Kindleユーザーに贈るバッドノウハウ
前回のコラム「やっぱりKindle Paper Whiteが好き!」では、E-InkディスプレイのKindle端末をほめましたが、あまり気に入っていないところもあります。また、必要に迫られて渋々実践している「バッドノウハウ」もあります。
筆者の理解ではバッドノウハウはワークアラウンド(回避策)であり、一般性がないので、本コラムでも公開講座でも基本的に避けてきました。とは言え、知っておいた方が便利なものもありますので、今回のコラムで取り上げることにしました。このコラムがKindleを取り巻く環境などの改善に少しでもつながることを希望してやみません。
■URL書き換え定理!
日米Amazonで販売している商品は、商品URLのドメインを書き換えることで他のサイトにアクセスできる。
具体的には、「co.jp」と「com」を相互に書き換えます。
(例)http://www.amazon.co.jp/dp/B00E7ICA7W → http://www.amazon.com/dp/B00E7ICA7W
これは証明できないので、本来は定理ではなく予想なのでしょうが、きっと「仕様である。Q.E.D.」というオチです :-)
さて、この定理から直ちに以下の系が導かれます。
系1. Amazon.co.jpの商品URLを書き換え、Amazon.comのカスタマーレビューを読むことができる。
これは、洋書を買う際によく使っていたバッドノウハウです。現在は、Amazon.co.jpの商品情報でAmazon.comのカスタマーレビューを読むことができますが(ただし本機能はβ版扱い)、以前はそうではありませんでした。洋書のレビューは、Amazon.co.jpにはほとんどと言ってよいほどありませんので、このバッドノウハウは重宝していました。
■Kindle本の「なか見!検索」
系2. Amazon.co.jpのKindle本のURLを書き換えることにより、「なか見!検索」(Look Inside)を利用できる。
系2は、実用上、Kindleユーザーには大変重要な「バッドノウハウ」です。なぜなら、Amazon.co.jpで「なか見!検索」ができるのは、物販の書籍で許されている場合であって、Kindle版しかない書籍は「なか見!検索」ができないからです。拙著の例を挙げますと、Amazon.co.jpの商品ページの商品ページでは「なか見!検索」できないのに対し、Amazon.comの商品ページはLook Insideが可能となっています。
Kindle本のプレビュー版は、出版側が作成するわけではなく、Amazonのサービスで機械的に作成されます。そのため、残念ながら、購買を判断するには情報が足りないと感じる場合が大半です。Amazon.co.jpでは「なか見!検索」ができないために、手間をかけてKindle端末にプレビュー版を送ることになるのですが、見ても購買するかどうか決めかねる結果になることも少なくないわけです。URLのちょい替えでAmazon.comのLook Insideを利用できるなら、それに越したことはありません。
■Kindle本の更新版を入手する
Kindle本は審査が緩く、EPUBの検証プログラムepubcheckに通らない書籍でも出版できます。白状しますと、拙著もepubcheckを通さずにKindleで出版していました(ちなみに、Koboの場合は、EPUBとしてエラーがあると、審査してもらえないどころか、そもそもサイトにアップロードできません)。
epubcheckに通らないコンテンツでもKindleで読むには支障がないことも多いのですが、もっと問題なのは、著者の検証で問題ないコンテンツでも、販売されているコンテンツに問題があることがあることです。著者が検証用に使用するコンバーターと、アップロード後にAmazonが使用するコンバーターが別物だと思われることです。そのため、出版する側の環境では問題なく利用できるものでも、販売しているものでは読むのに支障がある場合があります。拙著でも、初期の版では、一部の図がKindle端末/アプリでは表示されない問題がありました。
電子書籍のメリットとして、適時コンテンツを更新できることがあります。しかし、Kindleの場合、ユーザーが再度ダウンロードしても、入手できるのは購入時点のコンテンツに限られてしまうのです。
著者がAmazonに審査を求め、それが大きな修正でありユーザーの便益につながると判断されれば、ユーザーに通知されます。
マイナーな変更と判断されれば、My Kindleに新しいコンテンツが現れるようになり、ユーザーが自分の意思で最新版をダウンロードできるようになります。しかし、この場合は通知はありません。
軽微な修正と判断されれば、My Kindleにさえ現れません。この場合は、ユーザーが自らカスタマーサービスにコンタクトする必要があります(手順は、こちらの記事が参考になります。拙著の問題の所在と最新版の入手方法については、同僚のIさんから教えていただきました。ありがとうございました)。なんと面倒なのでしょうか……。
ちなみに、筆者の場合は、アップデートの申請から2週間ほどでMy Kindleに更新版が現れました。しかし、マイナーな修正という扱いで、ユーザーへの連絡はありませんでした。
■Kindle本を返品する
カスタマーレビューを見ていると、「買ってみたら外れだったが、デジタルコンテンツだから返品できない」という類の内容を目にすることがあります。しかし、以前のコラムでも取り上げましたが、Kindle本も購入から1週間以内であれば返品可能です。
■その他のバッドノウハウ
- E-Ink端末に向かないコンテンツ
雑誌や漫画はきれいに表示できません。NHK英語講座のテキストもそうなので、実践ビジネス英語のテキストはNexus7を使ってKindleアプリで読んでいます。Nexus7を使ってらじる★らじるで放送を聴きながらKindleアプリでテキストを見るのは、やってみると案外快適です。 - アプリと互換性のないコンテンツ
Merriam-Webster's Advanced Learner's DictionaryをKindleアプリでダウンロードしようとすると、「この商品はこの端末と互換性がありません。」というエラーが出てしまいます。コンテンツによっては、アプリで利用できないものがあるようです。 - Kindle版のない電子書籍
筆者がいつもお勧めする「日本人の英語」シリーズ(マーク・ピーターセン、岩波新書)と「理科系の作文技術」(木下是雄、中公新書)には、Kindle版がありません。前者はSony Readerで販売されており、後者はKobo等で販売されています。ただし、Sony ReaderのiOSアプリは雑誌と漫画のみの対応で、「日本人の英語」シリーズを読むことができるのはAndroidアプリです。また、「理科系の作文技術」は「自炊」レベルの電子化であることにご注意ください。 - 動かないアプリ
Windows、Macのアプリは、日米Amazonのアカウントを統合すると利用できません。統合前は、Amazon.comのアカウントを使ってAmazon.comで購入した書籍を読むことができていたのですが。 - アプリごとのLook and Feelの違い
端末とアプリで違いがあるのは当然として、アプリ間でもLook and Feelに差があります。iOSとAndroidではもちろん違いますし、同じAndroidでもOSのバージョンで違います。「同じアプリなのか?」と思うほどです。 - クラウドリーダー
クラウドリーダーでも、日本から販売されたコンテンツは読めません。Amazon.comのアカウントでログインすると、Amazon.comから販売されているコンテンツは、Amazon.co.jpのアカウントで購入したものも含めて読むことができます。しかし、Amazon.co.jpから販売されているコンテンツは読むことができません。権利処理の関係上から、このような制限が出ているものと推測しています。
■おわりに
今回のコラムでは、Kindleを使う上でのバッドノウハウについて述べました。電子書籍の老舗で、筆者も2010年から愛用しているKindleですが、残念ながらまだまだこなれていないところがあります。このコラムで述べた問題が一刻も早く解決することを願います。