髪盛ってるから森姫

アットマークマキアート物語ラブライフハック企画 『アットマークX'mas-森村編-』◆12月23日 ダイサンジ日和◆

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El_pink

 クリスマス特別企画・ IT業界の恋愛模様を描く集中連載。 ITエンジニアたちよ、恋愛していますか? 毎回、ちょっとしたライフハックネタも紹介。12月20日から12月24日まで、毎日更新!

◆ ◆ ◆

 今日は休日です。

 だから昨日の懇親会はでたかったのに、残念なことに今日は休日出勤。

 年の瀬だからしょうがないですよね。はぁ……。

 いいの!! クリスマスは振り替え休日もらって……できれば……鋼野さんといっしょに過ごしたいなー!! なーんて!!

 となると、今日こそ告白しないとだめですよね……。

 幸いなことに今日は鋼野さんもわたしも残業です。

 「森村さん」

 がんばって残業していると、給湯室に鋼野さんから呼ばれました。

 まさか、ここで告白しろという暗示かな? ちょっと、勇気をだして言ってみようかな……。

 「あの、鋼野さん!」 

 「ごめん、ちょっとお願いがあるんだ」

 「え?」 

 「実はね」

 鋼野さんが言うには、今日は雪で新幹線が遅れていて大阪からいらっしゃったお客様が現在到着されたらしいのです。

 それはわたしには直接関係がないのだけど、今日は休日。受付のお姉さん(=久実さん)がお休みで、さらに言うと、女性陣がみんないなくて……

 「わたしが、お客様にお茶だし?!」 

「森村さんは直接の社員じゃないけど、非常事態なんだ。頼むよ……」

 「鋼野さん……」 

 こんなに困っている鋼野さんを見るのははじめてかも。

 なにはともあれ、大好きな鋼野さんが困っているのです。ほうっておくことなどできましょうか!!

 「わたし、やります!! お茶だしなら自社でけっこうやってますから」 

あの天然パーマにこきつかわれてるしな!!

 「ありがとう。森村さん」 

「あの、鋼野さ……」

 「社長室で、コーヒーはブラック2つ。僕はちょっと急ぎの用事があるから! それじゃ!!」 

「あ~! ちょっと鋼野さん……」

 鋼野さんはそのまま去っていきました。 

 「今、告白しようと思ったのに」

 あきらめてわたしはコーヒーを入れました。 

 「買ってくれば早いのに」

 社長室には本当に大阪の人がきているらしく、関西弁が聞こえてきます。

 「そうやね~」

 すごい!! 生の関西弁だ!!なんだかそんなところに感動しちゃう。

 わたしも訛りが強い場所に住んでいますけど、関西弁ってなにか別の感動があります。さて、そんなことよりもお茶だしです。ミスしないようにしないと。

 「失礼します! 」 

 タイミングを見計らって社長室に入りました。

 そこにいたのはおなじみ金武社長とさっきの声からはちょっと拍子抜けするような紳士的なお兄さん。 

 え? この人関西弁しゃべるの? ってぐらい東京チックな感じがします。

 「せやからね、金武さん。その場合は偽装になるから」

 なにやら難しい話をしているみたいです。邪魔にならないように早く退散しよう……。

 「失礼します」 

 「あぁ、おおきに」

 その人の笑顔がまさかさんかくになるなんてこのときは予想もしませんでした。

 がちゃーん! !

 油断したわたしは、コーヒーをひっくり返してしまいました。

 もちろん……ややぬるいコーヒーはその大阪のお客様にちょこっとかかってしまって。ちょこっとってところがまだ不幸中の幸いかとおもいきや、そうでもなく。

 「きゃー! ! 」「うわっ! 」「あら……」 

 驚き方も三者三様です。

 「コーヒーが……」 

 「君……」  

 大阪のお客様の顔があきらかにさんかくです。

 ぎゃーす! !

 わたしはどうしていいのかわからなくなりました。頭が真っ白です。

 「あの……えっと……」 

「大変申し訳ございません、生島社長」

 向かいに座っていた金武社長が急いでこちらにやってきました。 

 「ほら、森村さん。しっかりして! 」

 社長に肩をたたかれてようやくわたしの意識ももどってきました。

 「ままままま、まことに申し訳ございませんでした!!」

 「すぐに片付けて、森村さん」 

 「は、はいぃぃぃぃ!!」

 わたしはポケットからハンカチを取り出しました。

 「まことに申し訳ございませんでした。こちらをお使いください!!」

 「いや、自分のがあるからいい。とりあえずここ、かたしてくれへんかな?」

 「は、はいぃぃぃぃぃ!!」

 急いでその場を片付けて、わたしは社長室から跳び出て行きました。

 給湯室って誰もいないからいいよね……。

 もう自分の行いが嫌になってきました。いや、もちろん自分がいけないことなんですけど。

 油断してコーヒーをお客様にひっかけるだなんて。

 わたしの涙はとまりませんでした。よりにもよって相手はお客様。

 社長にお茶こぼしたならまだ「あとでデコピンね! 」ぐらいですむかもしれません(勝手な想像)。

 お客様、しかも取引先だし。出向打ち切りになっちゃったらどうしよう。あああああ。
「森村さん?」

 振り返るとそこには朝田さんがいました。 

 そういえば、朝田さんも休日出勤組なんだっけ。

 って、まずい。 

 「あれ? 泣いてるの?」

 泣き顔みられたー!!  

 わたしがちょっとだけ伏せていた顔をあげると、朝田さんは急に笑い出しました。

 「目の周りがパンダになってる」

 マスカラ+アイラインがぐしゃぐしゃになっているところもみられたー!!

 は、はずかしい。 

 なんだか泥沼な程度に落ち込んできました。

 「なにかあったの?」 

 半分笑いながら朝田さんにわたしは事情を話しました。すると朝田さん、わたしの頭をなでてくれました。

 「よしよし、つらかったね」 

 な、なんか気が緩んじゃった。

 気がつくとわたしはさっきよりも泣いていました。

 「怖かった……。怖かったよ~!!」

 声をあげて泣く。わたしの姿はそのときの朝田さんにはどううつっていたのでしょうか? 妹みたいな感じだったんでしょうか?

 わたしは頭をなでてもらった瞬間、なんとなくですけど苦しみから解放された気持ちになりました。 

 1人で泣かなくてもいいんだって思えた瞬間でした。

 「失敗してどんどん人は強くなるんだよ。だから、森村さんも一生懸命勉強してがんばって!!」

 昨日とまったく同じ言葉でした。でもその言葉の響きが、昨日よりもずっと重く感じられました。

 そんな休日出勤の日。

 仕事で失敗したとき、わたしは泣くことしか知りません。もっともっと強くならないと。

Comment(4)

コメント

組長

こんばんは。組長です。

わたし、この回が特に好きかも。笑

>すごい!! 生の関西弁だ!!
北海道在住のライブ友達と会った時、やっぱり感動されました。「本当に『なんでやねん!』って言うんだー★キャー」みたいな。笑


>「よしよし、つらかったね」
アタシも誰かに(出来れば素敵な殿方に)、よしよしされたいよぉー!(>_<)

>仕事で失敗したとき、わたしは泣くことしか知りません。もっともっと強くならないと。
なぜかこの部分が大好きです。何となくキュンとなる感じ。

そして、確かにリアル生島社長は拍子抜けするぐらい(?)「コテコテ感」がなくて東京チックですよねー。笑
さー、フィナーレに向かって一直線♪

第3バイオリン

森姫さん

生島社長が出てきましたね(笑)
「取引先の社長」みたいな設定で出てきたらいいのになあ…なんて
ちょうど考えていたところでした。

> 「失敗してどんどん人は強くなるんだよ。だから、森村さんも一生懸命勉強してがんばって!!」

今の私にはこの言葉がとっても沁みます。
別の場所ですでに言ってますが、昨日テストリーダーとしてありえない、というか
絶対にやってはならない大失敗をやってしまいました。
(梅尾リンは森村さんを責められない…)

それで開発チームのリーダーや、自分の部署の上長に大変迷惑をかけてしまいました。
しかも、ちょっと気をつけていれば回避できたことなんですよね。

そうはいっても、失敗に勝る教育はないです。
私も失敗を成長につなげたいです。
そして、この一件をコラムにしたいです(結局それかい!)。

森姫

この回が一番暴走してるかも・・・(笑)

組長さん
個人的にいちばん「ほれてまうやろー!!」要素が「よしよし」です。
これやられたら個人的に「ほれてまうやろー!!」です。
ちょっとでも胸キュンを与えられたらこれ幸い。
リアル生島社長は大阪よりは東京な感じですよね。でも、大阪って案外東京チックな人が多いかも。

第3バイオリンさん
生島社長様は「お客様」という表記で実は取引先の人かもしれません・・・。
大失敗してしまったのですか?!
それこそ「一生懸命勉強してがんばって!」ですね。
一回転んだら二度は転ばないようにしないといけませんね。

森姫

一番暴走している第4話。
「仕事で失敗したときどうする?」
です。
私は森村といっしょで「泣く」もしくは「食べる」です。
・・・にしても主人公はミスが多し。

今回のゲストは
生島さんと編集の金武さんですー。

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