これが結構明るいんですね。素直に感心してしまいました。

私が持っているLED懐中電灯には、合計5個の白色LEDが付いていました。5個ではとても明るすぎるので、通常は1つだけを点灯するように設定してあります。

 懐中電灯の設定をあれこれしているうちに、ある考えが頭の中にメラメラ(?)と湧いてきたのです。

 ん? ……この感覚は? なに? (もし私がニュータイプだったら、眉間に稲妻が走ったことでしょう。でも、そんなことは起こらず)

 何かが閃きました。閃き神降臨!

 その神は言いました。

 「その程度なら、自分で作れるじゃ~ん!」って。

 頭の中に、なぜか懐かしいメロディが反響します(でっきるっかな、でっきるっかな、パラパラパラ~)←何故か「ノッポさん」のテーマです。

 そうです!

 私は何を隠そう(隠しても意味ないけど)遠い昔、電子工作オタク(もとい、電子工作マニア)だったんです!

 今はソフトウェア関係の仕事で生計をたてていますが、もともとはハードウェア関係の仕事をすることが希望だったのです(当時入社した会社では、ハードウェア要員は足りていたので、私はソフトウェア開発要員に回されました)。

 既に遠い記憶になっていましたが、何者かが私の埋もれた記憶を掘り起こしました。神でなければ、召喚獣でしょうか。脳内を掻き回します。

 そうだ!(ぴぴっと閃き)

 確か戸棚の中に、電子工作用の部品が眠っているはずだが……。

 戸棚を探すと、ありました!あるじゃないですか!私に使ってもらおうと言わんばかりに、そこに存在しているのです。電子部品が詰まったケースと、半田ゴテのセットが。

 で……何故か、半田ゴテは2本もありました。

 なんでだろう? とは思いましたが、取りあえず新しそうな方を使うことにしました(きっと、ハンダ付けをしようと思った時に、半田ゴテが見つからなかったので、もう1本買ってしまったのでしょう)。

 半田ゴテと一緒にハンダも発見。これがなくては、ハンダ付けはできませんからね。取りあえず一安心。

 さて、ここからが問題です。

 懐中電灯に使われているような高輝度なLEDを買い置きした記憶はありません。偶然にLEDが部品ケースに入っているなんて奇跡は……うーん。やっぱり起こりませんでした。

 代わりにと言っては何ですが……いろいろな物が部品ケースに入っていました。

 1Kオーム前後の抵抗(カーボン抵抗)がどっさり……何に使ったんだろう? まあ、いいか。ノイズ除去目的のコンデンサもたくさん。まあ、これは何となく買い込んだ記憶があります。

 赤と黒のリード線。電子工作には必須ですよね。

 そして、電子回路を正式にハンダ付けする前に、回路をテンポラリに組み上げて動作確認をするためのブレッドボードがありました。

 ジャンパ線もたくさんありました。きっと秋月電子(秋葉原では知る人ぞ知る、その道では有名な電子工作マニアの味方のお店)あたりで購入したんだと思います。

 希望する物(白色LED)はありませんでしたが、赤や緑のLEDはどっさりとありました(数えてませんが、100個くらい)。うーん。こんなに買い込んでいるからには、何かを作る予定だったはずです。

 記憶を呼び起こすこと数分……。

 ああ、そうか……。電子ルーレットを作るために、赤や緑のLEDがたくさん必要だったんだ!(納得)

 懐かしさも手伝って、ちょっと横道に逸れますが、赤色LEDを発光させてみたくなりました。

 LEDには極性があります(プラスとマイナスの電圧を印加する端子が決まっている)。同じく戸棚から掘り起こした(?)乾電池を持ってきて、赤色LEDの端子に電圧をかけてみようと思います。

 で……さてと、何ボルトかければいいんだっけ?

 そこで、グーグル先生登場!。早速調べてみます(本当に、便利な時代になりましたね。昔だったら、本屋に行って書籍を調べていたところです)。

 いろんなサイトで情報が公開されているので、ここではスペックについて詳しく触れませんが、赤色LEDで大体2ボルト程度、緑LEDもそれくらいか、ちょっと高めの電圧が必要とのことでした。

 …ってことは、乾電池は一個では足りないってことですね。

 赤色LEDをブレッドボードに挿入します。乾電池を2個持ってきて、ジャンパ線をつないで、いざ乾電池2個(3ボルト)を印加!

 おお、光りました! 赤い小さい光です。

 この光量ではとても懐中電灯に使用するのは無理です。まして赤い光なので、ちょっと場違いな感じがします(いや、かなり)。

 と……あれ? 消えた……。赤色LEDが光らなくなってしまいました。乾電池が切れたとは思えないし。そう思っていた時、また別の神(または召喚獣)が脳内降臨。また記憶が蘇ってきました。

 ああ、そうか。電流が流れすぎて、焼けちゃったのね……(汗)

 そうです。規定以上の電圧を印加したために、赤色LEDに大電流が流れて、赤色LEDが焼けてしまったようです。電流制限回路もなく、規定以上の電圧を印加すれば、過剰に電流が流れるに決まっています。なんと無謀なことをしたのでしょうか(とても、まっとうなエンジニアがやることとは思えませんね。反省)。

 かわいそうな赤色LED……ごめん。機能しなくなった赤色LEDを丁重に弔ってから、LEDに対する適正な電圧と電流を調べることにしました。

 赤や緑のLEDでは、おおよそ10ミリアンペアのようです。電流制限抵抗もなく、電圧を直接印加したので、それ以上の電流が流れてしまったのでしょう。

 さて、白色LEDも赤や緑のLEDのと同じかと言うと、ちょっと違うようです。白色LEDは電圧や電流も、赤や緑のLEDに比べてちょっと高めのようです。ちゃんとメーカーのスペックシートを見ていないのですが、Webの情報をかき集めると、白色LEDは、

  • 電圧は、3~3.5ボルト程度
  • 電流は、15~20ミリアンペア程度

とのこと。

 なるほど……。電圧は3ボルドが下限らしいです。3ボルトならば、乾電池を2個直列にして、電流制限抵抗などは不要かもしれません。

 気の早い私はさっそく白色LEDを探す旅に出ることにしました(ネット通販で買っても良かったのですが、たかだか50円程度のLEDを買うのに、送料500円は痛いです)。

 といっても秋葉原まで出向くのは電車賃が掛かりすぎます。調べていると、会社に行く途中の駅に、電子部品店が3店舗あることが分かりました。定休日を調査すると、うまい具合に2店舗は開いている模様。さっそく出向くことにしました。

 駅から3分くらい歩いたところのビルの2階に、その電子部品店群はありました。

 秋葉原の電子部品店と同様に、店の中はもちろん、軒先までぎっしりと電子部品が並べられています。ああ、なんて懐かしい。(また、ちょっと回想にひたる私)

 店に入って、いろいろな物を物色します。白色LEDを探しに来たのに、なんか別の物を見てまわる私。同じように電子部品を物色している数人の中年男性が居ました。若い人や女性は見当たりません……。まあ、仕方ないか。

 店の奥に入って、やっとお目当てのLEDを見つけました。

 高輝度白色LEDって書いてあります。横の方でデモシステムがこの白色LEDを発光させていました。

 うん。これは明るい! 自宅にあるLED懐中電灯の明るさに匹敵します。

 直径は3ミリ、5ミリ、10ミリと有ります。価格は80円やら120円、180円とまちまち。

 LEDによって光の照射角にいろいろと差があるようです(広い照射角を持つLEDは「広角LED」って言うらしいです)。取りあえず、輝度が高くて、角度がそこそこ広くて、なおかつ安い!(これが一番重要)のLED(5ミリ、80円)を購入することにしました。

 店頭で見たところ、印加電圧は3.2~3.5ボルト程度必要らしいです。うーん。3ボルトを超えている。これじゃあ乾電池2本ではつらいかもしれない(っていうか、無理)(ネットで情報を探すと、3ボルトでも行けるという説もあり、よく分かりません)

 電流は20ミリアンペアって書いてあります。まあ、明るく照らすにはアンペアはできるだけ多い方が良いのでしょうか……。電流が多すぎると寿命が縮んだり、壊れたりするリスクが高くなりますが、今回は20ミリアンペアを流すことにしました。

 電流制限抵抗を、白色LEDに直列でつなぐことにします。

 乾電池を入れるケースも必要になりますね。今回は乾電池ケース(単3×3本用)も買いました。

 その場で電流制限抵抗値を計算します。もちろん計算式はこれです。

 V(電圧)=I(電流)×R(抵抗値)

 これ、電子工作の基本でしょう。乾電池直列3本の電圧は4.5ボルトです。白色LEDに3.5ボルトを印加するとして、残り1.0ボルトを抵抗に印加して、抵抗に20ミリアンペアの電流が流れればいいのです(直列なので、そのまま電流が白色LEDにも流れます)。というわけで、必要な電流制限抵抗の値は、

 1(ボルト) ÷ 0.020(アンペア)= 50(オーム)

ということですね。

 50オームの抵抗が自宅にあったかどうか分かりませんが。100オームの抵抗ならたくさんありました。これを並列にして50オームとして使うことにしました(あるものは、何でも使うが私の主義です。この歳になっても抵抗のカラーコードが読める自分にちょっとびっくりです)。

 自作LED電灯の制作がうまくいったら、量産(なんで?)することも考えましょう。きっと停電の時に役に立ってくれるはずです(廊下や玄関や居間に、一個づつくらいあると便利かなぁ~って思ってます)。

 お店の店主(おばちゃん)にお金を払って部品を買いました。私が立ち寄ったお店は、おばちゃん1人で店を切り盛りしているようです。私以外のおじさん達と、電子回路についていろいろ話をしていたから、その辺りのことに相当に詳しそうです(それに何より、狭い店内にぎっしりと積み上げられた商品について、全部スペックを知っているのですから、相当に年季が入ってます)。

 自宅に戻って、早速工作開始です。買ってきた白色LEDを大事に袋から出します。用意した物は以下です。

  • 高輝度白色LED
  • 抵抗(50オーム)
  • 乾電池 単3を3本
  • 電池パック
  • スイッチ
  • 配線(銅線)少々
  • 基板(ユニバーサル基板)5センチ角くらいのもの

 これだけ。

 まずは、ブレッドボードにて動作確認です。白色LEDがちゃんと点灯することを確認します。

 LEDと抵抗をつなぎ、電池に接続します。無事点灯しました。めちゃくちゃ明るい! これだけ光量があれば、停電時にかなり重宝しそうです。

 さて、取り付けましょう。

 ハンダ付けをするなんて、何年ぶりなんでしょう。自然と手が震えます。なんとか、LEDを基板にハンダ付けしました。そして、抵抗……。次々とハンダ付けして行きます。コツを思い出せば早いものでした。電池パックに乾電池をセットします。

 全部ハンダ付けが終わった後に思い付きましたが、電流の逆流防止用の整流ダイオードを付け忘れました。まあ、いいか。電池の極性を間違えることはないと仮定します(これが会社の仕事でなら、こんな判断は厳禁ですけどね)。

 そして、感動の瞬間です!スイッチを…カチっ!

 綺麗な白色光が辺りを照らします。達成感抜群です。

 除幕式はありませんでしたが、無事に回路として動作することを確認しました。

 おっと、外側のケースがなかったですね。電灯としての専用のケースを買ってきて作るとなると、また費用がかさみます。

 そこで私が考えた案は「100円ショップで売られているプラケース」。

 食品保存用のプラケースが3個セットで100円程度で売られています。これで十分でしょう。

 100円ショップでケースを購入し、そのケースの中にLED基板を装着しました。結構いい感じです。ケースの中で発光させれば、白色LEDの目を刺すような光量も、少し和んで目に優しくなりました。

 試しに一晩つけっぱなしにしてみましたが、電池も問題なく持ちます。名付けて「ザ・LED電灯」! ……別に「ザ」はなくてもいいですけど。

 完成したLED電灯を、ご満悦で眺めていましたが、人間はすぐに欲が出てきます。もっと効率がいい方法はないのか? ネットで調べると、定電流ダイオードを使う方法も書かれていました。

 あ! そうか。その方が電流を一定に制御できるし、抵抗で電力を消費しなくてすむから、もっと効率的ですね。などなど。いろいろなことが楽しめた1週間でした。

 工作好きだった少年時代。ちょっと懐かしみがてら、あなたもトライしてみてはいかがでしょうか? きっと、いろいろな神が降臨(召喚獣の召喚?)して、あなたをめくるめくワンダーランドに誘うことでしょう。

 今、作成したLED電灯が、ほんのりとした光を放ち、私を照らし出しています。これさえあれば、停電なんて怖くない(はず)。

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