技術者が起業時の営業をWebでうまいことなんとかする方法
起業をするに当たって、技術者が一番困るのは「営業をどうしよう?」ということだと思います。むしろ、これがおそらく、唯一で一番の起業に踏み切れない理由でしょう。
今回は、どのようにすれば、この営業に関してどうにかなるかを、自社商品を作って起業をしようとしている技術者視点で検証してみようと思います。
■営業に困るのは技術者だけではない
実は、なにを隠そう、営業で困っているのは技術者だけではないのです。むしろ、大手の営業も困っています。
とくに、すでにパイプがある大口顧客や資本関係のある顧客がいる場合、そのような顧客に対してアプローチをするのはたしかに大手や中堅企業の場合は非常に有利です。しかし、その企業の営業の方の視点に立つと、社内では「ちゃんと新規の顧客もとってきてくれ」というふうにプレッシャーをかけられて困っていることが非常に多いのです。
「となりの芝生は青く見える」とはよくいったもので、筆者も以前は、「営業は売るスキルがあって、本当にうらやましい」と思っていましたが、よくよく考えてみると、営業の立場に立つと、「技術者は商品が売れないものの場合、どうやったら売れるか分かれば対策を打てるから羨ましい」と思うものです。
■売れないものはやっぱり売れない
今の時代、売れないものはやっぱり売れないのです。そして、筆者がよくいう「売れないものを売ってくるのが営業だ」というのは、半分当たっていて、半分間違っています。
正しくいうならば、「売れなさそうなものを売ってくるのが営業だ」となります。
この、「売れない」というのと「売れなさそう」はまったく違います。「売れなさそう」というのは、販売をする方から見た時の視点で「売れなさそう」であって、商品を買う顧客から見たら「欲しいもの」なのです。
「売れない」というのは、商品を買う立場の人から見て欲しくないものです。なので、売る立場の人間が、「これは売れる」と思って販促にものすごいコストと時間を費やして、たくさん人が集まり、「これは売れるに違いない!」と思っても、集客した顧客が商品は欲しくなくて、おまけの情報提供や名刺交換の機会が欲しいだけの場合は、やっぱり売れません。
営業や販売の経験が少ないうちは、「人が集まる」=「売れる」と勘違いしてしまうことが多いのですが、それは、本来の販売とは別の要因で集まっているケースがかなり多いです。商品が「お金を払ってまで欲しい」と思ってくれる人以外は、余程の理由がなければ購入にはいたりません。
■営業がうまいひとたちが力を入れているポイント
IT業界に限らず、販売がとてもうまい人というのが世の中にいます。もし、出会ったことがなければ、硬派な異業種交流会などに行ってみればすぐに出会えるでしょう。
そのような人は、「技術者が苦手な販促活動」がすごくうまいのかと、技術者で営業経験がない人は思うかもしれませんが、実はそうではありません。どちらかといえばというよりも、完全に商品を発掘したり仕入れをする方に力を入れています。
彼らが欲しがる商品は、次の条件を満たすものです。
- 商品にライバルがいないもの
- 圧倒的に良いもの
- 価格が顧客の予算内で費用対効果で競合より安く、なるべく高いもの
このような商品を発掘するための情報収集を日々、血眼で行っているのです。
なぜならば、売れる商品は他の営業のライバルも欲しがるので、簡単に見つかるものではないからです。そして、彼らがどのように商品を探しているかを分析すれば、そういう方に出会うのは簡単です。
■営業のプロの行動パターンとインターネットの影響
営業のプロの方は、市場調査、とくにマーケティングに力を入れています。情報発信力は、今の時代、インターネットのせいであまり差がつかなくなっていためです。
販売は、ライバルとの競争です。だから、今すでに売れているものでは今の時代、なかなか販売できません。そのためには、「先見性」をもって、時代の変化と共に需要がどのように変化し、まだ、新しく現れた需要のどの部分を競合がアプローチできていないかを必死で見極めるのです。
この見極めには、扱う商品に関する非常に濃厚な現場レベルの知識が必要になります。
つまり、「薄く広くなんでも売ります」というスタンスでは、市場に現れた新しい需用にリーチできません。
だから、業界知識がない人から見ると、そういう商品は「売れそうにない商品」であり、それを売ってくる人を実際に見ると、からくりをしらない人から見ると「売れないものを売ってくるのが営業だ」ということになる。
そして、「できる営業系の人は新しものが好きだ」というのもこのあたりの行動原理から来ている。
■起業家の営業を強力にサポートしてくれる方はこういう人
技術系の起業家にとって、最も必要な活動はR&D(Research and Development)である。そして、「売れる商品」を作るための市場調査をし、それをリアルに作ることがミッションだ。
R&Dの起業家も営業の方と同じように、時代背景や最新の情報収集も日々行う必要がある。そうでなければ売れないものを作ってしまう可能性がある。
では、営業の人に何を期待すればいいのか?
それは、情報収集です。R&Dのチームは、開発のウェイトがやはり高いので情報収集に費やす時間はどうしても開発作業の分減ってしまいます。そして、この情報収集は、やってやり過ぎることはありません。
これは個人的な意見ですが、IT企業が売上の棒線のグラフを書いて営業同士競わせるというのは、もう時代遅れだと思います。
「売上」というのは、「売れるもの」を作れば自然に達成できるものであり、それを作るのはR&Dチームと営業チームの共同作業で成し得た結果であり、売れないのは営業のせいではありません。営業のせいにするのは単なる責任転嫁です。
技術力が他社より圧倒的に優れている技術者が中心の企業であれば、一番大変なのは「売れるもの」が何なのかを見極め、情報収集で裏付けを取る部分であり、この部分で協力できないようであれば、新しいビジネスの開拓に挑戦することは不可能です。
■技術起業家は自社サイトとその内容に力を入れよう
技術系で営業マンといわれる人もいないまま起業する場合には、自社サイトが非常に大事になってきます。
そして、ここで非常に大事なのは、「誰に読んで欲しいか?」です。それがきちんと固まれば、ぶれることがなくなってくるはずです。筆者が考えるに、
- エンドユーザー
- 商品を探している営業担当者
をターゲットにすればいいと思います。
これらは、「顧客」と「パートナー」という位置付けですが、「パートナー」に関しては、実際に「売ってくる営業」「新規開拓を本気に考えている営業」を対象にすれば、実は自社サイトでアピールする内容は、どちらも同じようになってくるのです。
作る内容としては、以下のものが重要になります。
- 時代の変化によって必要になってきたことや発生する問題への共感
- 問題への対応をしているということ
- ダウンロード形式の資料請求フォーム
最も重要なのは、時代が変化したからこそ起きている問題に対して、きちんと認識していますという内容が非常に大事です。
なぜならば、この問題に関して、自社サイトにアクセスしてくれている顧客側の視点に立つと、唯一もしくは数少ない解決策の1つになっている可能性が高いからです。
そういう状況では、資料請求をしてくれる可能性も高く、そして、資料請求をしてくれた顧客に対してアプローチをすれば、話ができる機会を作れる可能性も高くなります。
そして、その顧客との接触こそが最高の情報収集になります。
■集客ははじめは広めのターゲットで
「集客のターゲットをどこにするか?」というのも実は重要な問題だが、これは、考えるよりも実際にやってみるのがいいでしょう。
一番にやってはいけないことは、「わたしの仮説は正しい!なぜならば、これで人がたくさん集まるからだ」といって、実際の顧客がどのような人や企業になるのかを検証されていない段階でターゲットを絞りすぎてしまうことです。
これをやってしまうと、ターゲットが外れた場合、商品の購入にはまったく関係なく、その他の理由で集まる人ばかりになってしまいます。そして、ターゲットというのはIT商品の場合には企業規模や業種など点在しており、一発で当てるのはかなり難しいので大抵の場合は外してしまうことが多いです。
初期の段階では、検索エンジンなどの、現在検証対象のターゲットで商品に興味がありそうな人がわりと幅広く来てくれるものを選ぶべきです。
そこから、実験しながら費用対効果が良いものに絞ったりしていくことが重要です。
自社サイトの宣伝に関しては、特化した内容に関してテキストで多めに書いておき、今の時代、プレスリリースのようなサービスで1万円くらいのものがたくさんありますから、そのようなサービスを利用すれば、外部リンクを多く獲得でき、初期のseoで問い合わせが来るレベルまで持っていくことが可能です(自社で検証済み)。
また、それだけでは、こころもとないという場合には、キーワード広告や、自社のサービスに特化したメディアなどを利用してみると効率が良くなります。
■情報収集をする機会が作れるかどうかが鍵
起業における「営業力」という課題に関しては、この、「情報収集」が非常に重要であり、問題の本質になります。情報収集がきちんとできていれば、技術者の場合は、商品は作れるわけですから、わりとなんとかなるものです。
何かITで商品を持って起業しようと考えている方は、作る前もしくは作りながら、「どのように情報収集し、売れる方向にもっていくか」という事業計画の柱の部分を計算しながら作業をすすめると、かなり具体的なイメージが湧いてくるでしょう。