ヒットコラボ代表。地頭力にて、IFRSを業務視点より考察する。

第7回:エンジニアリングチェーンとグローバルサプライチェーン

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■グローバル組織視点で考える『エンジニアリングチェーン』

 このチェーンは業務プロセスの上流であり、商品企画から始まる。従って、プロジェクトの目的(当然、企業秘密が存在するから抽象的な表現になると思う)単位に集計しなければならない。

 次に、実際の製品となって量産されるものまたは出荷後の保守またはクレーム対応などは、設計段階から事業セグメントが明確に定義できるコードを属性として設定する必要がある。

 エンジニアリングチェーンでよく提案されるPLMまたPDMソリューションでは、プロジェクト管理が包含されている。これは、プロジェクト単位にWBSを定義し、エンジニアの成果物とリンクし、進ちょく管理する仕組みになっている。従って、プロジェクト管理システムより実績データを連携すれば、IFRSのためだけに実績登録するのではなく、プロジェクト管理がメインであることは、運用者にとって抵抗がない。IFRSと縁遠いエンジニアに対して「IFRSのために登録して……」と誰がいえようか。

 さらに、グローバル展開している企業では、同一プロジェクトに国内だけでなく、海外のエンジニアとの協働作業が当たり前になってきている。その中で仕組みはグローバルに統一化されていなければ意味がない。すなわち、コラボレーションツールとして、仕組みが位置付けされるべきである。

 話が少し横道に入るが、製品群単位に設計から生産準備ならびに保守実績がとらえられる。すると、製品設計から生産、そして保守に至る売上と費用が管理される。従って、製品ライフサイクルに至る損益が見え、本当にその製品がもうかったか否か、把握が可能となる。

 IFRSにおいて、とらえる基準を真剣に考えるとき、間接コストの配賦うんぬんの話は必要になる。ここに、管理会計の概念やABC管理の登場となると思う。直接工数など正確にとらえなければならないが、現実の計数データは結構あいまいになり、予算管理とはいえない事態が多くないかと思う。

 極論をいえば、外注費や設備購入費等だけが予算管理の対象ではないことは百も承知だが。

■グローバル化の中でよりローカル化が必要となる『グローバルサプライチェーン』

 自動車産業で、トヨタが中国に開発拠点を持つというニュースが最近報道された。より中国を意識した車を開発するためであることは誰でも分かる。開発エンジニアから品質管理に至るプロセスを現地で行うことで、サプライチェーンは、より現地サプライヤーとの取引が多くなる。先に、仕組みの統合化を触れた。統合化しなければ仕組みを高い位置で維持できなくなる中で、ローカル色を取り入れる必要がある。矛盾した展開になるが『単純に抽象化』して仕組みを検討することを勧める。

 仕組みは全体最適でなければならないとよくいわれる。それは、ただ個別のプロセスを重視しすぎたためや、他プロセスを手抜きしたことで、全体の業務プロセスがアンバランスになっていることを指すと思う。ただ、運用者に取って、コンセプトは間違っていなくとも「使い勝手が悪い仕組み」は、ダメな仕組みと思う。

 ここで、製造BOM構造の標準化は必須であるが、見かけの画面や帳票はローカル色豊かでもよい。ただ、とらえるデータは標準化されたFORMAT+ローカルデータとなるのが理想的な姿と思われる。

 結論からいうと、BOMをコアとする基準情報とトランザクションデータFORMATはグローバル標準とし、見かけを現地化する。

 話を戻すが、グローバルサプライチェーンの狙いは、工場間、サプライヤー間の最適調達を実現することにある。それは、輸送費や関税も含む原価企画とPDCAを回すための実際原価計算を行い、差額の検証を図ることにある。そして、そのコスト情報と各拠点の生産計画とシンクロさせるといった大技である。

 原価計算のビジネスロジックとそのインプットデータの統一化をしなければ、拠点間の比較ができないばかりか、整合性の欠ける報告になってしまう。原価計算のジャンルでは償却費計算が話題になるが、根本になるデータのとらえ方があいまいになっては元の子もない。

 業務サイドから見れば、日々の業務の問題と会計処理は切り離して考えたいのが本音と思う。例えば、単なる会計部門内の仕訳方法に関する話題は、あまりり興味はないと思う従って、業務システムのあるべき姿について、何か(WhatとWhy)を深堀しないといけない。業務システムに関係するスタッフと会計部門のスタッフはどちらが多いのだろうか? 答えは明白である。

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