読者は空想上の生き物ではない!
先週のonoTさんのコラムを読んで思ったことがある。
■理論通りに動いてくれる理想気体
PV=nRTって覚えているだろうか? 化学の授業で習ったはず。気体の状態方程式、ボイル・シャルルの法則。気体の温度と圧力と体積は比例、反比例の関係にある。でも現実はちょっと違う。そこで考えられたのが理想気体。PV=nRTが完全に当てはまる。化学者が自分の都合のいいように考えた気体だ。テストでは理想気体である前提で問題が出される。
空想上の生き物として考えられたユーザーも理想気体のようなものだ。平均的にこんなもんだろう、これを望んでいるはずだ、とベンダー側で都合がいいようユーザーを想定する。でもそんな都合のいいユーザーはいない。平均的なユーザーを想定してはいけない。
■漠然と真ん中を狙うな!
狩りをするとき、鹿の群の真ん中を狙って槍を投げても獲物には当たらない。群の中の1頭だけを狙って槍を投げろ。父親に狩りに連れて行かれてそう習ったことのある読者も多いことだろう(いや、絶対いないって!)。
漠然とした平均的な理想ユーザーに向けて話をするのも群の中心に槍を投げるのと同じだ。当たりそうで当たらない。たった一人のユーザに向けて話をしたほうが当たる確率は高い。
女性のハートを射抜くときも同じだ。女なら誰でもいい、と群に向かって矢を射ってもダメだ。一人を狙え。たった一人のハートに狙いを定めて矢を射れば、誰かさんの嫁も空想上の生き物ではなくなるかもしれない!。
■たった1人の読者を想定して
私が本を書いたとき、「読者を具体的に思い描け」 とアドバイスされた。何歳で、職業は何で、家族構成や趣味までも考えろ、と。なので私は10年前の自分に近い読者を想定した。子どもが2人いる父親。SEの仕事が忙しい。子どもの教育には関心があるけどあまり構っている時間もない。そうやって具体的に読者を想定すると、書く内容が絞れてきた。こんなこと書いても喜ばないよな。これを知りたいだろうな。このおやじギャグならウケるかな。などなど。
空想上の平均的な読者に受け入れらるように、反感を買わないように書いた文章はニュースや説明文には最適だ。でもコラムや小説でそれをやったら面白くない。たった一人の読者を狙って書け。他の人には嫌われたった構わない。そう思って書いた方が面白くなるはずだ。空想上の生き物のような一般ユーザー向けに書いてはいけない。
あっ、でも、たった一人を狙って書いたから、たくさんの人に売れていないのか(^_^;)
abekkanでした。
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コメント
読者の皆様へ
あべっかんさんの書籍は、心温まるエッセイです。
僭越ながら私が書かせていただいた書評は、以下にあります。
http://blogs.itmedia.co.jp/t0tsukawa/2014/06/se-612d.html
abekkan
> 中津山さん
ありがとうございます!
誉めていただけると嬉しいです(^o^)。
いるまがわ
こんにちは。
と、ある検索をしていてたどり着きました。
私は素人の小説書きなのですが、
ズバリ、
> 狩りをするとき、鹿の群の真ん中を狙って槍を投げても獲物には当たらない。群の中の1頭だけを狙って槍を投げろ。父親に狩りに連れて行かれてそう習ったことのある読者も多いことだろう
自作の小説でこの話をアレンジして使ったのです。
ところが元ネタが思い出せません。
結構調べたのですが、
マンガやアニメなのかドラマや映画なのか、
小説や故事なのか、名作ノンフィクションなのか、
さっぱりです。
ご存知でしたならば、教えてくだされば幸いです。
当方、五十代の男性でして、
同じ世代の人ならわりと知っている話だと思うのですが。
abekkan
いるまがわさん
コメントありがとうございます。
意外なコメントでした(笑)!
この話は「侍ジャイアンツ」からですね。
侍ジャイアンツ、群れ、槍
とかでググるといくつかヒットしますよ。これとか。
http://www.tomitasyouten.com/mlog/diary.cgi?no=1725
いるまがわ
こんにちは。
ありがとうございます、ありがとうございます!
第30話だったんですね。
当初から「侍ジャイアンツ」のウルフ・チーフではないかと思ってはいたのですが、
ググリ方が悪くてどうしてもわかりませんでした。
すっきりしました。ありがとうございます!
あとは、この話を考えたのは脚本家なのか梶原一騎なのか、
はたまた何かの引き写しなのか、
探索の旅を続けます(笑)。