ヒットコラボ代表。地頭力にて、IFRSを業務視点より考察する。

まとめ:グローバル製造企業の業務プロセスと情報基盤構築(2)

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 上の図では、「現場の事実掌握」するインフラが構築されていなければ、「KPI」の説得力・納得性が得られず、経営との連携も砂上の楼閣になることを示している。

 経営層と現場の間には、コミュニケーション上のギャップが存在するケースが多い。原因の1つとして、経営者は結果の数字(損益)で語るが、その元となっている数字の根拠がない状態で現場は定性的・主観的・突発的な話題で話してしまうということが挙げられる。それゆえ、精神論が先行する数字遊びにだってなりかねない。こうした状況を防ぐためには、リアルな情報を基盤とし、客観的な数字を、経営者と現場が共有化しなければならない。 

 

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 業務プロセスは進化する中、仕組みも同時進行で進化する必要がある。ITプロセスの改修などをアジャイルに実装するために、SOAに期待できるところは大きい。

 あるべきビジネスモデルの変化に合わせ、マネジメントは朝令暮改的であってもよい。納得性があればよいのである。ITを維持管理するシステム管理者の役割も変化しなければならない。単に、セキュリティや運用トラブルを回避するといったこともあるが、クラウド化やさまざまなツール群が充実している中で、システム管理者は仕組みの管理者として、ユーザーに分かりやすい存在力を持たなければならない。 

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 リードタイム短縮などグローバルKPIマネジメントを推進するためには、横串のプロダクト中心の情報管理を推進すること、前工程の情報を可視化するITマネジメントが必要である。

 グローバルSCMによるグローバル最適化を図る基盤としては、部品表をコアとしたマスタ情報の一元管理が必要だ。これは、避けて通れない課題である。

 そのためには、マスタデータに対するガバナンス力が必要だ。事業や地域セグメント区分はもとより、品番体系や品目区分、品種区分などについて、標準化と一元管理が必要であり、システム化を図る現地エンジニアやPMに対するガバナンスを徹底しておく必要がある。と同時に、全体を見ながら素早い判断と決定ができるヘッドクォータの役割がポイントである。

 だが、マスタ情報の一元管理ができたからといって、グローバル最適化を図ることができるわけではない。古くなったシステムや継ぎはぎだらけのシステムを統合化しなければ、コストパフォーマンスは出ない。統合化にあたって、ビジネスモデルの再編や業務のリデザインを行うようになるだろう。
 経営戦略からビジネスモデル立案し、それを業務ブロセスデサインに落とし、ITへのブレイクダウンへのプロセスを行うクロスファンクショナルな特攻Aチームが必要になるだろう。

 

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 上記は、PDCAサイクルについて、加速度を持って行うプロセスを定義した図である。

 当プロセスを大きなサイクルとして見て、異常確認から原因と応急対策ステップを考えると、異常確認ができる仕組みがなことに気付くだろう。

 例えば、リードタイムをKPIとするが、生産リードタイムを客観的に測る仕組みが存在しないにもかかわらず、システム化にまい進してしまう。これは、物差しを持たずに、適当に「~だろう」といった評価をすることに等しい。そうではなく、システムのリデザインをする前に物差しがなければ、まず物差しを仕組化することを考えるべきである。

 もっとも、これは実態を図る仕組化を実現し、正しくかつ公平に把握した後で、ITのデザインを行ってもいいのではないかと思う。個別最適化にありがちな、声の大きいところから始めるのではなく、急がば廻れのスタンスである。

■業務改革ビジネスモデリングについて

 本コラムでは、「IFRS対応と業務改革とシンクロすべき」と一貫して述べてきた。水平分業の中、SCM(生産管理)のみでなく、エンジニアリングチェーンの確立が必須である。

 SCMのみの情報基盤は片足飛行であり、十分な推進力が得られない。多くの製造業において、エンジニアリングチェーンのIT化は構築されておらず、エンジニアは深夜まで仕事をしているのが実態である。

 製造業のコアコンピタンスである「商品の競争力」を左右する製品情報が作られる商品企画から設計に関わる業務は、CADは導入されている。しかし、その周辺業務を補完し、製造や品質部門、外部サプライヤへの発注や技術情報の連携作業はあくまで人海戦術であり、必要な製品情報が共有化される基盤がほとんどない実態である。

 仕組みの水平展開は、エンジニアリング部門の仕組みも同様であると言いたい。

 下図に、グローバルなコラボレーション環境のイメージ図を示したが、その中にあるグローバルベースの技術情報データベースの構築が必要である。

 

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 下図は、モデリング作業が業務改革とリンクしたIFRSの実現の図である。ここでは、ステークホルダ(利害関係者)との合意形成が欠かせないが、ITガバナンス力とは何かを定義することが最初の一歩と思えてならない。以下のURLは、「ITガバナンス」を客観的に解説している。

経済産業省:IT経営ポータル

  その中で、CIOを中心としたトップダウンの仕掛けが必須である。さもなければ、「船頭多くて……」となる結末が待ち受けているかもしれない。政治と同様、結果に結びつかない議論ばかりで、スピード感ゼロのIT運営になってほしくない。

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