愚直にただ、伝え続ける事
システム開発、特に企業内システムを開発されている方々に多いかもと思うのですが、何かこうスピード感の無さや余分に時間をかけていると感じたことはないでしょうか。慎重に物事を進めるのは大切だと理解していますが、それでも諸般の手続きやら手順など、時間をかけるばかりで勿体ないと感じたりすることはないでしょうか。
私は SI を行う領域で開発を行う事が多かったこともあり、常にこのような不満を感じています。特に Web 界隈の方々の話、それもベンチャービジネス方面の話を聞くたびに、SI 系はどうしてここまで時間をかけてしまうのか、と感じずにはいられません。
よく各種媒体に掲載される記事では、SI 業界は衰退する、という内容のものがいつになっても掲載されています。しかし実際はどうかと言われると、少なくとも数年の間は全く変わることはない、そのようにも思えてしまいます。媒体の記事では煽ることで PV を稼ぐ目的もありますので、全てが全て現状の話をしているとは限りませんが、そのようなタイプの記事を抜きにしても、現状がそれほど変化してきているのを感じる事も殆どありません。更に時間が経過すれば、ゆるやかに変革していくのは疑いのないところだとは思うのですが、それがどれくらいのペースで訪れるのかも正直想像がつきません。
クラウドも既に一般化しつつあると言ってもいい状況ですが、オンプレミスを主体としている SI もまだまだ無くなる事はありません。例えばインフラの構築といった、感じやすいメリットがクラウドにはありますが、SI を行う企業ではそれでもクラウドを利用せずに、全てをオンプレミスで賄おうとするケースが多いように感じます。
本当にクラウドをメリットと感じていない人がいることもありますが、分かっているけども今の環境では利用できない、社内で反対されてしまうというように、環境が先に進むことを押しとどめている場合もあるのではないでしょうか。
冷静に考えると、自社で全てを用意した場合とクラウド上の環境を利用する場合で、自社で用意するケースでなくてはならない、という場面は思われているほど多くありません。セキュリティ上の問題もよく言われますが、殆どの場合はそれは勘違いにしか過ぎず、設定ミスを除けばクラウドのほうがむしろ安全です。さらに今ではハイブリッド構成を採用することも非常に簡単になっています。全てをクラウドに移行する必要も薄れ、確実にメリットをもたらせてくれる存在です。
例えば EC サイトを構築したい、といった話を持ち掛けられたとして、オンプレミスで考えた場合は早くても数日は環境構築に時間を必要としますが、クラウドでは数分から数十分もあれば、実際に利用できる環境が用意できます。流石にこのような話は今では当然、と言いたいところですが、結構な割合で知らない人というのが存在しています。クラウドベンダーに限らず、同業者の方々が数年かけて離されてきているにも関わらず、です。
ここエンジニアライフや、各種媒体を参照に来られるような方々にとっては問題のない話なのですが、業界を通してネックとなっているのは先のような、自分で調べない人、世の中の流れを意識しない人達です。そのような方達へどうすれば伝えたいことが届くのか、どうすれば知ろうとするきっかけを掴んでもらえるのか、これはいつになってもベストな解決案が出ないほどの難題です。恐らくですが、メディアに携わっている方々も同様の悩みを抱えているのではないでしょうか。
そんな環境を打破する方法というのは、そう多くありません。地道な啓蒙活動を続けることこそが現在取りうることができる最善手です。ショック療法的に、相手と同じことをより少ない時間でより高品質に仕上げる、というのも考えられますが実際の業務でそこまでする余裕はほぼ間違いなくありません。
そう考えると私たちにできることは、少しでも多くの人に長く伝え続ける事しかないように思えます。そしてそれを実践するためにも、できるだけ多くの人が伝える側となることが重要なのではないでしょうか。
ほんの少しで変化を起こすことができれば、それはきっと次につながる楔となり得ます。何もしないままですと、置かれた状況は決してよくなることはありません。外からの影響で変化するよりも、自主的に変化することが非常に楽です。何か思うところがあるのであれば、周りを巻き込んで動いていくのが良い結果を生み出すことができるのではないでしょうか。
それはどんな些細なことでも構わないと思います。ちょっとした気づきをメモ代わりにブログにまとめる、勉強会で LT を行ってみる、休憩中に同僚に話題にしてみるといったそんなちょっとしたことの積み重ねこそが、今後を少しでも良くするために必要なことなのではないか、と私は考えます。