細々と働くエンジニアが、細々と何かを書いていきます。

キャリアとは、ドラゴンクエストのようなものである

»

 こんにちは。

 偶然、「キャリアとは、RPGのようなものである」というタイトルで書こうと思っていたら、逆転仕事術さんがドラクエをテーマにコラムを書いていらした ので、自分も触発されてしまい、「RPG」の部分を「ドラゴンクエスト」に変えてしまいました。けっして、パクったとかそういうのでは……。

■「<ほんとうの自分>の作り方」を読んで

 前回、机の上に自分の名刺を置くことで、「自分はこの会社のこの部署で働くエンジニアなんだ」というアイデンティティにより仕事を頑張れる気になる、ということを書きました。書きましたが、「そういうように思うのって、自分だけなのだろうか……」と思っていたため、帰属意識とアイデンティティに関する書籍がないかを探したところ、「<ほんとうの自分>の作り方」という本を見つけまして、買って読みました。今回は、その本を読んで思ったことを書いていきたいと思います。

 著者の榎本さんは、「自己物語」というものを提唱しています。

 現代社会を生きる人は、生まれたときから実家の家業を継ぐことを運命づけられている人より、どういう職に就くか、などといった部分を、自分の自由に選べる人が多いかと思います。自由であることで、逆に「自分は何をすべきなのか」「自分というものは何か」といったような「自分探し」をしながら迷っている人が多くなったといいます。

 「自分はこういう人だ」というものが自分の中で明確に描かれていれば、アイデンティティが確立され、そのことで自分の生きる方向性が見え、意味のある人生を送ることができるそうです。

 この本では、自分が今までの人生でつづってきた物語が、「自分はこういう人だ」というのを描いている、と言っています。その物語が「自己物語」です。

 たとえば、小中学校と、学年トップの成績を出してきた人は、「エリート」という人生を演じている。しかし、高校に入ってから、周りの生徒がみんなエリートで、自分の学年順位が下がってきて勉強が出来なくなってくる悪循環。そうなると、エリートという物語を演じてきた自分の物語が破綻しだす。エリートを演じてきたときは、夏休みを返上して必死に勉強してきたりしたことにも意味を感じて頑張ってきたのに、物語が破綻すると「自分はなぜ、周りが遊んでいる時期に勉強ばかりしていたのだろう」などのように、自分がしてきたことの意味がわからなくなる。そうなると、自分が何者かがわからない「アイデンティティの拡散」という状態になってしまう、と。

 つまり、

  • 今までの人生で綴ってきた物語(自己物語)によって、アイデンティティは保持される
  • 自己物語があるから、人生で起こる出来事は意味のあるものに感じる
  • 明確な自己物語がないと、自分というものがわからなくなり「自分探し」をしたくなる

ということです。自分が名刺を見てアイデンティティを感じるのは理に適っていたのかもしれません。「この会社の、この部署のエンジニア」という自己物語があるから、仕事を頑張れる、といいますか。

■キャリアとは、RPGのようなもの

 この本を読んで、自己物語というものを知って、思いました。

 「キャリアや人生って、RPGのようなものなのかなあ」と。

 たとえば、ドラゴンクエスト3というゲームの場合。主人公は、16歳の誕生日を期に、勇者として冒険に出たまま帰らぬ人となった父の後を継ぎ、仲間と共に魔王を倒す冒険に出ます。主人公の感情部分を表現しているゲームではありませんが、恐らく主人公は、子供の頃から「将来は勇者になるんだから」という方向性で育てられ、本人もそのつもりでいて(疑ったり嫌がったりすることなく)、そして16歳になると同時に勇者として冒険に出たのだと思います。主人公には「魔王を倒して世界を平和にする勇者」という自己物語があるわけです。

 勇者と書くと、現実離れしている感はありますが、自己物語というものはRPGのように言い換えることはできるのではないでしょうか。新卒でIT企業に就職する。しかし、プログラミングや社会人経験は未経験なのでレベル1。まずはスキルアップを頑張る。一生懸命勉強してスキルを磨いたり新しいスキルを身につけたり。そして、ある程度のスキルが身に付いてきたところで、今までのエンジニアとしての自己物語から、このまま技術を極めるか、マネジメントをする職種に転職するかを考え始める。以前書いた、スローキャリア的な考え方です。

 もし、自分の行くべき方向性がわからなくなったら……。この本では、自己物語を自分の都合の良いように変えることができるといいます。ただし、自分でも納得のいく自己物語というのは社会性(他の人が納得してくれること)が必要だそうです。

 つまり、自己物語を信頼できる人(上司や先輩)に話すことが重要だそうです。目標管理もそうですが、どういう方向に進みたいかを面談等で決め、それに向かって、与えられたミッションをこなすということ。これが大事なのではないでしょうか。

☆★☆

 今まで、スローキャリア論やメンタルヘルスを勉強してきましたが、また新しく「自己物語」というのを知ったとき、点で存在していた覚えたことが線で繋がったような感覚がありました。そして、そのとき、自分の考え方(信念)が更に強くなったのを感じました。本を読むのって楽しいですね。

Comment(2)

コメント

逆転仕事術

確かに、ビジネスキャリアとはRPGと似ていますよね。
一発逆転の改心の一撃もあれば、痛恨の一撃もありますし。
ドラクエに出てくる転職はエンジニアの転職、これもまた似ていますね。

ちなみに、スローキャリアやメンタルヘルスは現実にしかない論点のように思います。
でも、そういうのがあるから、思い通りになかなかならずに現実は面白いんでしょうね。
うんうん。

あずK

逆転仕事術さん>
コメントありがとうございます。

確かに、キャラクターの内面を描くことはあっても、
それはストーリー上のひとつのイベントなだけであって、
基本的にゲーム中ではほとんど無いですよね。<スローキャリア・メンタルヘルス
プレイヤーが「このキャラはこう考えているはず」と設定付けることは出来ますが(笑)

現実でも「悩んでいる暇はない」というのはあるかもしれませんが、
悩むということは人間らしいと思いますし、
悩むからこそ人間として成長する、とも思います。

コメントを投稿する