音ゲーマーとして「芽兎めう」の「社畜めう」現象について思ったことを書いてみる
にわか音ゲーマーと書こうかと思ったけど「嘘つけ」と言われそうなので止めておきました。
(注:今回の記事は趣味に走っています。)
■ 「社畜めう」現象
なんか流行っているみたいですね、「社畜めう」っていうネタ。
僕も見ました。全く笑えないってほどではないものの、いくつかネタを見た段階で、ページをそっ閉じ。
いや、そうした理由はいくつかあるわけですが……、一番の理由は、元々の芽兎めうとキャラが全然違うから、ですね。
■ 芽兎めうって何者か
そのあたり、色々と思うところを書く前に、まず「芽兎めう」とは何者なのかについて触れておきたいと思います。
芽兎めうは、「ひなビタ♪」の登場キャラクターです。
-「ひなビタ♪」とは何か
てか、そもそも「ひなビタ♪」とは何か、という話ですが。
「ひなビタ♪」は、5人の女の子が主人公の物語です。アニメではなく、Facebookページ上で展開される小説(本人たちが日記形式で投稿している、という形)です。田舎に住む主人公たちがガールズロックバンドを結成して、自分たちで寂れた(というか「ひなびた」)商店街を活性化させよう、というストーリーです。自分も地方出身者ですが、「地方の商店街の衰退」という面は非常にリアルに書かれていて、読んでいて面白い印象です。
なお、運営元はKONAMIの音楽ゲーム制作のプロダクトであるため、ストーリーが進む中で新曲が生まれると、その新曲がゲーセンで遊べるようになっています。その他、YouTubeにラジオを配信したり、iTunes上などで新曲を販売したり、と、クロスメディアをかなり意識しているのが特徴的です。そのため、人気も出て、もうかれこれ4年目に突入しています。
もう少し知りたい方は、公式サイトを、ぜひ。なお、ストーリーが展開されているFacebookページは上記のとおりですが、Facebookページで過去の投稿を追おうとすると非常に辛いので、非公式(かつ公式公認)のまとめサイトにて「日付が古い順」でソートして読んでいくと良いと思います。
- で、芽兎めうとは誰か
その「ひなビタ♪」に出てくる5人の主人公の1人が芽兎めう(苗字も「めう」)です。主人公の5人は共に個性の強いキャラクターをしていて、好きな曲のジャンルも異なっていますが、特にこの子は酷くて印象的で、いわゆる「電波」な人です。商店街の中にある「はんこ屋さん」の娘さんという設定で、着ている服装には「はんこ」をあしらっていますが、上記のキャラ紹介のページをご覧いただければわかる通り、そういうファッションをするのが好きな子です。担当楽器はドラムで、実際の楽器よりも音ゲーに造詣が深く、全国トップクラスの音ゲーの腕前をもっているというのも印象的です。あと他に印象深い点としては、5人の中で唯一の中学生であり背も小さい、とか、とにかく話す言葉の語尾に「めう」とつけるところですね。
まあ、こういったキャラなので、当然、バンドの中で彼女がメインを張る曲は、すべて電波です。こんな感じで。(ライン撮りではないプレー動画なら……セーフですかね……^^;)
- だから「社畜めう」として消費される、けど……
こういう風貌に電波好き。「めう」と語尾につけて話すキャラ。これだけ見れば、どう考えても天然キャラ。彼女をよく知らない人たちによって「社畜めう」というネタコンテンツが出来上がっても当然かも、と。(なお、ネットの奥深いところには「芽兎めうに焼きごてを当てる」的なのもあるようですが、さすがにそれは読んでもいないです。)
ネタを作った人たちは、恐らく気軽に投稿したのだと思います。ただ、初期のストーリーから今までの内容を知っている人からしたら、ものすごく違和感がありまして。あの子は天然ではなくて、真面目に電波やってる子です。幼少の頃は人見知りで騒ぐ子ではなかった、とか、最年少というポジションから他のバンドメンバーの人の状況を良く見ている、といった記述がFacebookページの文章には出てきます。あと、2番目の動画で貼りました、ちくわパフェの曲。これを芽兎めう(の担当の声優さん)が歌っていますが、フルバージョンの曲の歌詞を聴くと、あのモンスターな食べ物に対して芽兎めうは実は懐疑派であることがわかります。
つまり、深く「ひなビタ♪」に触れてきた人からしたら、芽兎めうは実は常識人であることを知っている(逆に「ひなビタ♪」の5人の主人公の中で、まともに見える3人がド天然だったりします)ので、あれを読むと違和感がありすぎるんですよね。
■ 本質を知られぬままネットで拡散・浸透されていく恐怖
最初に「社畜めう」ネタを考えだした人が「ひなビタ♪」のことを良く知っていて芽兎めうをネタにしたのか否かはわかりませんが、少なくとも芽兎めうの本当のキャラクターまでは伝わらず、ただ単に「あの見た目で、語尾に「めう」と言って話す、小さい女の子」というキャラクターだけが「社畜めう」と共にネットで拡散、浸透していったのだと思います。これは、ネットの性質上、仕方ないことだとは思います。今回のこの現象は、「ひなビタ♪」の制作プロデューサーであるTOMOSUKE氏もtwitterで触れていました。
本来の設定が削げ落ち「めう」という二文字だけ残った情報の残骸、いわば形骸化したミーム然としたものがネット特有のヒットライダー現象で拡がり変異と成長を繰り返しているのをみていると
— TOMOSUKE (@_TOMOSUKE_) 2015, 5月 13
まるでこのたった4バイトの文字情報が極めて強い生存意識をネットワーク上で持っていて、宿主の認知心理を利用して利己的遺伝子のように振る舞っているかのようにも思えたりするから、言葉の力って凄いと思ったり。
— TOMOSUKE (@_TOMOSUKE_) 2015, 5月 13
すごく難しい言葉を並べていらっしゃいますが、要するに「ネットすごい」ってことだと思います。少し違いますか。そうですか。
こういった現象は、他にもあるわけで、たとえば「中二病」という言葉もそうです。元々は伊集院光氏が生み出した言葉で「中二くらいの子が背伸びして大人なことを言いたくなる状態」を意味していたのに、ネット上で拡散・浸透されていくうちに、現在では「非現実的で壮大な世界観をもった設定や人を揶揄する言葉」になってしまったわけです。
■ このような拡散は仕方ない。けど、それで良いとも思えない……
伊集院氏本人は、変化した後の中二病の言葉には興味をもっていないようですが、中二病の言葉が嫌いな人たちが「言葉を生み出した当人」として伊集院氏を叩くこともあるようです。お門違いなのに。
これらの「芽兎めう」や「中二病」のように、元々の本質とは違ったものとしてネットで拡散・浸透していくのは、ネットの性質を考えたら仕方ないといえば仕方ないです。ただ、本当にそれで良いのかっていうのには疑問が残ります。
「意味が変わってても言葉を生み出したのはお前なんだから責任をもてよ」と理不尽なことを言われ、伊集院氏はどう思うか。みんなに楽しんでもらおうと生み出して育ててきた芽兎めうのキャラクターとは全く違うキャラクターとして「社畜な芽兎めう」が広まっていることに対して、TOMOSUKE氏はじめ制作スタッフ、芽兎めうに声をあてている声優さん、純粋なひなビタ♪のファンはどう思うか。
それを考えろと言ったところで「社畜めう」を楽しみ、かつ広めているのは、芽兎めうの本質を知らない人たちなので、言っても伝わらないだろうな、とは思います。(上記のTOMOSUKE氏のツイートも、オブラートに包みすぎてわかりにくいですが、否定はしないけど容認もしていないように感じます。)
ただ、それでも、この流行に違和感は残ります。流行している物事の本質が何か、というのを知ろうとすることは大事なのではないでしょうか。パクツイ問題でいうところの「本当の出元(作者)は誰か」と同じです。「なぜ流行っているのか」「そもそも、めうって、誰が生み出したキャラで、こういう性格なのか」という本質を調べてほしいな、というのが自分の中にあります。
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まあ、長くなりましたが、結論としては、(「ひなビタ♪」ファンの一人として)「ぜひFacebookページを読んでください。興味をもちましたら、曲もぜひ聴いてください」ってことです(笑)。M・O・K・S。