書籍「『感染症パニック』を防げ! リスク・コミュニケーション入門」を読んでみた。『パニック』と向き合い、『正しく恐れる』ためには?【第23回】
ありがとうございます。平岡麻奈です。ほんの数週間の間でも、状況は瞬く間に変化しています。当たり前としていたことが通用しなくなっていたり、行き着く先が分からない不安は、私達の気持ちを揺さぶり続けます。『目的を明確にして、そこに向かって努力する』というような、最終地点が明らかであることが、どれほどまでに有り難く、『努力しやすい』環境であったかと思い知らされます。売上を〇〇円まで伸ばそう!その為には、〇〇を改善して、みんなで話し合い、取り組んで、チームワークを大切に!、と過ごしていた時間が名残惜しく感じてしまうばかりです。会議なんて面倒だなとか、今安定して売上があるから別に話し合うことも無いんじゃない?と、疎かにしていたことでも、今は進んで自らやっていきたい気持ちがうずうずしている。そして、離れていてもつながりを持っていたいという気持ちが、日に日に増している頃ではないでしょうか。
原因が目に見えなくて、けれどそれが原因で状況が悪化している。避けるにも避けられない、避ける為には『動かない』。これが正しい策であることに間違いはないのですが、つい最近まで沢山『動いていた』からこそ、今の現状を受け止めきれなかったり、『今からどうなってしまうのだろう』と動かずしても不安になります。そして、色々な情報が行き交うと、新しい情報に敏感になりつつも、人は『パニック』になります。情報は瞬時に拡散され、更に『パニック』を起こします。『冷静に行動してください』とアナウンスを受けても、例えばスーパーで商品が少ししか陳列していない棚を見れば『買っておかないと』という心理が働くかもしれません。ダメだと分かっていても、先行きが不安であれば、なにか行動をしていたいという気持ちになります。今の私達に大切なことは『正しく恐れて、パニックにならないように行動』することだと思います。エンジニアライフコラム「平岡麻奈のちょっと一息」の第23回は、「パニック」と向き合う1冊を紹介します。
「感染症パニック」を防げ!
リスク・コミュニケーション入門
【著】岩田 健太郎
https://www.amazon.co.jp/dp/433403828X/
「リスクに対峙するときは、リスクそのもの『だけ』を扱っているのでは不十分です。リスクの周辺にあるものに配慮し、効果的なコミュニケーションをとることが大事になります。」
(第1章 リスク・コミュニケーション入門 P.26)
リスクにはコミュニケーションが非常に大きな影響を与えます。そのコミュニケーションひとつで、安心感を覚えるか、またはパニックを起こしてしまいます。リスク・コミュニケーションとは、「テクニカル・コミュニケーション」の一種とされます。テクニカル・コミュニケーションとは、科学や技術(テクノロジー)に関する情報についてのコミュニケーションを表します。目的は「情報伝達・教育あるいは説得」とあり、効果的なリスク時のコミュニケーション=リスク・コミュニケーションこそ、「リスクそのものを減らしたり、リスクに付随するパニックを回避するのに有効」と示されています。
コミュニケーションの難しい部分は、「相手あって」初めて成し得るものである為、一方的にならずに双方向の「対話」が重要になります。本書では、実際にコミュニケーションを行う上で失敗してしまう要素を取り上げ、分かりやすく解説しています。また、その中でも『感染症』に関する知識もふんだんに盛り込まれていますので、今ニュースでよく聞くフレーズも度々登場します。その為、「あのニュースはこういうことだったのか!」とひらめく箇所も沢山ありました。第1章では、リスク・コミュニケーション入門として、『正しく恐れる』為の心構えを学び、第2章では、実際に発生した『感染症』を題材として、『正しく恐れる実践編』としてまとめられています。本書ではあらゆる『感染症』について取り上げており、実際にその当時に発生した『感染症』による人々の『パニック』を解析し、『正しく恐れる』ことの重要性を伝えています。また、過去の『感染症』がどのように発生し、収束したかまで解説していますので、今回のコロナウイルス感染により、『感染症』自体を勉強されたい方にもおすすめです。
「現在は起きていない、しかし将来には起きるかもしれないリスクについて、人は『関係ない』と思いたがる傾向にあります。」(第1章 リスク・コミュニケーション入門 P.151)
自分自身にも思い当たることがあります。ことの大きさを理解していない時の行動というものは、身勝手であり、そして「自分には関係のないこと」と「自分」で決めてしまっている場合が多いのではないでしょうか。それとは反対に、深い関係があり、かつ重要性の高いリスクに対しては深刻に受け止めます。ニュースを見ているだけでは実感出来なかったけれど、親しい友人が『感染症』になり初めて身近に感じた、というように、リスクの受け取り方は、「関係性と重要性」の兼ね合いにより様々です。「関係性も重要性も低い」状態であれば、どこか遠い場所が起こっているような気持ちになります。正しく認識されておらず、重要性を低く見積もってしまっている状態であれば、その認識を改めなければいけません。その際にリスク・コミュニケーションが大いに役立ちます。
「言葉というのは、発している方と受け止めている方が同じことを解釈しているとは限りません。私のいう『抗生物質』と、あなたのいう『抗生物質』は、厳密には同じことを言っていません。しかし、それでもなんとなくお互い察しながら、気遣いながら、対話はたいてい成立するのです。これが哲学者のウィトゲンシュタインがいう『言語ゲーム』というものでしょう。」(第1章 リスク・コミュニケーション入門 P.187)
ひとつの言葉においても、受け手側の認識は様々であることを示しています。また、その受け取り方の「違い」を理解することこそコミュニケーションが円滑になることであり、「自分の中の常識」を相手に当てはめようとすることは、コミュニケーションとしては成り立たないことを伝えています。
人は何故『パニック』になるのか。ニュースで見受ける買い占め報道や、実際に品切れの棚を見るたびに考えてしまいます。実際に、物資が必要な状況もあるとは思います。それとは別に、「買い占めなくてもいいですよ」というアナウンスが流れていても買い占めたくなる心理が働くところに、大きな情報に対する溝があり、核となるコミュニケーションの欠落を感じます。『パニック』を起こせば、本来目を向けなければいけない部分が遠ざかってしまうようにさえ感じます。ぜひ本書をきっかけに『パニック』と向き合い、『正しく恐れる』大切さを学んでみてはいかがでしょうか。
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