『アットマーク・マキアート物語』 第4話:御茶ノ水チャイナ
2009年9月19日~23日 毎日昼14時 O.A! 株式会社マキアートの新人が、コーヒー片手に旅したIT業界のお話。
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■第4話 御茶ノ水チャイナ
トンネルを抜けるとそこは音楽の世界だった。
うーん、これが文章の表現の精一杯。今度の納品先は御茶ノ水でした。やたらにぎやかだなぁと思っていたら楽器屋がたくさんあるのですね。
初日からこの誘惑に耐えるのが大変でした。楽器大好き!! 次の納品先は楽器屋?! もう異業種はこりごり!! と思っていたらJR御茶ノ水駅からあるくこと10分。慣れないヒールにつかれて、見つけたコーヒーショップでカフェラテをいただく。
周りを見るといつのまにかオフィス街で気がついたらITビルでした。あぁ、よかった。ちゃんとしたソフトウェア会社なのね。ってことは! 新宿メガネみたいな人がいるのかな?
「株式会社マキアートの森村です」
「ハイ。チョットマッテテクダサイ」
ちょっとまって。今、この人片言だったような……。受付でキー解除できずにうろうろしていたわたしを救ってくださった人。その人に連れられて、わたしは応接室へ。さきほどとは別の人がでてきました。
「いやー、遠いところを御苦労さん!」
見た感じ、人当たりのよさそうなおじさんでした。納品物を提出して、チェックを受けて……。それにしても、なぜかこの職場……違和感がある。なんでだろ? 「おかしいなぁ……」とおもいながら2、3日で作業を終わらせてあとは保守!
もう3カ月も同じソフトの納品やらなんやらかんやらをしているので慣れてきました。あぁ、保守も平和な1カ月が今度こそ送れるはずと思っておりました。
初日に「3カ月頑張った自分へのご褒美」なんてスイーツ(笑)な考えを起こして楽器屋でベースを購入。このベースが、わたしの1カ月を救うなんていうのはいらない伏線です。
最初に抱いた違和感を肌で感じたのは4日目の昼休みでした。ふと社員さんらしき人の机を見ると……書類の文字が理解不能でした。「読めなくはない」のレベルを逸脱していました。「完全に読めない」レベルでした。
それは「字が汚い」のレベルではなく、日本語ではなかったのです。プログラムで見慣れた英語でもありませんでした。明らかに……中国語。
「申し訳ないけど、シーケンス図を書いてくれ!!」と頼まれたのはその中国語を見た日でした。
「仕様書の言葉が難しすぎるという声がでているんだよ」
「……え?」
「ここで働いている人は中国の方が多いんだよ。だから、図で表してくれた方がいいんだ」
そんなわけでシーケンス図を書くことになりました。書いたことは一度しかありません。それも新人研修の時に。本を読みながら、先輩に電話して仕様を確かめて~というステップを踏んでです。
「モリムラサン、ココノシヨウモズニシテクダサイ」
「あ、はい。すいません」
とはいえ、中国の方も日本語がすごく流暢です。会話に困ることはあまりなく、難しいのは慣れていないシーケンス図のみ。
「できました!」
「アリガトウゴザイマス」
書類をちょっと見て
「チョットマッテテクダサイ」
御茶ノ水チャイナは仲間達と中国語で話し合っています。喋るペース、早い。すごく早口の中国語がとびかっています。あぁ、なに話しているの~!! ワタシサッパリワカリマセン。
「ココマチガッテマス。シュウセイシテクダサイ」
「す、すいません」
そして室内は中国語に戻りました。なに!? このおいてけぼり感!?
スピーカーにはつないでいません。夜なので。なのでベースからは間抜けに「ぽーん」という高い音が聞こえます。しかし、弾かずにはおれません。
「言葉には壁があるけど、音楽には壁がないのよー!!」
いつのまにか、楽器屋で購入したベースがストレスのはけ口になっておりました。言葉で通じないから、図に書く。言葉が通じないなら、ほかに通じる手段をさがせばいい。
そんなことに気がついたころには、「佐賀県」が楽譜なしでひけるようになっていました。
シーケンス図はなんとか無事にできあがりました。図ができあがるにつれ、御茶ノ水チャイナともなんとか意思疎通ができるようになっておりました。
技術の部分は明らかに彼らの方が上なので、とても勉強になったのが実際のところです。言葉の壁はありましたが、技術の部分の根は一緒。技術の話は通じるのです。
さすがに日常会話をするまでのレベルにはなれなかったですが、技術の話はできるようになりました。
★ ☆ ★
「でも、主に言われたのがシュウセイシテクダサイなんだよね」
「ま、そうですけど。おかげでシーケンス図バッチリバッチリです」
「仕様書は図にした方がいいんじゃないですか?」
「それは賛否両論あるからしらない。じゃね!!」
がちゃん!!
まあ、確かに仕様書の形ってさまざまだよなぁ……と思います。
「いろいろありがとうございました!」
「コチラコソ」
前から気になっていたらしいことを御茶ノ水チャイナは最後に聞いてきました。
「モリムラサンノオシゴトッテナンデスカ?」
「I don't know」
そろそろ秋も終わります。次は地元に帰れるでしょうか?
■次回予告:
「ソフトは動いていればそれでいいんだよ」
「ちょっと待ってください! じゃあわたしは、4カ月何のために?」
「うん、保守だけど?」
いよいよ地元に帰るけど、まだ最後の難関が残っていた! 最終話「羽田ブラウンパーマ」、9月23日(水)昼14時放送!
コメント
組長
こんばんはー。
おぉ!ベース弾かれるんですね。私は一生のうちに1度はバンドを組んでみたかったですが、ご縁がなく、見る側ばかりです。楽器が出来る人は羨ましいです。
ところで「ブランパーマ」って・・・。楽しみー!!
森姫
こんばんは。
楽器はさわり程度ですけどベースとギターとキーボードができます。
(本当、さわり程度に・・・)
昔バンドがやってみたくてという若気の至りです。
結局DTMで落ち着きました(笑)
「ブランパーマ」はすいません、私のタイプミスで
正確には「ブラウンパーマ」なんです(汗)
どちらにしろ、パーマが天然かそうでないかでもめます(笑)
組長
森姫さん
あ、ギターは若気の至りで買ったことあるんですけど、挫折しました。
>どちらにしろ、パーマが天然かそうでないかでもめます(笑)
確実に、面白そうですね!笑
楽しみです。
森姫
第四話解説
*このお話は全体的に実体験をもとにしたフィクションです。
言葉の壁って分厚いですよね。
私は地方出身なのですごく訛りがあるのですけど、
東京は標準語。
もう、異国かと思いました・・・。
言葉が通じないのって本当に苦痛なんです。
人生においていかれた感じがしまして・・・。
ましてや異国語だなんて!!
そりゃベースも唸ります。
ちなみに楽器を家で弾く時は
周りに配慮して弾きましょう。