会議を改善する前に「議論」を改革しよう
日本でも、海外でも、「会議」というものの有効性に関してはいつも話題になるのが常です。
しかし、日本に関しては、会議の有効性を解決しようとしていろいろと工夫しても効果が出ないことが非常に多いのではないかと思います。
そうしたときに考えるのが、「もっと会議以前に改善することがないだろうか」ということです。
■アメリカでは、子供のころから「自己主張と表現力」が鍛えられる
ここのところ、ほとんどテレビは見なくなってしまったのだが、たまたまテレビがついているときに、海外から日本に来たタレントが次のようなことを言いました。
アメリカでは、子供のころから自己主張と表現力を徹底的に叩き込まれる。
アメリカで優秀な子は自己主張と表現が優秀な子で、日本のようにただ単にテストが優秀な子というのとはまったくちがう
本当にそのとおりだと思います。
アメリカ人が日本人を見る目というのは、かなり人によっては独特なものがあるが、このひと言がその根本的な象徴のように感じた。
■真逆を行く日本とアメリカの教育の目的
そもそも、日本に生まれて日本の学校を出ると、日本がいわゆる「普通」のように感じます。しかし、外資系で外国人ばかりの会社に入ると、日本の偏りが分かります。
そうなのだ、日本は偏っているのだ。この自覚がないと、これからは日本人は生きていけな時代に移り変わってきています。
日本人の教育は、
- 言われたことを忠実にこなす
- 指示されたやり方に対して文句を言わない
- 理不尽なことを受け入れることが偉い
- そして、年下の人間に同じ文化を再帰的に強いる
ということに特化しているように思えます。
IT業界で下請けのスタンスを取るSIが多いのも、元をいえばこういう小学校からの教育の結果かもしれないと思い出しました。
一方、アメリカの教育の目的は、「やるべきこと」を考える方に重点を置いています。
だからといって、現場重視というわけではない。「こうすべきだ」という主張を表現するときに、その根拠をしっかりと盛り込まなくてはなりません。
そのためにリアルな現場の教育や技術の習得が必要なのです。
日本でも作業をする人は決して方法を評価する能力がないわけではありません。まわりの空気を読んで、役職や立ち位置の関係上本当のことを言えない状況にあり、表現する機会を失っているだけで、実際のところはきちんと理解しています。
なので、なおさら、アメリカであれば、作業者も小さいころからこのような教育を受けているわけであり、ダメなリーダーに対しては容赦なく非難が浴びせられるのです。
■戦略の失敗は戦術では取り返せない
何でもそうだが、「戦略の失敗は戦術では取り返せない」。
今の日本のIT業界で一番技術者がモチベーションが落ちるのはここではないでしょうか。
今の方法がダメなことも分かっている、もっと良い方法があることも分かっています。でも、それを言ってしまうと、上の立場の人の立場がなくなってしまい、それを周りの空気が「協調性のない人間」と自己主張をした人に対して浴びせるような幻想を作り出す……。
それが、技術者が分かっていても言えない理由になっていて、どんどん悪循環にはまっていくのです。
当然、そうすると、発注した企業も元請けも下請けも最終的には良い結果にはなりません。
技術者が頑張って挽回しようにも保身で「まあまあ」と言っている人がきちんと実になるように仕事をしなくては解決できない問題はあります。
そして、問題がたまりにたまって最終的には政治決着というのが、いわば最悪のパターンの定石になっています。
確かに、最終的に責任を取るのはリーダーだ。「まあまあ」と言った分だけ最終的にいろいろなものが返ってくるのです。
なので、一度痛い目を見たリーダーは、同じことを繰り返したくないので、工夫を一生懸命します。
ですが、「オフショアはだめだったから日本人にしよう」とか「現場への締め付けが緩すぎたから常駐を要求しよう」などといった戦術になってしまいます。
戦術だけでは根本的な失敗をカバーできません。
大抵、このような場合は、「失敗した理由は、各工程でやっておくべきことができていなかった。その理由は、開発の前段階で作業の評価をできる人がいなかったからだから、予算配分と時間のかけかたを変えてみよう」というような戦略的な見直しが必要になります。
これをやらないで「同じ失敗は二度としない」などと言っても、結局は下請けに責任をなすり付けたり、ただ単に態度がなあなあになるのをやめたり、見かけは変わりますがやっていることの本質は変わっておらず、同じような失敗をします。
■議論の目的とは
こうした、戦略を決めるときこそ、本来は議論をすべきときです。
議論の目的は、「ただ単に自分の言っていることを通す」ことではありません。
具体的には、「違った視点で自分の主張を評価してもらい、自分だけでは気付けなかった問題を把握し、協力者が自分のやりたいことに協力できる戦略を作る」ということです。
ここで、きちんと、政治的関係や雇用関係などの束縛がなくても、お互いの利益と目標を合わせてWin-Winな状態が作れることが議論の真の目的です。
この習慣を付けておけば、普通はお金が掛かるものでも、自分も相手も得をしながら小資本でいろいろとできてしまいます。
小資本での起業が良いという理由の1つには、お互いが本音を言ってWin-Winになれる人を徹底的に探さなくてはならないというのがあると思います。
逆に、自分がお金を払って何かを頼む際の議論では、相手がきちんと本音を言ってくれるように工夫しなくてはなりません。
相手の作業がはかどれば、その分、自分にも返ってきます。
また、このときの議論で、相手がビジネス上の目的を隠してしまう場合には注意が必要です。
議論とは、付き合う相手を選ぶときにも非常に重宝します。
■都合の悪い情報に対する言論封鎖は「無能宣言」
古い営業の言葉で、「売れないものを売ってくるのが営業だ」というものがあります。
これを、本音ベースで解釈すると、「顧客に対してデメリットとか他の製品の商品の情報は隠して、良いところだけ言って買うように仕向けろ」ということになります。
しかし、これは、インターネット社会では通用しないと思います。
なぜならば、顧客が本気で探す気があるならば、ネット上でいくらでも競合商品を探すことができるからです。
議論の目的は、見せかけを変えることではありません。実体を変えるためにどうすればよいかの戦略を考えることが重要です。
そして、都合の悪いことから順番に議論を出すことが重要です。
都合の悪いことほど、後から出てきたときに、今までに議論が無駄になる可能性が高いうえに、解決したときのインパクトは非常に大きいです。
むしろ、本当のブレイクスルーはこのような本当に嫌で嫌で仕方がない問題を見て見ぬふりしないときに生まれるものです。
もちろん、ITの案件などでは実現できる内容には制限も当然あるので、すべてが解決できるわけではありませんが、デメリットをきちんと理解し、次善の策としての対処法を実行しているという認識は非常に重要です。
逆に、都合の悪いことを見て見ぬふりをしてしまうことは、「無能宣言」です。
本当に都合の悪いことは、他は解決できることである場合が多いものです。なぜならば、他で対処できるのに自分たちはできないから、決定的に「都合が悪い」のです。
さらに、これを改善することすら放棄してしまうとなると、もう、その先どうなるかは大体予想がつきます。
■議論は違った立場の人たちと少人数で早い段階に
ITのプロジェクトをどのように推進するかという議論をするときには、早い段階でいかに問題を発見できるかにつきます。
プロジェクトが進んだ段階では、かかわる人数も増え、利害関係がさらに複雑化し、利害関係が理由で都合の悪いことを分かっていても放置せざるを得ない状況になります。
日本のプロジェクトでは、最初の段階で、現場のプログラマの人が上流でかかわることが少ないと思います。
実は、筆者はここが大きな問題だと感じています。理由としては、運用設計や要件定義のときに、決定を早くしなくてはいけないものがプログラマがいれば分かるので、決定すべき事柄の優先順位をより正確に付けられるからです。
ITのプロジェクトでは、特に、作業の順番が効率を大きく左右するので、上流工程の議論においても下流まで見通して計画が立てられるようにすべきです。
下流まで早い段階で作業が見積もれていれば、しっかりと予算の使い方も立てられるはずです。
そして、良い予算編成が組めたときには、訳の分からない利害関係が非常に少なくなるので、物事がスムーズに運べます。
何事も最初が肝心なのです。
もし、ITの案件ならまだしも、ビジネスプランでこれができないと、「ビジネスプランに致命的な欠陥があるが、もう、ここまでやってしまったから撤退できない。でも、改善もできないし効果的なモデルへの転換も無理だけだから、表現方法を磨こう」ということになってしまいます。
■技術者を上流に参加させよう
「上流だからまだ、技術者は必要ない」という考えを一度やめて、開発力がある技術者を上流の議論に最初から参加させるということが、今の日本のIT業界では必要です。
技術者は、自己主張やきちんとした表現ができないわけではなく、すでに、しがらみだらけで表現する機会がないようなところから参加することが多いので、本来持っているはずの論理的思考を発揮する機会がないのだと思います。
きちんと、しがらみのない議論の場に技術者や下流の仕事をする人にも参加してもらうことで、たくさんの問題が提案されると思います。
人によっては「話が進まなくなる」と思うかもしれませんが、きちんと問題に優先順位を付けて議論すれば、今、本当に先に進める前に片付けるべき問題もあきらかになるはずです。
また、ビジネスでも、技術者を参加させることによって、自社の技術上の強みが分かれば、優位に進められるマーケティングプランが出てきます。
今はもう、IT業界は実力で戦わなくてはいけない時代です。
本気で勝負するには、日本でもビジネスのリーダーシップを取る人間が、現場の意見にさらされることを覚悟のうえで、自分のプランのために働いてくれる人たちともきちんとした議論をする機会を作るべきではないでしょうか?
会議の改善は、次のステップであり、きちんとした議論ができる習慣ができれば無駄な会議も自然に減るものだと思います。