第6回:マネジメント基盤構築へのハードルを探る
では、マネジメントアプローチからの視点で、数々の影響度を考察したい。
上記のIR例を参考にしてほしい。セグメント別の売上と利益、そして主要商品・サービスの主な事業ドメイン会社・グループ会社が開示されている。
同様にCSR(企業の社会的責任)も、上場会社であれば取り組みを開示している。ここで注目したいのは、計数値の開示度合いが「企業力」の一部であるということだ。「環境マネジメント」に関する情報もしかりである。「環境会計(※1)」も含め、同業他社と比較すると面白いと思う。
※1:環境保全活動のコストや効果を定量的に把握するための手法。環境対策のコストと、省エネ効果など実益のバランスを取る意思決定に役立てる。
以上の開示データを用いて、全体業務プロセスが整合性・網羅性・正確性・正当性を持って効率的に収集する仕掛けを持つか、あるべきマネジメントを支援する情報基盤構築とはどのようなものかを検討したい。製造業を対象としていることをご了解願いたい。
生産管理業務のコアは自主自立の部品表(BOM:Bill of Materials)にある。部品表の存在意義はこれだ。部品表は、エンジニアリングチェーンとサプライチェーン内において、会社の“DNA”となる基準情報を持つ役割を持つ(下図)。 以下にBOMの3つの役割を定義した。ここで、基準情報が一貫してBOMに登録されているか検証する必要がある。
- 製造業が必要とする最新基準情報を一元管理するデータ群(図面含む)であること
- そのデータ品質は、社内・社外とのコミュニケーション手段として使用できること
- 企業全体の「見える化」につながり、「CA→PDCA」サイクルの迅速化に役立つこと
この基準情報であるBOMは、第3回で記した「トランザクションデータから自動仕訳データ作成」プロセスにて、重要な役割を果たす。仕訳データには、下図の5W3Hの情報を網羅すべきと考えている。
基準情報としてのBOMには、事業セグメントを定義する品番と品種などや、地域セグメントを定義する部門、科目を定義する摘要がある。操業度がIFRSの1つの指標となることにより、どの設備を使用して生産したのか、履歴が分かる実績データも必要となる。単なる出来高収集ではデータの網羅性に欠ける。「Where」とは、どこの工場のどのラインまたは設備であるかということだ。ここで、生産管理用語で言うところの「作業区と工程」を定義する必要がある。
また、「エンジアリングチェーン」「サプライチェーン」の各プロセスにて発生する「人・モノ・金」の動きをとらえる必要がある。
IFRSを整合性・網羅性・正確性・正当性を持って効率的に実現するにあたり、グローバルに展開している既存システムと、新たに構築すべき仕組みが混在しているのが悩みどころだ。特に、どの企業も既存システムは拠点単位で「バラバラのシステム」であることが、大きなイシューであると思う。
ここで、第2回で提言した「クロスファンクション活動」と「ヘッドクォータ」による組織革新のコンセプトが必要とされるのではないかと思う。
◆文化を統合する仕掛け
- 同一の業務をあるべき業務プロセスに標準化する。時間やコストにて無理な場合は、既存のベターな仕組みに統一する
- ここで『同じツールを使用することで悩みを共有』『ノウハウを共有』
◆IT組織革新がなければ意味がない
- はじめに組織統合する
- それぞれのアプリケーションを理解し、課題・ノウハウなどを共有化する
- ビジネスユニット(拠点)ごとの組織から、あるべき業務プロセスの横軸を見渡すヘッドクォータ組織へ変革する
※「第2回:グローバル最適につながるヘッドクォータの役割」を参照のこと。
以上、IT組織革新に触れた。次はバリューチェーンを深堀したい。