ヒットコラボ代表。地頭力にて、IFRSを業務視点より考察する。

第11回 グローバル最適とITガバナンス力

»
 

 グローバルベースのガバナンス力がIFRSを、そしてグローバル最適化のシナリオを成功に導くだろう。

 連結財務諸表に影響を及ぼす償却資産や研究開発費など現地に密着したコストの捉え方やセグメントなど、業務プロセスと判断基準を標準化していない企業は多くの試練があるのではないだろうか? これは、グループ経営そのものの情報基盤を脆弱化してしまいかねない。経営者は、グローバルベースで、「情報システム力」と「ITガバナンス力≒IT運用力」を検証しておく必要がある。

 情報システム力は、IT企画力や開発力だ。ITガバナンス力とは、現地への説得や調整力また展開時の定着力になるガバナンス力があることだ。

 プロジェクトが本格稼働する前に、これらをチェックする必要がある。転ばぬ先の杖である。

 今までの個別プロジェクトでは、できるスタッフは個別プロジェクトに重点的に配置されていたかもしれないが、(急速な)グローバル展開の中では困難な状況に陥るかもしれない。

 従って、プロジェクトのスキーム作りは、慎重かつ先見性が要求される。ドタバタした時に、適材人材がどこにもいないなんてことがないようにしたい。

 また、IFRSは「原則主義」であるから、会社としての基準が明確に決まっていない状態から、基準を作り込んでいかなければならない。そんとあめ、現場単位、現地単位でローカルな課題をクリアしていくプロセスが要求される。

 仕組みが円滑に廻るあるべき姿は以下の3つある。

  1. 柔軟な仕組み:変化する業務とITプロセスが乖離していない
  2. 使いやすい仕組み:BIツール連携・PDCAへの仕掛けがある
  3. 堅牢な仕組み:セキュリテイ・内部統制機能が満足している

 いずれにせよ、ポイントは「全体を鳥瞰し、意思決定がスピード感をもってできる体制づくり」にある。その情報基盤の仕掛けは何か、IFRS向けに、改めて仮説設定を行ってみよう。

■柔軟な仕組み

  例えば、開示セグメントの実績データ集計ロジックを例に取って考えてみる。収集された1件1件の生データは、IFRS用また個別決算用の仕訳データが作成される前に、ある(1つではない)集計単位に集計したデータに展開する事になると思う。

 「原価積み上げ」を想像すれば、分かりやすい。例えば、ある材料また部品の海外工場セグメント最小単位から、国内の仕掛品セグメントへ積み上げられ、親会社の製品セグメントへ積み上げられるイメージである。

 次に、部品表の構成をイメージしてほしい。 

 最終的に、財務諸表に表現される開示セグメント科目を製品として、中間部品、仕掛品、部品、材料と構成を定義している。
生データは「材料」と捉える。 そして、その材料は共通材料から共通部品として積み上げられる。これらは管理単位の変化に合わせて、構成を変化させればよい。こうすれば、集計レベルが変化してもシステムを変更する必要がなく、構成登録にて縦横に対応できる。

 その仕組みを管理者レベルから担当者まで浸透させることができれば、IFRSの考え方の変化があっても、容易に対応できる。

 IFRS基準の変化があっても、生データが正確に捉えられる仕組みが必要だ。 その中に、前のコラムにて表現した摘要が明確に、正確に定義されていればよい。摘要レベルは、生々しいものであり、仕訳とは関係なく正確に定義できるはずである。

 もう一方、積み上げ方式の表現をすれば、摘要を集計する最小単位と捉え、その摘要がどの集計単位に集計するか、定義するマスタが構成マスタとして理解してもよい。

■使いやすい仕組み

  ここでは、業務システム内のエントリーレベルの話ではない。登録された生データが、管理レベルで問題なく運用されているか否か……ということが現場で即判断できることが必要である。

 これは、集計するための構成マスタや摘要が正しく登録されているか、そして検証できる仕掛けがあるか否かがポイントとなる。

 「月を締めてから、マスタ上の設定が間違っていた」なんて話は、どこでも転がっている。とくに
、データ登録する人とそのデータを活用する後工程処理が、バッチ的(締め単位)な運用のケースによくある話だ。別の言い方をすれば、データを登録する人、マスタをメンテする人、データを活用する人が、バラバラであることがそもそもの諸悪の根源であるかもしれない。

 IFRSの財務諸表が出力される単位は、月単位である。 従って、月を締めないと課題が見えないのでは、問題だ。結論からいうと「日々決算」の実現である。

 償却費など、そもそものデータが月単位のデータや配賦処理が必要なものを除き、日々決算処理を実施し、KPIをグラフ化すれば使える仕組みとして仕掛けができる。そして、グローバルSCMもその点が求められている。

 月半ばに問題が判明しても、マスタを修正するだけでよい。しょせん、バッチ処理であるから、再処理が非常に容易である。また、日々の作業で精度向上を図っているため、月末締め後に「アタフタ」することがなくなる。そして、情報品質とは何か、改めて考えてみるべきである。 

 使えない仕組み、使いにくい仕組みと思っている運用部門は、マスタ情報の精度に起因しているケースがないかどうか、一度精査すべきである。そして、マスタ情報精度を高める仕組みがあるか、改めて問い直すことから始めるべきである。

 結構、システムの問題としていたものが、問題の主要因は運用であるケースは数多く存在する。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する