診断士兼キャリアコンサルタントの元外資ITマネージャー

それぞれの真実

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 なんとも約1年ぶりに、このコラムを書いています(汗)。

 よりによって、前回てんてこまいの中、「 次回は~(できるだけ早く)書いてみたい」なんて書いたことで、絶筆フラグまで立ててしまっているし!

 「忙しいっていっても本当に書くヒマがまったくなかったのか!?」と問われれば、きっとそんなことございません。結局は優先順位の問題だったりします。まことに申し訳ありませんでした。

 えー、不在の1年間にいろいろありました。

 変わったことの1つ。課長だったボクは1月に部長になりました。エッヘン。

 もう1つは、

 ドロップアウトふたたび。

 えー、なにをいってるのか自分でもよくわかりませんが、部長になったものの、4月いっぱいで退職し、ボクはまた無職界の住人になりました。

 とはいえ、またまた勤務先が倒産したわけではなく、自分で望んでのこと。

 さすがにこれ以上勤務先が倒産したら、どこも雇ってくれない。というわけでこれから、ボクは職をさがさなくてはなりません。

 さて、退職については次回書くとして(絶筆フラグ)、今回は前回予告を尊重して……

 「ボクがこの15年(もう16年になるか)で一番変わったこと」

 それは、

 「発言の背景を考える」

 「他人が言うことに耳を傾ける」、の広義解釈ともいえる。

 昔のボクは、自分が正しい、という気持ちでいっぱいだった。システムだって「1人で作った方が完成度が高まるんじゃないか」なんて、新人に毛が生えたような段階で恐ろしくゴーマンな考えを持っていた。

 「自分が正しい」、そんな視点で他人にも正しさを求めていたから、衝突も多かった。

 「あの機能がない」

 「この機能がないとダメだ」

 そんな風に、瑣末なことでレガシーシステムから新システムへの乗り換えを拒絶しようとするユーザーや、それを受け入れる部門長が理解できなかった。

 いまは違う。

 正しさなんて存在せず、人それぞれ、みんな違う立場でモノをいっているだけだ、ということ。みんながそれぞれ 自分の立場における真実の上で話していること。

 そこに気が付いた。

 15年前なら「そんなことない! 正しさは1つだ」と拒絶 したかもしれない。

 10年前だったら「うーん、それはそうかもしれないけれど……」ぐらいの印象だったかもしれない。

 決定的に腑に落ちたのは、5年ほど前のこと。

 D.カーネギーの『人を動かす』を読んだときだ。

 どんな大悪党でも、「自分が 正しく、世の中がまちがっている」と思っている、ということ。しかも心から。

 これはボクにとって革命的なできごとだった。そこから、少しアプローチが変わった。

 誰かが自分と異なる意見をいった際には、「この人はなんで、そういうことをいうんだろう?」と好奇心を持つようになった。

 発言の背景には必ず理由――その人の真実があるはず。そこを知りたい、という気持ちが前よりつよくなった。

 本人に理由を聞いたりするうちに、これまで気が付かなかったたくさんの真実に出会った。

  • 過去のシステム導入時に失敗した記憶から、システム導入自体にネガティブな人
  • 「~さんがそう言っているから」という声の大きな1人の部下の意見だけに左右されている人
  • システムで効率化が実現してしまうと、部下が減らされてしまうのではないか、そうなった場合の自身の発言権の低下 を懸念してシステム化に反対していた人

 皆、それぞれ「自分の」真実によって、自身の最大利益を図るための行動をしていることが分かる。

 まぁ、中にはダメ出しこそがアイデンティティの人、なんてのもいるけどそれは例外として。

 共感できるものもできないものもあるけれど、大事なのは「みんなそれぞれ理由がある」を理解すること。

 後はできるかぎり個々の希望も配慮しながら、落としどころを考えて、可能な限りの全体最適を目指すこと。「個別最適じゃダメだ!」っていくら叫んだって反対意見は賛成には変わらない。

 なにも実現しないより、一歩でも進めばいい、とも思う。

 「~さん」の意見が大事ならば、その人と話してみるのも1つだし、自身の発言権が何より大事ならば、システム化の成功こそが発言権を高める効果がある、という状況をつくるよう努力してもいい。

 そんなことをくりかえしているうちに、今度は「フォローがうまい人」になってきた。

 誰かの行動について、皆が文句を言っていても

 「あ、でも~な理由があるのかもしれな い」

 「もしかして~を気にしてるんじゃないかな?」

そんな発言が増えてきた。

 そのうちそれは、ボクのコミュニケーションスタイルになり、少々無理なフォローをする自分自身を楽しむようにすらなった。

 それは結果としては、俯瞰的なモノの見方を得る良いトレーニングだったと思うし、管理職への登竜門だったのではないかと思う。

 さて、今回のまとめは

「自分と違う意見に耳を傾けることから、大きな発見と学びがある!」

 ただし、「自分の意見を持たなくなる」という弊害にはお気をつけて……。

 さて、次回(1年後?)からは「ドロップアウトPart2に至るまで」をお送りする「予定」です。それでは、ここまで読んでいただきまことにありがとうございました。

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