手回し発電式懐中電灯が紡ぐ家族団らん
とてもとても周回遅れの地震の話題なのだが、自分の中の気持ちが風化しないうちに記しておこうと思います。
あの大地震が発生した時、私は会社の建物の1階の執務室に居ました。
とてもとても大きな地震だったと記憶しています(体感的に)。それなりに頑丈な(はずの)会社の建家が「バキっ!バキっ!」と音を立てて軋みました。今考えただけでも、ゾっとします。今も続く余震。身近にある恐怖に、ちょっとビビる自分……。
建物の1階でも相当に揺れました。建物の最上階に居た人々は、もっと大きな揺れを感じたでしょう。
日本に住んでいれば、どこに住んでいたって、いつかは地震に遭う。だから自分は“地震慣れ”している“はず”でした。そうあの時まではそう思っていました。
でも、やっぱり実際に地震に遭うと、身体から血の気が引きました。今回の地震の事を、何となく同僚と話をしていたら、同僚が言いました(彼は過去、帰省中に中越地震に遭遇していたとのこと)。
帰省時の中越地震遭遇について、同僚曰く、「正直に言うと、あの時は“死んだ”と思った。立って歩くことも出来ないから、這って外に出たよ。」だそうです。今回の大地震が発生した時に、私は椅子に座っていたので良く分からないですが、立って歩いていた人がその場にしゃがみ込んだのを覚えています。
私の会社や、地域の防災組織では、地震・火災を想定した避難訓練を毎年実施しています。今回、その成果が試されるはずでした。
しかし。批判を覚悟で言うならば、あまり成果が出せなかったのでは? と感じています。
地震発生時に、執務エリアに居ない人は、そのまま不明者として処理されました。確認する方法が無かったからです。避難訓練の時は、皆“執務室”で待機しているので、点呼は直ぐに終わります。 でも、本番ではそんなことは無いのです。会議室に居た人は、その場で避難の判断を迫られました。外部から来られていたお客様を先に避難させる必要もありました。 緊急の際に使用するヘルメットも、数が偏在していて、いざという時に必要な場所で、必要な数が揃わなかったこともありました。
いずれにせよ、大きな教訓を残してくれました。今回、自分でもまだ整理出来ていないのですが、自分で感じた事を書き留めておこうと思います。
このコラムをお読みになっている皆さんの会社や自宅はいかがでしょうか?
●バール(脱出経路確保用)
地震が発生した時「脱出経路を確保せよ」と言われています。まず身の安全を確保(机の下などに一時避難)した後に、脱出する道を確保する、ということですね。
しかし、今回の地震が発生した時、私の周りで身動きのとれた人は少なかったと思います。揺れが大きければなおのこと移動出来ないです。
倒壊防止処置が施してあった棚や机は倒壊を免れましたが、未処置の物はかなり倒れました(当然と言えば当然)。そういった危険もあるため、無闇に動くことは出来ないと感じました。
でも、じっとしていてその場から動けなければ、ドア枠が曲がってしまいドアが開かなくなる可能性があります。事実私の同僚が帰省先で地震に遭った時、身動き取れないまま、2階の窓枠が変形し、窓は開かなくなったとのことです。
揺れが大きいほど動けない。尚且つ、脱出経路が確保出来ない率も高まるうーん。悪循環ですねぇ。
そこでです。会社は別途対策するとして。自宅での話になりますが、もしもドアや窓が開かなくなった場合に「こじ開ける」ための道具が必要と感じました。
私がネットで探したのが、“バール”です。サイズが900mmの物がネットで安く購入出来るようです。900mmあれば、力の弱い女性でも使えるって聞きました(実際にまだ試していないですけど)。
私が自宅に居ない時、万が一の時、家族が脱出出来るように(使い方のレクチャーは必要ですけど)備えは必要だなぁ、ということで。さっそく注文しておこうと思います。
●ヘルメット(頭部保護用)
会社では1人に1つヘルメットが支給されています。執務室の机の下に、いつも常備しています。
会議室にも一応は会議室収容人数分のヘルメットが用意されています(はずでした)。今回は、いくつかの会議室で必要分用意出来ていなかったことが発覚しました。今後はちゃんと用意してもらうようにしたい。
自宅では、私以外の家族の人数分のヘルメットを用意してありました。(阪神・淡路大震災以降に購入したものだと思います。)
しかし!
もし私が自宅に居る時に地震が発生したら、私の分のヘルメットが無い!(なんとマヌケなことか!)ので、今後追加購入しようと思います。なんで自分の分が無いんだ? それこそ危機管理が出来ていない証拠だなあ
友人とこんなことを話していたら、友人から言われました。
「バイクのヘルメットでも、いいよね?」
なるほど。バイクのヘルメットでも代用出来るかもしれないですね。バイクのヘルメットの方が耐衝撃性は強いのかな? 値段から言うと、バイクのヘルメットの方が性能が良いように思いますが、バイクで電柱に激突して、ヘルメットのおかげで命拾いした友人が居たから、たぶん効果はあるんだろうなぁ。
●懐中電灯
今回の地震は、まだ明るい内に発生しましたが、もし夜に発生していたら、全館停電で大変なことになっていたでしょう。懐中電灯が必要だということが良く理解出来ました。
近頃は停電なんてしたことないから、懐中電灯のありがたみを実感する機会は皆無に等しいですね。
会社では空調が停止してしまいましたが、非常用電源のおかげで照明は点いていました。
では、自宅では?
先日の地震の後、私の自宅一帯はあたり一面が停電してしまいました。私は携帯電話(その時、どこのキャリアの携帯電話も普通になっていて、電話の機能を果たしていなかったですが)のフラッシュライトを点けて、帰宅しました。 携帯電話の新しい使い道が分かりました(本来の使い方では無いですけどね)。案の定、室内は真っ暗。ドアを閉めるとなおさら真っ暗。 私はタバコを吸わないし、家族もタバコは吸いません。なのでライター類も家には置いていないのです。
しかしリビングの奥で、灯りが点きました。
リビングから子供が懐中電灯を片手に、私の方に歩いて来るではないですか。ちゃんと懐中電灯を探し出して、使っていたようです。そう言えば、防災パックに懐中電灯を用意していたのを思い出しました。
と、そこまでは良かったのですが、問題発生!
乾電池が切れかけています!
うーん。あまりメインテナンスをしていないから、電池切れのチェックが甘かったようです。
メインテナンスはちゃんとしましょうね(汗。仕事では、ちゃんとチェックリストがあって、それなりにチェックしているのに。自宅は盲点でしたね)。
また、私が無計画に懐中電灯を買っていたので、いろんな種類の懐中電灯が氾濫していました。救急信号(SOS信号)を発光出来るものやら、めちゃくちゃ高輝度のライト(深夜の昆虫採集用)やら 普通の懐中電灯の方が少なかったです(汗)。ご購入は計画的に。
●乾電池
自宅に電気が来ないとなると、やっぱり電池に頼らざるを得ません。乾電池も自然放電するでしょうから、長期間にわたって乾電池を買い置き保存して置くのは難しいと思いました。定期的な補充・交換が必要ですね。
今回の件で思い知ったのですが、懐中電灯に使われる電池って、ほとんどが単1型なんですね。近所の商店では、一瞬で単1乾電池は売り切れになっていました。たまたま自宅の懐中電灯の多くは、単2を使っていたので、初めの頃は単2乾電池を近所の商店で買うことが出来ました。 でも、すぐに単2電池も売り切れになってしまいました。かろうじて単3または単4乾電池が売られている状況です。
これからは、単3または単4で動く懐中電灯が必要だなあ、と痛感しました。でも、今回の件で、みんなが単3または単4電池で動く懐中電灯を買うようになったら、やっぱりすぐに品切れになるんじゃないだろうか?
ってことは、電池には充電式の電池も用意しておかなければいけないなぁ。少なくとも一日のうちに数時間(充電出来る時間くらい)は電気が来るという想定ですけど。
あ、あとは角型乾電池(9Vのもの)は、かなりお店に残っていましたね。これも使い道があるかもですね。
●ポリタンク
白色の18リットル入りのポリタンクに、毎年水を入れ替えて置いてあります(赤いポリタンクは灯油用らしいので、白色のを買ってきました)。
これも地域の防災訓練の時に教えてもらったことでありますが、ある程度役に立つのではないでしょうか。少なくともトイレの水の補充くらいには使えると思います。
カセットコンロを使って、この水を沸騰させれば飲むことも出来るかもしれないです(あまり飲みたくないけど)。
マンションって、近年はモータで水を汲み上げている方式が多いらしく、電気が止まると水も出ないんですよね。蛇口から水が出てくる生活に慣れきっていると、めちゃくちゃ困ります。 すぐに困るのがトイレです。トイレの1回の使用で、トイレのタンクに数リットルの水を補充する必要があります。
こんな時のために、毎晩風呂桶に水を張っておくのも、良い手ですね。 また、トイレだけなら、簡易トイレパック(いくつかサイズの袋がセットになっている物もあるみたい)も売っているようなので、それでも良いかも。
●非常食
我が家では、常に缶詰を買ってあります(それも大量に)これは防災用っていうよりも、日頃から缶詰の「さんま」「いわし」を愛食しているからです(笑)。
これがまた、美味しいんですよねぇ~(今回の趣旨に関係ないけど)。缶詰は保存もきくし、最近の缶詰は缶切り不要な缶詰が多いので、缶切りが無くて開封が出来ない! なんて心配も無用です。 フルーツ缶詰なら、水分も豊富(かなり甘いけど)ですから、水分補給にもなるかも。
缶詰でなくても、乾パンなんかの保存食も重宝しそうです。会社ではちゃんと保存食を買っておいてありました(賞味期限が切れていましたけど。 私は中身を食べはしなかったのですが、同僚の何人かは食べてみていました。彼らの感想は、 「ずごく不味い」「パサパサしていて、水が無いと食べられない」
など、かなり不評でした。まあ、平時に食すものでは無いということが良く分かりました。確かに、平時にも食べたくなるような物だったら、いざって時まで残っていないかもしれないですからね。多少は無理しないと食べられないような味で良いのかもしれません(議論の別れるところではあると思いますが)。
●毛布、防寒着
そんなに凍えるような寒さでは無かったのですが、やっぱり暖房が無いと夜は寒いと感じました。なので、毛布や防寒着はちゃんと用意しておくべきですね。自宅で着込んで眠れば、電気を使わずに節電にもなりますから。
会社でも、節電するために空調を切っています。社員は「とにかく着込んで、暖かくして仕事をせよ!」との社の指示もあったことですし。
やれば出来る!を実践しています。
●団らん
これは、事前に用意することが難しいものであるかもしれません。でも、停電で真っ暗になったリビングで、家族が身を寄せ合って、暗闇を乗り切るには、必要なものだと感じました(辺り一帯も停電なので、本当に暗いです)
防災用品として、我が家には1台の手回し式の懐中電灯がありました。手回しで発電し、LEDランプで辺りを照らすタイプのものです。かなり昔に買ったのですが、現役でちゃんと使えました。
手回し式なので、誰かが労力を使って、発電機のハンドルを回す必要があります。
でも、乾電池の入れ替えの必要がないので、思う存分使えます(体力ある限り)。
停電中の数時間は、リビングの中央に家族で集まって、手回し式懐中電灯を交代で回して、発電(発光)していました。
黙って発電(発光)していても、間が持ちません。余計に気分が暗くなるし。自然と会話をするようになります。
真っ暗の中で懐中電灯の灯りだけで、語りあかすなんて。修学旅行の時に、クラスの仲間と布団を頭からかぶって、懐中電灯の灯りの中で語りあかした時以来のことではないでしょうか。真冬に怪談なんて面白くも無いはずなんですが。 普段は忙しくて、あまり会話をしていない妻と、いろいろ話をしました。無邪気に発電機を回したがる子供とも、いろいろ話をしました。
「自分は、1人で生きているんじゃない」
そんな思いを強くした数時間でした(ああ、柄にもなくセンチになってしまいましたね)。
後、1つ用意したいものと言ったら、家族に対する感謝! ですかね。努力しなくても、自然に用意出来ているようにしたいです。