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コードを書かない開発の世界へ

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 以前にもここのコラムで、私は .NET の中でも Workflow Foundation に興味を持っている事を書きました。もともと「コードをできるだけ書かないで目的を達成する」事に興味を感じていたこともあり、その可能性に期待をしていた時期もありました。 ありました、とあるように現在では WF なんて単語が表に出ることはほとんどなく、既に過去の技術と言ってよい状態です。あれだけ期待していた WF も、多くの消えゆく技術と同様に、忘れ去られようとしています。

 しかし、いつになっても「コードを書かない」というニーズは消え去ることはなく、今のご時世になって形を変えて日の目をみようとしています。それが Microsoft Azure で提供されている LogicApps です。

 機能的には WF よりももっと限定的に、多種多様な外部サービスを連携することに主眼がおかれているもので、あるサービスから通知を受けたら別のサービスへ連携させる、といった事であればコードを書かずに目的を達成することができるようになっています。

 Microsoft が提供しているから Microsoft のサービスとしか連携できないとも思われがちですが、Google Task や SpreadSheet、Instagram 等、Microsoft 以外のサービスとも簡易に連携が可能ですし、HTTP で呼ぶことができる WebApi であれば基本的にどれでも連携することが可能です。

 私も Microsoft Azure で提供されている VM で、ストレージの容量が少なくなったとか CPU の利用率が高まったなどのアラート発生時に、LogicApps を呼び出して記録を残していたりしますが、何一つコードを書かずにこのような事ができるのは非常に驚きです。

 同様のサービスは AWS や Google Cloud Platform では提供されていないので、個人的にはもう少し注目を浴びてもよい気がしているのですが、今の時点ではほとんど注目されていません。これは別に MS 技術を利用している開発者たちにおいても同様です。
 こうなると一つ思えるのが、このような非開発者向けのサービスの情報は、果たしてターゲット層である非開発者に届いているのか、という点です。最初に書いた WF は開発者にばかりその情報は流れ、届くべきであった非開発者にはほとんど情報が届いていませんでした。今回の LogicApps も今のところは同様で、開発者にばかりその情報が届いているようにも思えます。

 また同様の仕組みで別のサービスとなる PowerApps / Flow というものも登場したり、Conditional Action Programmer(CAP) というさらに同種のサービスが登場するなど、正直言うと今の Microsoft のやり方には疑問を抱くところも多いです。

 ですが、それぞれのサービス自体は非常に興味を抱かせるもので、本来の目的であったと思われる非開発者向け、というポイントは押さえ始めています。私個人の中でも特に注目しているのは Flow で、これは会社メールアドレスなどフリーではないメールアドレスを所有していれば、誰でも利用可能なものです。最近になり Android 版アプリも開発中バージョンながらリリースされ、より多くの人へアピールできる状態へと近づいています。

 これらのサービスを利用すれば、一昔前であればコードを色々書かなくてはできなかったことが、非開発者でも簡単に仕組みを作ることができます。先の例にあったアラートの通知などがわかりやすく、Excel に記録するだけではなく、プッシュ通知で端末に通知したり、Twilio を利用して電話をかけることも、コードを書かずに用意することが可能です。

 本来であればプッシュ通知の仕組みを調べたり、外部ストレージへの記録方法を調べたりしてコードを書き起こさなくてはなりませんでしたが、もうそこまでする必要がなくなりつつあるのです。これは非常に大きなポイントだと思っています。

 今まで開発者だけができたことが、非開発者にもできるようになる、そして開発者はさらにできることがより多くより深くなる、これは技術者にとってよいスパイラルではないでしょうか。

 今までと同じやり方で対応を続けていると、このように気が付けば圧倒的に簡単に同じことが可能になっているのが私たちの関わる IT 業界です。システムからメールを出すのにロジックを組んでいた時代から、今では SendGrid のようにとても簡単にメール送受信が行えるサービスが非常に安価で利用できます。誰かが 1 日かけてコードを書いたロジックがあったとして、それと同じだけの金額で 1 か月以上利用できるというのも珍しくありません。
 これからはそういった「自分で作らない」という視点を持つことも、システムを構築する上で非常に重要になるのではないでしょうか。なんでもかんでも内製で、という時代はもうすでに終わりを告げているのかお知れません。

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